不登校新聞編集長に聞く・後編

「大人って楽しそう」を見せることが救いに…学校に行きたくない子供に大人ができること

「大人って楽しそう」を見せることが救いに…学校に行きたくない子供に大人ができること

今年のGWは、平成から令和への改元に伴って多くの企業や学校が10連休に。

自分の子どもや親戚の子どもなど、身近に子どもがいる人は一緒に遊ぶ計画を立てている人もいるのでは? しかし、大型連休明けは不登校や自殺が心配されています。

前回は、日本で唯一の不登校専門誌「全国不登校新聞社」の石井志昴編集長に、子どもを持つ親や周囲の大人が連休中と連休明けに気をつけることについて、お話を伺いました。

後編では、石井編集長に親に限らず、大人ができることについてお話を伺いました。

【前編】GW明けは不登校が増加…連休中と連休明けに親ができること

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「答え」はバラバラでもみんな生きている

——石井さん自身も不登校だったと伺いました。前回いただいたアドバイスは石井さん自身の体験も生かされているのでしょうか?

石井志昴編集長(以下、石井):そうです、僕自身の体験と、取材をしてきて専門家や当事者の話を聞いてわかったことですね。

——石井さんが取材をはじめたきっかけは?

石井:僕は中学受験に失敗したことがきっかけで、中2のときに不登校になったんです。不登校新聞は1998年5月1日に創刊したのですが、創刊時に取材を受けたんです。その半年後に不登校の人たちが集まる編集部ができて関わるようになって、取材が何より面白かったので、ボランティアで関わり続けて19歳にスタッフになって今に至ります。

——取材のどんな部分が面白かったのですか?

石井:中学受験に挫折して、不登校になって「人生終わった」って思ったんです。でも、自分はどう生きていけばいいのかと思っていろいろな方に話を聞いたら、正解がバラバラだった。

「才能は誰にでもある」って言う人もいるし、「才能は10年たたないとわからない」って言う人もいるし「オリジナリティが大事」って言う人もいる。「どうやったら生きていけばいいか?」についての答えは全員違っていて、全員生きているんですよね。

でも、学校は正解が一つしかない。テストでどれだけ先生が求めている正解に合わせられるかが大事。でも、取材に行くと、一番大事なのは、自分の中にある問題提起や問題意識、問いのほうが大事で、答えはいくらでもいろんな形があるんだって体感できた。学校の学びと会社で働いてみて価値観が180度変わった。それが働く意欲になりましたね。

「どうしてこんなことになってしまったんだ?」という強い問いを持ち続けるのが大事だし、「なぜ不登校がこんなに認められないの?」というのが新聞を作るモチベーションになっています。

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学校は命をかけてまで通うところではない

——大人ができることって何だと思いますか? 私には子どもがいませんが、友達の子どもに勉強を教えることもあるし、同じマンションに住んでいる小学生と挨拶を交わすこともある。誰かの親であっても親じゃなくても「大人」ができることっていろいろあると思うのですが……。

石井:学校は無理をして通うものじゃないという認識を広めることなんじゃないかな。3年ほど前に文部科学省が不登校を問題と捉えないでくださいという通知をした*のですが、認知されていないし、親や先生たちは相変わらず「すべての子どもが学校に通うべき」と思っています。でも、学校は命をかけてまで通うところじゃない。

(アメリカ出身の日本文学者の)ロバート・キャンベルさんが「魅力的な非常口を用意してあげること」と言っている**のですが、ここが苦しかったら向こうがあるよって示してあげること、それも地獄のようなところじゃなくて、向こうは向こうで楽しいみたいよ、という場所を提示したり、作ってあげたりすることが大事なのかなと思います。

参考資料:
*http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1375981.htm
**https://futoko.publishers.fm/article/16436/

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いろいろな大人の姿を見せること

石井:あとは、連休明けに限らず、親が積極的に子どもとサボってほしいですね。「今日、平日だけどディズニーランド行っちゃう?」みたいな。そしたら子どもも「それでいいのか」って思う。人生楽しんでいいんだよって示してあげることかなと思います。

——「大人って楽しいな」っていう姿を見せてあげることですか?

石井:そうそう。僕自身も、不登校になってしばらく外に出るのがすごく怖かったんです。震えていた。ある日、親に「ご飯食べる?」って言われて一緒にレストランに入ったらお母さんたちがたくさんいてワイン飲んでたんですね。「授業している時間に大人がワインたくさん飲んでる」って驚いたんです。

また、別の日にフリースクールに行ったら、同じフリースクールに行ってた友達に「ゲーセンに行こう」って言われて「それはやばいよ」って言いながらゲームセンターに行ったんです。そうしたら、サラリーマンが「ダンスダンスレボリューション」をやっていて、完璧な振り付けで必死に踊っていたんです。

「仕事ってなんだ?」って思ってすごく救われた。自分のイメージとは違う大人がいる、ちゃんんとしてない大人がいるってすごく救いになりましたね。

——今の時代って「正しいこと」を求めちゃうし、自分でもそうしなきゃって思っちゃう部分がある。ちょっと息苦しいなと思います。

石井:息苦しいですよね。

——だからこそ、大人がサボったり、楽しそうな姿を見せたりするのは大事ですね。

石井:そうそう、だらしない姿を見せること(笑)。親がサボってたら子どもも不登校になりづらいというのがあって。なぜなら、休み方を知っているからなんですね。

僕も、この会社に入って不登校になったことはないんです。休み方を知ってから休まなくなった。キツかったら休む、ちょっと無理しているなと思ったら無理しない。小さく引きこもっていれば大きくは引きこもらなくて済むんですよね。

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令和は「大人も子どもも安心してサボれる時代」に

——最後に、令和という新しい時代が始まりますが、どんな時代になってほしいと思いますか?

石井:えっ、そんな質問初めてされました(笑)。

——ミーハーですみません。。

石井:そうだなあ。子どもが安心してサボれる時代になってほしいですね。大人も。人は誰でもサボれる時代になってほしい。

——逆に、平成に置いていきたい言葉は? 終わりにしたい言葉というか……。

石井:「怠学による不登校」(不登校は怠けであるとする考え方)とか「登校圧力」(子どもが学校に戻るように少しずつ働きかけること)とかいろいろあるんだけれど、「不登校」ですかね。

そもそも不登校新聞も、不登校が当たり前になる社会がミッションであったりもするので、学校に行かないことが特別視されなくなるといいなと思います。そうなると、「不登校新聞」という新聞の名前を変えなければいけなくなるかもしれないですね。

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(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)

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