「かめおか子ども新聞」編集長インタビュー第2回

大人ってどう生きていけばいいの?「かめおか子ども新聞」編集長と考えた

大人ってどう生きていけばいいの?「かめおか子ども新聞」編集長と考えた

大人の悩みに子ども記者が答える「かめおか子ども新聞」の人気相談コーナーを書籍化した『はい!こちら子ども記者相談室デス!』(新潮社)が5月30日に発売されました。

「彼女に結婚をせまられて悩んでいます」「夫婦共働きなのにワンオペでつらい」「男と女はどっちが楽だと思いますか?」など、大人からの切実なお悩みや身近な疑問に対してズバッとストレートに答える様子がSNSを中心に話題になっています。

記事はどんなふうに作ってるの? お悩み相談コーナーを作った理由は? そもそも子ども新聞を創刊した理由は? 今年で創刊3年目を迎える「かめおか子ども新聞」の竹内博士(たけうち・ひろし)編集長にお話を伺いました。

【第1回】『はい!こちら子ども記者相談室デス!』人気の秘密

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子ども新聞を創刊した理由

——竹内編集長は新聞記者から企業に対してコミュニケーション研修を行う講師に転身し、「かめおか子ども新聞」を創刊されたと伺いました。「あとがき」で「生きていくうえで大切なのはコミュニケーションだと強く感じ、今の仕事(研修講師)を始めた」とありましたが、そう思ったのはなぜですか?

竹内博士編集長(以下、竹内):単純に人を知るっていうことが、全ての根本な気がしていて。人って単純じゃないでしょ? 複雑じゃないですか。例えば、表向きは「いいよ」って言ったのに、腹の底では違ったとか……。

——ありますね。自分を振り返っても。

竹内:要は、多面的だと思うんですよ。それも含めて人間なんだっていうことを理解しないと、簡単に信用し過ぎて裏切られるとか、距離感が保てずに嫌われちゃうとか、人間関係のトラブルっていっぱいあるじゃないですか。だいたい社会人の悩みって、二つあって人間関係とお金なんですよね。

でも僕は、人間関係がなんとかなれば、お金につながってくると思っているので、やっぱり人間関係、対人関係かなと思うんです。

10年間、記者として約7,000人に取材をしていく中で、それを確信しました。例えば、機械って単純で、誰がこのボタンを押してもこういう反応になるって決まっているけれど、人間同士は違いますよね。人によって全然反応が違ったりする。複雑でややこしいんだけど、それがかえって奥深くて面白いなって、7,000人くらい取材したらやっと思えたんです。

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——それで記者を経て研修講師になったのですね。

竹内:記者を10年経て1年間ブランクを空けて、今ですね。新入社員向けに研修をやっていく中で、もっと若いうちに、大学、高校より前にコミュニケーションに関わることを教えたほうがいいのでは? と思い、視点を小学生に向けたんです。

——それで3年前に子ども新聞を創刊した?

竹内:そうですね。企業研修でやっているようなことを会議室に子どもを集めてやるわけにはいかず、もっと楽しくダイレクトに人間の面白さとか、いろいろな生き方があるということを見せるきっかけないかな? と考えたら、今まで自分が10年間やってきた取材という行為こそが、全部含まれているという感じがして、つながったんです。

そこから取材って何だろうなって考えた時に、まず企画をしないといけないでしょ? 企画力。電話で取材したいって言うアポイント。実際に行く時はマナーを守らないといけないからマナー。会話をするから質問力。それで話し始めて「そうですよね」みたいな傾聴力。よく考えたら、「僕が研修でやってることが全部取材に入ってるやん」って。それがきっかけで子ども新聞をスタートしました。

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—— 3年間、子どもたちと一緒に活動をしてきて「変わったな」と思ったことはありますか?

