田中ひかるさん・安彦麻理絵さん対談 第1回

アラフィフ、女ふたりで語る生理の話【田中ひかる・安彦麻理絵】

アラフィフ、女ふたりで語る生理の話【田中ひかる・安彦麻理絵】

『生理終了!~恋愛マンガ家が50歳になったら人生こうなる~』をコミックサイト「ウーコミ!」で公開中の漫画家・安彦麻理絵さんと、『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫)、『月経と犯罪 “生理”はどう語られてきたか』(平凡社)などの著作をもつ歴史社会学者の田中ひかるさんの対談。

安彦さんと田中さんはほぼ同年代。ということで、 “麻理絵ちゃん”“ひかるちゃん”の間柄で、閉経と更年期についてざっくばらんに語り合っていただきました。

閉経や更年期なんてまだ先の話、と思うかもしれません。

しかし、生理に関する情報がアップデートされていく昨今、閉経や更年期のことだって事前に知っておくことで、気持ちがラクになることだってたくさんあるはず。全3回の第1回です。

(左から)安彦さんと田中さん/イラスト:安彦麻理絵

(左から)安彦さんと田中さん/イラスト:安彦麻理絵

閉経カウントダウンと初潮の記憶

安彦麻理絵さん(以下、麻理絵):自然な状態で1年間月経がこなかったら閉経と見なされるといいますよね。私は49歳のときにその「Xデー」がきて閉経したんですが、ひかるちゃんはどう? 平均的な閉経年齢は50~51歳というけど。

田中ひかるさん(以下、ひかる):私、今まさにカウントダウン中ですよ。

麻理絵:そうなんだ。最後の最後にドカーンと打ち上げ花火みたいに根こそぎ出して終わるってチラホラ聞いたことあったんだけど、私の場合は「ワビサビの効いた水墨画」みたいな状態になって、シレーッと何ごともなく終わった感じだったわよ。

ひかる:ドカーンは怖い! 閉経前の生理周期は不定期だし、いつくるかわからないドカーンに備えてないといけないなんて、時限爆弾を抱えているようですね。

麻理絵:初潮も、準備なしにくるから時限爆弾みたいでしたよね。私、初めて月経がきたときは母親が入院中の弟に付きっ切りで不在だったからひとりで対処するしかなくて、「これ、何なんだろう?」って感じだったんですよ。

血が出るのは知っていても、鮮血じゃなくてあんなにどす黒いものだとは知らなかったし、生理用品が家のどこにあるのかわからないし、結局トイレットペーパーで処置しました。ちなみに、ひかるちゃんは初潮のときの記憶ってある?

ひかる:私は全然覚えていなくて。それはたぶん、普通すぎたから。何かアクシデントがあったり、おうちの中でタブー視が強かったりすると記憶に残るのかもしれませんね。

麻理絵:なるほど。PMSとかはどう?

ひかる:私の場合、生理痛はすごく重かったけれど、PMSはまったくなくて。15年前に単行本の『月経と犯罪』を書いたときは、「PMSって、症状がひどい人ももちろんいるけど、ほとんどの人は“生理前はイライラするもの”という情報のせいで、自己暗示にかかっている側面もあるんじゃないかな」という思いもあったの。

でも、出版後に取材を受けたりする中で、PMSが重い人は思っていたよりも多いと認識をあらためました。昨年12月にリニューアル版を出したときは、現に苦しんでいる人がいるんだから、「今はPMSをコントロールする方法がある」という情報をもっと周知することが大事だと思いました。

——心理的なことが影響しているっていう定説のほうが広まっちゃうと、第三者に「そういうのって気のせいらしいよ?」「ドンマイ!」とか言われそうで怖いですね。それよりは、コントロールするための方法や情報を広めないと。

ひかる:本当にそうなんですよ。月経、PMS、閉経、更年期……すべて社会通念などの大いなる勘違いが多すぎます。

*写真はイメージです

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生理痛やPMSは人と比べない

麻理絵:私は2人目の子どもを産んだあとにPMSがすごくひどくなったのよ。出産のとき、出血多量でガタガタ震えている私のそばで義母がはしゃいでいたのがトラウマになっているんですけど、生理前になるとそれを思い出してイライラしちゃうようになった。

ひかる:うわ~それはヤダ! イライラって必ず原因があるよね。

麻理絵:あるある。結局3年くらい前に義母とは「着物の帯を買ってくれたら今までのことはチャラにする」という形で手打ちになって、それでだいぶイライラは落ち着きました(笑)。あと、一時期、低用量ピルを飲んでいたのだけれど、生理前にこれを飲めばイライラしないで済むと思えてよかった。

——女性同士でも生理痛の重さやPMSのひどさに想像力が至らず、つらい思いをしている人への配慮ができないことがあります。女性同士でさえそうなので、男性が解像度高く理解したり想像するのは難しい。まずは女性間でも理解を深めるのが必要だと思うのですが、どうしたらいいと思いますか?

