「なーに考えてるの?」7文字目

20代の頃のギラギラした欲望はなくなったけど…己の欲望はどこへ行く?

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コラムニストの桐谷ヨウさんによる新連載「なーに考えてるの?」がスタートしました。ヨウさんがA to Z形式で日頃考えていることや気づいたこと、感じたことを読者とシェアして一緒に考えていきます。第6回目のテーマは「G=Good enough(まあ、いいんじゃない?)」です。

あの強烈な欲望は、何だったんだろう?

欲望を持ち続けられる人は、すごいと思う。

30代後半になって感じることは、自分も周囲も、欲望が”ほどほど”になっているということだ。

誰しもが20代は目がキラキラしてるし、態度もギラギラしている。

そんなことないよって言う人もいそうだけど、若さってやっぱりすごくて、ほっといても内側から放出されるエネルギーがあるように感じるんだよね。そして欲を持っている。

俺自身を振り返ると、やっぱり無鉄砲な欲望を持っていたと思う。

とにかく経験に対する欲が強かった。もっといろんな人を知りたかったし、他の人が体験していないようなことを経験してみたかった。下世話な例を挙げると、「ぶっ飛んだ人とつるんでムチャクチャな遊び方をしたい」とか「もっと女の子と遊びたい」とか「本を出してみたい」って感じだった。

30代に入る頃には思いつく範囲の欲望がほとんど達成できて、すごく穏やかな自分になっていくことを感じていた。不思議なことに結婚することにも違和感がなくなっていたりしていた。あとこれはコラムニスト失格かもしれないんだけど、”世間に対して言っときたいこと”というのが面白いくらいに、消え失せた。

今はつまらないの? と聞かれそうだけど、そうじゃない。20代と比較して、人生の質はまちがいなく上がっている。それは「足りないもの」を追いかけるのではなく、「現状は、十分良い感じである」と心底思えるようになってきているからである。ドーパミン系のアッパーな快楽から、セロトニン系の穏やかな日常の幸福にシフトしているかのような。

上を見ればキリはないし、世間一般を比較軸にするのは好きじゃないけど、仕事の報酬は恵まれているし、さりとて自分の時間が取れないような忙しさじゃない。パートナーと仲良く生活ができている。まさしく「これ以上、何を求める?」という感じなのである。

はい。あえてこんなことを書くというのは、「本当にそれで良いのか?」という問いが、自分の中に生まれる瞬間があるということだ。

30代の人は少なからず共感してくれるんじゃないだろうか。

「まぁ、いいんじゃない」

という感覚は一面的なものではない。周りを見ていても、いろんな人がいる。

結婚して子供が産まれて、自分の時間とお金はなくなったけど、幸せにやっていっていると語る人。

あるいは結婚はしてないけど、自分がやりたいことをやり続けることを優先して、後悔がない人。

10代のときのコンプレックスがいまだに原動力になって、それを解消するために頑張り続けている人。

どれも正解なんだと思う。そしてその生き方を否定する必要もないんだと思う。

そのうえで自分を振り返ってみて思うことは、「欲望は強烈なガソリンだった」ということだ。

やはり欲望は自分をドライブする根本になるなーと思う。行き過ぎた欲望は身を滅ぼすけど、まったく欲望がない人生は何かを達成していこうというモチベーションが失われがちなのである。

人生をより良くするために持つ欲望

いつだったか矢沢永吉のドキュメンタリーを見てたんですよね。40前後のラジオのDJが「今日は誕生日なんで、何か言葉をください」とお願いをしていて。彼の年齢を確認して「いいねー、いい歳だね」と陽気に答えた後に、「自分の敵は自分の欲だよ」と返していたんですね。

そのときに「欲に負けちゃうとダメ。さりとて、欲がないやつはそれはそれでダメだ(要約)」とエーちゃんは言ってたんですよ。当時は「そんなもんかね……」と思ったもんなんだけど、ちょっとずつ心に染みてきている近頃なんですよね。

欲望に低俗とか高尚とかあるのかはわからないけど、「ああいう人にはなりたくないなぁ」という人ってめっちゃいっぱいいるじゃないですか。でも、そういう人はきちんと欲を持っていることが多いようには俺には見えて。そういうところは見習いたいなぁと思うわけです。

自分にとって身を滅ぼすようなものではなく、人生をより良くするために持つ欲望。30代の後半はそれを追い求めていく時期になっていく気がしているのである。

ちなみに今のところ「健康」がテーマですね。次回はH=Health、でございます。

急に中年感が出ちゃうテーマですが、マジで健康は裾野が広くて、奥が深いもんですよ。なによりも人生の質のベースをつくっている。最近、人から見ると「ストイック」に見えてしまう俺の「健康欲」について書いていきたいと思います。

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