竹内:やっぱり、自発的にはなりましたし、自信をつけた子が多いですね。自分で取材して書いたものが活字になって、世に出るっていうことが自信につながるのかなって。

毎月2万部を発行しているんですが、街の人から「読んだで」って声を掛けられたり、インフルエンザになって行った病院の先生から「記者の子やろ? 読んでるで。あれ面白かったな」と言われたりするらしく……。

そういう経験を通して、自分の知らない人から声を掛けられるじゃないですか。自分の存在とか、難しい言葉で言うと自己肯定感とかになるのかもしれないけれど、存在意義というか、自分が記者として存在して、取材したことで、知らない人が喜んでくれたんやとか。子どもだけど大人の社会にちょっとでも影響しているじゃないのって思った時に、自信につながったりするみたいですね。

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子どもたちの生きる選択肢を増やしたい

——自分が子どもの時を振り返ると、世界が学校と家しかないってキツイよなって……。だから子ども記者の子たちがうらやましいなと思いました。

竹内:僕もそれをすごく思ったんですよね。中学3年の時の高校の進路相談で「なりたい職業に影響するから高校選びは大事だよ」って、先生に言われたけれど、「なりたい職業は何?」って言われても、よく分からないし選択肢が少ないって思った。

今、振り返ったら、もっと早く選択肢を持っておけば、いろいろな生き方ができたのになって思うことがあります。

おっしゃる通り、子どもの時の選択肢って、自分の親の職業か目につく学校の先生とかしかないんですよね。

——いろいろな選択肢を知った上で先生を選択するのと選択肢を知らない中で先生を選択するのでは違いますよね。私は地方出身なので、余計そう思いますね。

竹内:僕もそうですね。子どもたちに「職種って何種類くらいあると思う?」って聞いても、そんなに出ないと思うんですよね。それが大人になると、「こんな仕事があるのか」「こんな働き方もあるんだ」と分かる。それであれば、もっと早く知っておけば良かったって。

自分に対しての反省じゃないですけど、後悔というか、ずっと思っていることがあったので、(子ども新聞を作ったのは)その反動もあるかもしれないですね。

だから、新聞を通して、子どもたちがいろいろなおっちゃんやおばちゃんの生き方を見ることで、ユーチューバーじゃなくても生きてけるんやって思って、生き方の選択肢を増やすところにつながればいいなって思いますね。

——ある意味、昔の自分に向けて新聞を作っているというところもありますか?

竹内:それはあるかもしれないですね。活動していると、小学校くらいのハカセくんもそこに参加している気がします。だから、指導者として子どもたちと関わってはいないんですよね。ハカセくんで付き合っている。

あれはダメこれはダメも言わないし、ああしろこうしろもそんなに言わない。一緒にバカなこともするし、一緒になって楽しんでいますよね。

この間も、靴を飛ばして、「明日天気になーれ」とかやっていたんですよ。子どもから「俺、何回やっても晴れや。ハカセもやれば?」とか言われて、「おう、やるわ」とか言って。結局、ハカセくんは靴を飛ばし過ぎて、屋根の上に乗っかっちゃったんです。その時に子どもが「バカじゃん。大人なのに」って。そんなことがよくあるんですよ。

家に帰って親に、「ハカセってアホなんやで。大人なのにこんなんするんやで」って言っているみたいで(笑)。でも、僕はそれを褒め言葉のように捉えています。そういう距離感の付き合いって大事だなって思います。

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大人が子どもにできることは?

——あのー、ハカセくんにお悩み相談なのですがよろしいですか? 私には子どもはいないのですが、友達の子どもと遊んだり、近所の子どもに会ったら挨拶をしたりすることもあるのですが、ふと、子どもたちは私たち大人を見てちゃんと希望を持ってくれているんだろうか? と不安になっちゃうんです。大人ってどう生きていけばいいんですかね?

竹内:世の中、すごくショッキングなことが多いから、テレビや動画を見て「これが世界なんだ」「これが社会なんだ」って暗い気持ちになっちゃうこともあると思うんですよね。だからこそ、端的に言うと、楽しい大人が増えるのが一番大事だと思っています。楽しいっていうのは、格好つけるという意味ではなくて、人間らしい大人。楽しい時は楽しい、悔しい時には悔しいって見せるのが大事なんじゃないかって。

——悔しい顔を見せても?

竹内:いいと思うんですよ。例えば、「仕事でお父さん叱られちゃってね」とか。「よくよく考えてみれば、お父さんも悪いところがあるから、明日ごめんなさいって言おうと思うんだよね」とか。常に完璧であろうとするのも何か違う気がするし、大人もつらいじゃないですか。だから、無理せずに、人間らしい大人みたいなのを、子どもに背中で語るじゃないですけど、見せていくことが一番大事じゃないかと思いますね。

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※第3回は6月22日(土)公開です。

(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)

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