第2回「メディアと表現について考えるシンポジウム」後編

それって本当に「笑える」の? テレビ番組の“いじり”構造疑って【小島慶子さん】

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それって本当に「笑える」の? テレビ番組の“いじり”構造疑って【小島慶子さん】

ネットでたびたび話題になるCMの炎上。

「明らかに炎上しそうなのに、どうして世の中に出しちゃったの?」というものから「世間では騒がれているけれど、正直なぜ炎上しているのかわからない」までいろいろなタイプがありますが、メディアの表現はどんな人が関わって、どのように作られているの? と疑問に思っている人も少なくないのでは?

「メディアと表現について考えるシンポジウム」の第2回「徹底検証 炎上リスク そのジェンダー表現はアリか」が12月16日、東京・本郷の東京大学で行われ、社会学者からCMやテレビ番組を作るクリエイターなどメディアに関わる専門家、実務家がそれぞれの立場から炎上ついてディスカッションしました。

ウートピでは前後編に分けてシンポジウムの様子をお伝えします。

【前編】企業のCM炎上「あえて狙う」は99.9%ない

<登壇者>

鎮目博道:(株)テレビ朝日/AbemaTV、報道局クロスメディアセンター/編成制作局制作部プロデューサー
髙田聡子:マッキャンエリクソン・クリエイティブディレクター
千田有紀:武蔵大学社会学部教授
伊東正仁:損保ジャパン日本興亜 取締役常務執行役員
小島慶子:エッセイスト
松中権:認定NPO法人「グッド・エイジング・エールズ」代表
司会・治部れんげ:ジャーナリスト/昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員

番組は終わっても、いじめは終わらない

CMやPR動画ではなくても、テレビ番組の内容が炎上する件も増えています。

今年9月にフジテレビで放送されたバラエティー特別番組『とんねるずのみなさんのおかげでした 30周年記念スペシャル』で登場した「とんねるず」の石橋貴明さんが扮するキャラクター「保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)」も記憶に新しい中、LGBTの人たちがより良く生きていけるような社会を目指す認定NPO法人「グッド・エイジング・エールズ」の松中権代表は「制作現場では若手の中で『これいいの?』という声が上がっていたと聞いている。トップや構成作家が『面白い』って言ったら進んでしまう現場のヒエラルキーがあるのでは?」と問題を提起。

インターネットテレビ局「AbemaTV」で「Wの悲喜劇 〜日本一過激なオンナのニュース〜」などの番組を担当している「テレビ朝日」の鎮目博道さんは「テレビ業界が右肩下がりになっている中、現場では“ちょっと前のいい時代の話”になりがち。古き良き時代のあの企画をもう一回やろう! と上が言ったら下は何も言えない。時代錯誤の企画でも『懐かしいから視聴者は喜ぶのでは?』という思考になってしまうのでは?」と話しました。

エッセイストの小島慶子さんは「テレビや新聞などメディアで出された表現は翌日、職場や学校で再現されていじめにつながる可能性も大きい。番組は終わるけれど、いじめは終わらない。それで追い詰められる人が出てくるということにあまりにもメディアが無自覚であったのではないか?」と力を込めました。

いじりは「おいしい」?その構造を疑って

「笑いは人を幸せにするもの。でも、何を笑うかで人を疎外、排除してしまう可能性もある。本当に人を幸せにする笑いなのかを考えないといけない」と発言した小島さんに対して、来場者から「テレビ番組を見ていると、笑われることやいじられることを本人が望んでいる場合もある。笑いの線引きをどうすれば良いか?」という質問も寄せられました。

小島さんは「例えば『よ、更年期!』などと言われたときに、『やめてくださいよ〜(笑)』といった冗談ぽい対応をしないようにしています。収録中に目の前で起きたセクハラには『セクハラですよ』と指摘する。編集でカットされたり、“いじり”で盛り上がる映像につながれることもあるが、現場で『それはセクハラですよ』と言い続けることはしていきたい。

一方で、人気女性アナウンサーが、共演者から体型をからかわれることについて『いじってもらえるのは有難い』と発言していた。会社への忠誠心や視聴者へのサービス精神ゆえだと思うが、注目されるロールモデルとしての自覚は必要だと思う。それが“いじり”への模範回答になってしまうからだ。学校や職場での”いじり”は、ハラスメントやいじめになり得ることを想像してほしい。

『テレビでネタになっていたからお前もネタにしろよ』と強いる暴力につながりかねない。からかわれても笑いにできないやつが悪いのだと。テレビはショーだし、やっているほうもやられているほうもいじりを“芸”だと思っている。それをきちんとこなすのがプロだと思ってしまう構造自体を疑うべきだと思う。

ハゲやブスをいじったり、自らネタにするタレントが悪いと個人攻撃をしても解決しない。いじりや自虐がコンテンツとして成立してしまっている構造を疑うのが大事。これってほんとに笑えるの? と。作り手同士でも、見る人との間でも、そうやって表現についての対話のきっかけを作ることが大事なのでは」と訴えました。

同シンポジウムは、2017年5月に発足した、テレビ、新聞、インターネットなど、さまざまな媒体上の表現のあり方を考えるグループ「メディア表現とダイバーシティを抜本的に検討する会(MeDi)」が主催。今後もシンポジウムの開催を予定しているとのことです。

(取材・文:ウートピ編集部・堀池沙知子)

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