ひかる:そういう話はだいたい性教育に行き着きますよね。生理には個人差があると教わるのが大事。軽い人もいれば重い人もいる。軽かったのに重くなる人もいれば、重かったのに軽くなった人もいる。人の数だけ生理の症状はあります。

あとは、タブー視したり、話しづらいものとして扱わないことが大事ですね。話したくないという人の意思はもちろん尊重するべきなんですが、「社会的に隠さなければいけないこと」ではないですから。今はSNS等で、しゃべりたい人たち同士で語れるから、たくさん情報がありますよね。そのぶん、間違った情報を見極める力も大事になってくるけれど。

麻理絵:男性だって生理について調べやすくなってるよね。SNSで「生理痛で苦しんでたら彼氏がネットで何か調べてくれてて、それが予想を超えてきた」みたいなつぶやきと一緒に彼氏がつくったトリセツを載せてるのを見て、なるほどねと思ったわ。

ひかる:気をつけなくちゃいけないのは、それはあくまでその彼女の場合ってこと。彼女とほかの女性の生理のときの不調が同じとは限らない。彼女の生理やPMSが軽いからって、ほかの女性がつらそうにしているのを軽んじるのはいけません。

——安彦さんはPMS対策として低用量ピルを飲んでいたそうですが、田中さんはピルを飲む人が周りにいるというのが当たり前の環境でしたか?

ひかる:私の年代ではあまりいませんが、ちょっと下の年代では多いです。私が20代の頃は、まだ低用量ピルが認可されていなかったので、スキーに行くときとか、中用量ピルで生理をずらしたりしていました。生理痛も鎮痛薬に頼るしかなくて。今は低用量ピル以外にも、生理をコントロールする方法があり、進化したなと感じます。

使えるものは使おう

*写真はイメージです

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麻理絵:進化といえば、吸水ショーツとか月経カップとか、新しいアイテムがたくさん出てるよね! SHELLYさんのYouTubeチャンネル「SHELLYのお風呂場」で月経カップを紹介している動画があるんだけど、コメント欄が「ものすごくいい!!」って盛り上がってたのが印象的だった。近所のドラックストアで月経カップが4000円くらいで普通に売ってて、「へー!」って思ったわよ。

ひかる:少し前まではネットでしか買えなかったし、高かったもんね。私が月経カップを知ったのは40歳頃だったので、閉経までに元が取れないんでは? と思って買わなかった(笑)。その後、メーカーの方からいただいたんだけど……。

麻理絵:使ってみた?

ひかる:年齢的に使う機会がなかったな。

麻理絵:あれ、直径4cmでしょ。それを折りたたんで装着するって、タンポン使い慣れてない人にはハードル高いよね。吸水ショーツのほうが手軽かも。手洗いじゃなくて洗濯機で洗えるらしいし。子どもに買ってあげたいと考える親も多いみたい。ひかるちゃん、布ナプキンはどうなの? 布ナプキン好きってオーガニック派、自然派なイメージだけど。

ひかる:布ナプキン、いいと思うよ。きれいな布ナプキンを見て、生理の日が楽しみになる人もいるよね。でも、「使い捨てナプキンは環境に負担が……」とか言われると、「別に好きで生理やってるわけじゃないし!!!」って思う人も多いんじゃないかな?(笑) 布ナプキンでは仕事や日常生活に支障が出る人もいるよね。家にいるときは布ナプキン、外出するときは使い捨てナプキンと上手に使い分けている人もいる。それぞれ無理をせずに、自分に合う選択をすればいいと思います。

麻理絵:便利なものがあるんだから、それ使おうよって思うわよね。

ひかる:痛みについても同じですよね。解消する方法があるんだから、我慢しなくていいと思う。「生理痛は陣痛の練習だ」とか、「女だから痛みに強いはずだ」とかの精神論は勘弁してほしい。

麻理絵:ホント勘弁してよ!だよね(笑)昔は対処する術がなかっただけでしょうって。医療が進歩してるんだから、その恩恵を受けることに遠慮はいらないよね。

ひかる:恩恵を受けたい人が、みんな受けられるようになるといいですね。

第2回は5月30日(日)公開予定です。
(構成:須田奈津妃、編集:安次富陽子)

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