村木厚子「自分らしく生きるために行動すれば世界は変わる」【若草物語トークショー】

村木厚子「自分らしく生きるために行動すれば世界は変わる」【若草物語トークショー】

元厚生労働事務次官で、現在は「一般社団法人 若草プロジェクト」の代表呼びかけ人を務める村木厚子さんが9月5日、日比谷シアタークリエ(東京都千代田区)で開催されたミュージカル『Little Women 〜若草物語〜』のトークショーに登場し、四姉妹の長女メグ役の彩乃かなみさん、お母さま役の香寿たつきさん、演出の小林香さんと作品の魅力について語り合いました。トークショーの模様をお届けします。

「ジョーのようにチャレンジする人が増えてほしい」

小林:本日は『Little Women 〜若草物語〜』の夜の部をご観劇いただきましたが、いかがでしたか?

村木:トークショーで舞台に上がることが分かっていたのですが、ボロボロと泣いてしまいました。でも、気持ちが良かったです。勇気をいただいていい気持ちになれました。

小林:『若草物語』は四姉妹の物語ですが、気になった役はありましたか?

村木:『若草物語』は子供のときから読んでいた本で、「四姉妹で言ったら私は誰々で……」といつも自分を投影していたのですが、この年齢になって改めて読み返すと一番感情移入してしまうのが “お母さま”でした。まったくタイプが違う4人の娘を育てながら、ポイントポイントで背中を押すのがすごいなあと。

小林: “お母さま”はキリスト教の価値観に基づいた子育てをしていますが、村木さんにも娘さんがいらっしゃるということで重なる部分はありますか?

村木: “お母さま”は子供を自由にさせる部分がある一方で、「ここは絶対大事」という譲れない部分は分けていて、きちんと四姉妹に言って聞かせます。母親の理想像だと思うのですが、自分はとてもまねできないなと思います。

小林:ジョーとエイミーがケンカするシーンがありますが、“お母さま”は秤(はかり)の真ん中にいるようにセンターに立って常に平等を貫いています。

村木: 本を読んでジョーとエイミーのケンカのくだりは知っていましたが、今回のミュージカルで“お母さま”が2人にどんなふうに言葉を掛けるのか、ドキドキしました。

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香寿:稽古のときは感情的にセリフを言ってしまうことも多かったのですが、小林さんからは「ちょっとドライに慈愛に満ちた感じで」と言われました。なので、「慈愛に満ちて、慈愛に満ちて……」と言い聞かせていましたね。どうしても日本人だと、一緒に泣いてしまったり、感傷的になったり、共感をしてしまうほうが多いのですが、“お母さま”の秤(はかり)のような平等さを意識しました。

小林:四姉妹の次女、ジョー・マーチは、自らの手で自分らしい人生を切り開いていきます。今日は客席にもたくさんのジョー・マーチがいらっしゃると思いますが、村木さんからアドバイスをいただけますか?

村木: 今日のミュージカルでもジョーは「自分らしく生きたい」と言って、周囲とぶつかりながらもがんばっていました。失敗をたくさん重ねていくうちにだんだんと品格も備えていくジョーの成長が描かれていましたが、ジョーのようにチャレンジをする人が増えればいいなと思いました。

私自身は、子供の頃は三女のベスに自分を重ねていました。ベスのファンとしては、ベスのような引っ込み思案だったり、内気だったりしても、一生懸命続けているといいことがありますから、ベスのような人もがんばってほしいなと思います。

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「若草プロジェクト」に込めた思い

小林:村木さんが代表呼びかけ人を務めている「若草プロジェクト」についても伺えればと思います。「若草プロジェクト」という名前に込めた思いを教えていただけますか?

村木: 世の中には、家の経済状態が厳しかったり、虐待があったり、学校でいじめがあったり、苦労している子供たちがたくさんいます。そんな子たちがSOSを出せるように、頼れる大人がいることを分かってもらえるように始めたのが「若草プロジェクト」です。

プロジェクトの名前は『若草物語』から名前をいただきました。それぞれの個性がある四姉妹のように「自分らしくあっていいよ」というメッセージを伝えたかったんです。

『若草物語』の原題である「Little Women」には「girl(ガール)」でもなく「lady(レディ)」でもなく、四姉妹を大人の女性として尊重するという意味が込められていると伺いました。私たちの「若草プロジェクト」も、少女たちを一人の人間として尊重したいと思い、この名前をつけました。

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彩乃:「若草プロジェクト」を始めたのはどんなきっかけですか?

