これが私の生きる道! 楠 佳英さん

大切なのは、環境が整わなくても動く勇気【これが私の生きる道】

大切なのは、環境が整わなくても動く勇気【これが私の生きる道】

リモートワークや副業の解禁、フリーランスの増加など、多様化が進む令和時代の働き方。「このままでいいのかな?」と誰もが自分の生きる道を考えているのではないでしょうか。

このたび、自分らしい仕事や固定観念にとらわれない働き方を見つけた女性たちにスポットを当てたインタビュー集『これが私の生きる道! 彼女がたどり着いた、愛すべき仕事たち』(世界文化社)が2020年1月25日(土)に発売されました。

本書から、「BEYOND THE REEF」代表取締役・楠 佳英(くすのき・かえ)さんのお話を紹介します。

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1975年生まれ。東京都出身。OL経験後、 女性誌の編集者、フリーライターとして活躍 。2014年、義母と共にバッグブランド「BEYOND THE REEF」を立ち上げ、翌年に法人化。2017年に横浜ビジネスグランプリ女性起業家賞を受賞、DBJ女性ビジネスプランコンペティションファイナリスト。

シニア世代も主婦層も好きな仕事で社会に参加してほしい

——あなたのお仕事は?

楠 佳英さん(以下、楠):手編み・手縫いに特化したバッグブランドの会社を経営しています。作り手さんは、おばあちゃん世代や主婦が中心。高齢化が進む日本で、何歳になっても自分の得意なことで社会に参加できる仕組みを作ることを目的にしています。

WEBサイトでは完全受注生産にし、百貨店などの期間限定ショップでも販売。私はすべての商品のデザインを手がけるほか、「女性の生き方セミナー」などのイベントのプロデュースなどもしています。

——起業するまでの経緯は?

楠:きっかけは、義理の母でした。義父が他界し、ひとり元気がない姿を見て、何か生き甲斐がないものかと。義母は編み物が大好きで、よく私にもプレゼントしてくれました。

当時ファストファッションの台頭で服が大量消費されることに疑問を持っていた私は、丁寧に時間をかけて生み出される編み物の温もりに心つかまれて。ファッション誌の仕事をしていた私がデザインを考え、義母の編み物の技術と融合させてクラッチバッグを製作。それをネット販売したことがブランドの始まり。作り手さんも、今は約40人にまで増えました。

——集客のために工夫したことは?

楠:まず、「私たちのファンを作ろう」と考えました。予算がないので、構想段階からSNSに投稿を始めて、サンプルができ、ホームページができ、商品が完成し、いよいよ販売開始日を予告。そして、編集部に商品を見てもらいました。

雇用背景を知ってもらう前に、まずバッグとして見た目が洗練されていて、女性が欲しくなるデザインであることが大事。そこを評価された上で、雑誌掲載が叶ったのは、エディターをしていた私のアドバンテージ。そのうち他の雑誌でも露出が増えていきました。

拠点ができてビジョンが明確に

——この道でやっていこうと思った決め手は?

楠:ブランド立ち上げから1年後、ある個人投資家の方から「いい事業だから責任を持って本気でやるといい」とアドバイスを受けて法人化したこと。株式会社化したことで社会での信頼も増し、そして「私たちが社会をより良くするために、何ができるだろう」と考えるようになったのが、ターニングポイントに。そして、兼業してきたライター業を2019年の夏に卒業しました。

——起業後にやって良かったことは?

