恋愛経験をある程度積み重ねてきて、酸いも甘いも知っているオトナだからこそ、パートナーにあえて「言わない」ことをあえて拾って、恋愛コラムニストの桐谷ヨウさんにアドバイスをいただく連載「◯◯って言わない女子」。
ヨウさーん! 今回はこんなつぶやきを発見しましたよーー!!
【今回のつぶやき】
「ウチはホテルでも民泊でもない!」
半年ほど前にマッチングアプリで知り合った同じ歳の彼と付き合っています。
私は男らしくて頼りがいがある男性が好きなのですが、まさに彼はそんなタイプ。
彼は会社の寮に住んでいるため、週末は都内の私の家まで電車で1時間半ほどかけて来てくれるのですが、この前のGWは都内で友だちと飲んでばかりで私の家に帰ってくるのは明け方か朝。
せっかくの休みなのにあまり一緒にいることができず寂しかったです。ウチはホテルでも民泊でもない!
私は見た目はわりと派手で自信があるタイプに見えると思うのですが、過去の恋愛で軽く扱われることも多く(音信不通になったり、都合のいい関係になったり)、今回のようなことがあると粗末に扱われている気がして不安になります。
「本当はつまらない女だから元カレたちは私から離れて行ったのかな」と。
よく考えれば往復2000円かかる私の家まで毎週せっせと来てくれる彼に感謝したほうがいいのかもしれませんが。彼と長く付き合っていくためにはどのような心持ちでいればよいのでしょうか?
「相手をナメる」=コミュニケーションの怠慢
ご愁傷さまです、無料ホテルさま……。
いやいや、そんなことはないと思いますよ!!!!
なるほど、彼氏さんは郊外に住んでいて、GWのゴールデンタイムはご相談者さまをそっちのけで自分の友だちと遊び倒して、“都内の拠点”として使われていたわけでございますね。
まぁ移動時間を省けて、おまけにタダで、女の子もいる。最高ですわな。
それでは、今日は“他人をナメる”ということから喋り始めようと思います。
どんな人でも、他人に対していちばん慎重に接するのは“初対面”でしょう。相手がどんな人か判断できていない。何がツボにハマるかわからない。地雷になるかわからない。
相手の微細なサインをなんとかキャッチしようとつとめるのが、初対面におけるコミュニケーションの作法なわけです。
たとえば人見知りの人は、ここに過剰なエネルギーを使って疲れちゃう人。
人なつっこい人は、自分のコミュニケーションの型を嫌味なく、相手にすり込んでいくのが上手い人。
それで、大体の人ってさ、サボリ魔なんですよ。やらなくていいことはやりたくない。
よって、関係が熟成してくるといろんなことを省きだすわけです。
カッチリと集合時間を前もって決めなくてOKじゃない? とか、相手が話を聞いてくれるから一方的に喋り続けたりとか、こまめな連絡を取ったりしなくなったりとか。
本質的には形式なんて省いてもいいんですよ。それが関係性そのものじゃないから。
ただし、省くためには「おたがいへの信頼感」とか「それでもちゃんと相手が満足している」ことが担保されなくてはいけないわけじゃないですか。
それなしに自分の自制心を欠いたり、自分の欲求を押し通そうとすることはコミュニケーションの怠慢であり、いわゆる相手を“ナメる”という行為だと俺は認識しています。
私って“都合のいい女”なの?
難しいことに、こちらにナメる意図がなくても、相手が大事にしている(大事にしてほしい)ことに抵触すれば、ナメてることになっちゃうわけです。
セクハラ、パワハラよろしく、受け取り手次第なのでございます。
代表的なのは時間とか。時間をきっちり守る人は総じて相手にもきびしくて、待ち合わせに遅れようものなら「私をナメてる(大事に思っていない)から、遅刻する」というふうに受け取ります。
ご相談者さまが今回で感じた寂しさってきっとこんな感じですよね?
私はGWのメインイベントではなく、片手間で会う程度でよいと思われてるのかな。私はその程度なのかな。
明け方に寝るためだけに家に来て、何も感じないと思ってるのかな。粗末に扱われてるのかな。
都内の家代わりにできる、都合のいい女と思われてるのかな。
総じて、自分が大事にされていない、ということへの不安をかき立てられたんですよね?
恋愛でもフィードバックを
ふたりにはディスコミュニケーションがあります。
彼氏は「手間を省いても許される」と思っている。ご相談者さまは「自分はそれじゃ寂しさを感じている」と伝えられていない。この両面です。
せっかくのGWなんだから数日くらいは、ふたりの時間をたくさん取ろう──。
これをお互いの了解事項にできていなかったのが残念だなぁ、と感じるわけです。
ご相談者さまは、イケてない女性だから軽く扱われているわけではないんです。「手間を省くな」というリクエストが下手なんです。
「顔を見るだけじゃなく、私だってご飯を一緒に食べに行きたいよ」
「その気がなくても、ホテルがわりにしているような振る舞いをされると、悲しくなる」
自分の受け取り方を相手に伝えて、相手に認識してもらう必要があるんです。
俺もいまの妻と付き合いたてのころに、言われたことがあるんですね。会いたいから突発的に誘って自宅に来てもらうことを重ねていたら、「いつでも呼べば来ると思ってるんじゃない?」と。
非難めいたニュアンスではなく、悲しそうに言われたことで、「ああ、そう思われるようなことをしちゃダメだ」と自分がサボっていたことを反省しました。相手がどう感じるかに思いを馳せていなかった。
仕事でもフィードバックってあるじゃないですか。
仲間がやってくれた仕事に対して、ここがよかったと伝える。これはもっとこうしてほしかった。ときには笑顔でダメ出し。
もっと彼氏に対してフィードバックしてあげてください。してもらえると嬉しいこと。どうすれば自分は大事にしてもらえてると実感できるのか。安心できるのか。たまにはワガママを言って、ちょいムチャな願望を言ってみたり。
「ウチはホテルじゃないんだけど」という言葉は、「この資料ダメダメだね」と言ってるのと近いです。そうではなく、「この視点をもてば、もっとよくなるよ」というふうに、相手のモチベーションを上げるように仕向けてあげてください。
自分の“心のツボ”を伝えよう
男って調子乗りだから、安心するとすぐにサボります。
でもそれと同じくらい、好きな人に満足してもらうことに情熱をかけられる生き物だったりもします。
勘違いしないでほしいのは、これは駆け引きとは別物だということ。
相手がサボらないように期待値をコントロールするニュアンスではなく、自分の心のツボを教えてあげるんです。いま嬉しかった。不快だった。そんなふうに。
そういったやり取りが、長く付き合っていくうえでたしかな手ざわりになっていきます。それが、血がつながらない他人が唯一といえるほどの一緒に育てていけるふたりの実感です。
片道で1時間半は、けっこうな距離と時間です。それを毎週やってくれてるって、ご相談者さまのことをけっこう好きだと思いますよ(笑)お金なんて大した話じゃないですが、手間は嘘をつきません。
相手にナメられるのではなく、さりとてマウンティングするのでもなく。これがフラットな信頼関係ではないでしょうか。優位と不利、上と下でしか人間関係を生きられない人は、みんな苦しそうにしています。
そうではないふたりの満足をふたりで追求する関係をめざしてください。応援しています。