村木: 私は、約5カ月間にわたって大阪拘置所に入っておりまして、我が家では「単身赴任」と呼んでいたのですが、拘置所にいる女性の受刑者の方がご飯を運んで来てくれるんですね。みんな若くてかわいくて素直でいい子ばかりに見えたんです。「なんでこの子たちがここにいるのだろう?」と思って、詳しく話を聞いてみると、薬物や売春に手を出してしまった子たちなんですね。

彼女たちは厳しい家庭に育ち、虐待を受けていたり、性暴力の被害者だったり……。そんな彼女たちがどこかに逃げたい、家を離れたいと思ったときに足を向けるのが夜の街だったんです。そこには当然、悪い大人たちがいて彼女たちを利用してもうけようとする「罠(わな)」があるのですが、彼女たちが罠(わな)に引っ掛かる前に何とかしなければいけないと思ったのがきっかけです。

家出をしたり、夜の街に行ったりする子に対して世間は「悪い子」というレッテルを貼りたがって、彼女たち自身も「自分は悪い子だから、助けなんて求めちゃいけない」と思っている。でも、話を聞くとみんな一人でがんばっているだけなんです。そんな子たちに「あなたは悪くない」「助けてって言っていいんだよ」と言ってあげたかったんです。

彩乃:誰かに認めてもらったり、承認をされたりすることはすごく大事なことだと思います。

村木: 本当にそのとおりです。誰かが認めてくれることって大事なのですが、夜の街で少女たちに声を掛ける大人やお兄さんたちは「君のことを認めているよ」というのがとても上手なんですね。だから、彼女たちも『若草物語』の “お母さま”のような、本当にいい大人につながればいいなと思います。

子供って学校か家しか居場所がないんですよね。だから、三番目の場所があればいいなあと思うし、「おはよう」というあいさつだけでもいいので、声を掛けてくれる大人が必要だなと思います。

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行動することで世界は変わる

小林:今日はせっかくなので、客席の皆さんから村木さんへの質問にも答えていただければと思います。「女性の地位はまだまだ低いと思います。これからの課題は何だと思いますか?」という質問をいただいているのですが、いかがでしょうか?

村木:難しい質問ですね(笑)。この年になって思うことなのですが、女性たちを取り巻く環境や状況は『若草物語』が書かれた150年前よりも、私が就職した頃よりもだいぶ変わりつつあると思っています。でも、黙っていて自然にそうなったのではなくて、声を上げてくれた人がいたり、女性だけではなくて男性も行動を起こすことで変わってきたんです。

だから、ここにいらっしゃる方も、自分にできることでいいので何かアクションを起こしていけばと思います。どんな小さなことでもいいので、男性も女性も自分らしく生きるための行動を起こすことが大事なのではないかと。

彩乃:そばでお話を伺っていて思ったのですが、村木さんは輝かしいキャリアをお持ちでいながらとても穏やかで優しくて……。内に秘めた強さがあったからこその今なのだと思いましたし、まさにベスだなと思いました。

香寿:「若草プロジェクト」のお話を伺って、私も微力ながら何かできることがあればと強く思いました。

村木: こちらこそ、今日はこんな機会をいただけてうれしかったです。「若草プロジェクト」や一人で一生懸命闘っている女の子がいるということを一人でも多くの方に知ってほしいと思いますし、幸せはおすそ分けができるものだと思うので、今日こうしてミュージカルでもらった元気を「若草プロジェクト」にも分けていただければと思いました。

小林:本日はありがとうございました。

ミュージカル『Little Women 〜若草物語〜』は日比谷シアタークリエで9月25日まで公演。全席指定で11,500円(税込)。愛知、福岡でも上演されます。

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