楠:①東京都の女性ベンチャー成長促進事業プログラム「APT Women(アプト ウィメン)」に参加したこと。ベンチャー支援が盛んな海外都市への研修も経験でき、なにより出版界しか知らなかった私にとって、経営者同士のつながりができたのは大きかった。今でも、フランクにアドバイスをし合える仲間です。

②起業4年目に実店舗兼アトリエを作ったこと。実際に商品を手にとって、お客様と作り手さんが直接お話しできる「場」をつくることで、シニア層や主婦層の可能性の可視化になりました。

好きなことで生き生きと働いているおばあちゃんたちの姿を見ると、年を重ねることに希望が持てますよね。作り手さんにも“集える場所・好きな仕事・高め合える仲間”の3つを提供できた。もちろん固定費がかかると売り上げのハードルも上がりますが、地域のコミュニティの場になっていることが一番うれしい。拠点ができて、目指すヴィジョンがより明確になりました

横浜市日吉のアトリエ兼ショップには、人の行き来が絶えず活気がある。

横浜市日吉のアトリエ兼ショップには、人の行き来が絶えず活気がある。

幸せの循環をもたらす返信用レター

——うれしかったことは?

楠:お客様からいただく手紙です。バッグに返信用レターをつけていて、購入者が丁寧なメッセージを書いて送ってくださるんです。「期待以上の可愛さで感動しました」「娘も気に入ってしまい親子で使います」など。作り手のモチベーションになり、幸せが循環していることを感じます。

——苦労したことは?

楠:売り続けること。モノを売るだけでは限界があります。そこで、編み物の楽しさを体験してもらい、作り手さんとの交流ができるワークショップを定期的に開催し、モノではなく感動や喜びを提供しています。実際に体験した方が、作り手さんのバッグのクオリティに感激して、その場でオーダーされることも。

——こだわっていることは?

楠:ブランドに寄せられる高い信頼を保つため、クオリティは一切妥協しない。品質チェックで編み直すことも日常茶飯事です。また、オーダーが殺到して在庫ゼロになったことがあり、ハンドメイドで完成に時間がかかるため、完全受注生産にしています。結果的に、売れ残りが生じないのでセール販売の必要もなく、無駄が生まれない良い仕組みでした。

編み手、縫い手の名前が書かれたカードがすべての商品につく。よりいっそう愛着がわく。

編み手、縫い手の名前が書かれたカードがすべての商品につく。よりいっそう愛着がわく。

机で考えるよりとにかく歩く

——壁にぶつかったときや落ち込んだときのリフレッシュ方法は?

楠:①海に行く。足の裏から嫌なことを流すイメージで海に入ります。②神社巡り。特に横須賀にある走水神社は、私にとってパワースポット。心身をニュートラルに保ってくれる気がします。

——仕事での日常的な習慣は?

楠:とにかく歩きます。机で考えるよりも、歩いているときにバッグのデザインや新規事業が閃いたり、頭が整理されることが多いので。

——今後、やりたいことは?

楠:バッグブランド以外のことでも女性の幸せにコミットすることを実行していきたい。高齢者に限らず「子育てが一段落した」「在宅でしか働けない」など、さまざまな環境の女性たちが、世の中とつながっているという実感を持てる、お手伝いをしていきたいです。

整わなくても動く勇気を持って

——これからの時代、仕事をする上で大切なことは?

楠:エモーショナルであること。なんでもネットで買える時代だからこそ、人の温もりや情熱が求められているなあと常々感じます。

——あなたにとって理想の仕事(働き方)とは?

楠:理想の働き方とは、私にとって理想の生き方のこと。ワークライフバランスという言葉をよく聞きますが、仕事と遊びの境界線がない、というのが一番の理想ですね。これからも自分の“好きの集合体”を積み重ねて行けたら……と思います。

——これから何かを始めたい人へのアドバイスは?

楠:大切なのは、整わなくても動く勇気。「もっと環境が整ったら」と先送りにせず、やりたいと思った瞬間にやる! パーフェクトな状態を待っていても来ない、と思っています。私は常に“思い先行”。ブランドを始めようと思ったとき、自分の口座にあった50万円を資本金と決めて、「このお金がなくなったら辞めればいいや」というくらいの気持ちで、すぐに走り出しました。

当時は、リアル店舗を持つまでに発展するとは、全く想像できなかった。具体的な未来が描けなくても、「あのときに前に進んでよかった」と思えるはずです。

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これが私の生きる道! 彼女がたどり着いた、愛すべき仕事たち』は1500円(税抜き)で発売中。

(記事提供:世界文化社)

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