Mirai Forumイベントリポート第2回

「そんなにみんな働くのが嫌なのかな?」 働き方改革の仕掛け人が思うこと

「そんなにみんな働くのが嫌なのかな?」 働き方改革の仕掛け人が思うこと
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複数のキャリアを同時に持つことができたり、出社しなくても家や外出先で仕事ができたり、働く時間を自分で決められる裁量労働制があったり……。

ものすごい勢いで変わる働き方に、ついていくにはどうしたらいいのでしょうか。

そんな「未来の働き方」について考えるイベントが、11月21日に「サイボウズ株式会社」(東京・日本橋)で行われました。

Mirai Forumとは、「働き方」や「オープンイノベーション」をコンセプトに、組織を支える企業の経営者や人事担当、仕事を通じて自分の可能性を拡げたい人達が一緒になって日本の未来に破壊的イノベーションを起こそう!ということで立ち上がったプロジェクトです。

主催は以前ウートピの人気連載「日本一ちっちゃな働きかた改革」にもご登場いただいた、起業家兼作家のピョートル・フェリクス・グジバチさんが代表取締役を務める「プロノイア・グループ株式会社」。

登壇者に、経済産業省参事官の伊藤禎則さん、サイボウズで人事マネジャーを務める青野誠さん、スーパーイノベーターの沼田尚志さん、20歳の大学生起業家で2社を経営する仁禮彩香さんを迎え、パネルディスカッションが行われました。

イベントの様子を一部抜粋、加筆してお届けします。

(左から)ピョートルさん、伊藤さん、青野さん、沼田さん

(左から)ピョートルさん、伊藤さん、青野さん、沼田さん

第1回:「一つの時期に一つの仕事」という時代ではない ミレニアル世代の働き方

Move fast or die 素早く動かないと…

このイベントでモデレーターを務めるピョートルさんは、登壇者の話に入る前に、「move fast or die(素早く動かないと死んでしまう)」というちょっと怖いメッセージと海賊の画像を出しました。

「(このスライドで伝えたいことは)世界がめちゃくちゃスピーディーになってしまったということ。その中で、変動や複雑性も高くなってきている。だから、我々もスピードを上げないとダメというメッセージ。僕が勤めていた、モルガン・スタンレーやグーグルはどちらも変化のスピードが速い会社でした。スピードに適応するというのは実際にとても大切なことです。では適応するために何ができるか。みなさんに2つお願いがあります。好奇心を持ちましょう。そして、集中しましょう」

と、参加者に呼びかけました。そして「世界の中で実際に大切な役割というのは民間だけではなく行政にもある」と話し、経済産業省参事官の伊藤さんにマイクを渡しました。

働き方改革の仕掛け人が思うこと

経済産業省で働き方改革の旗振り役を担っているという伊藤さん。働き方改革といえば労働時間の話ばかりになりがちなことに違和感があるそうです。

「労働時間の短縮はもちろん大事です。だけど、逆にその話ばかりにフォーカスしているというのは、そんなにみんな働くのが嫌なのかっていうこと。私としてはそのようなつもりで働き方改革をプロモートしてきたわけではなく、選択肢を増やすためにやってきました」

そして、話は従来の働き方へ。「経営学で日本型雇用システムの最大の特徴だと言われるのは、新卒一括採用でも終身雇用でもなく、『職務の無限定性』」だと切り出します。

「ジョブ(職務)が無限というのは、平たく言うと、上司からこれをやっておいてと言われた仕事が自分の仕事だということ。私も今までそうやって仕事をしてきました。それは、いろいろな仕事が経験できるというよい側面もあります。しかし、残念なことにもう一つの特徴である、チームで仕事をすることと相まって、労働時間が長くなる傾向にある。どの国際統計を見ても、日本は労働時間が長いことがわかります」

労働時間削減を通して何を目指す?

伊藤さんは、残業や長時間労働が当たり前になると必ずどこかにしわ寄せがいくと言います。

「これまでは、男性が正社員で、奥さんが(専業)主婦で、子どもが数人という世帯モデルを想定していろんな政策や制度が作られてきました。でも、今はもうそのような状況ではありません。そういう意味では、介護への対応も含めて、長時間労働を是正していくことは、働き方改革のファーストステージです。

ですが、労働時間を減らすことが目指すべきストライクではありません。労働時間の削減はセンターピンかもしれないけれど、それを倒して何を倒すか。それは、生産性を高めること。これが大事です。

だけど、『生産性を高める』ということだけではおそらく、人はついていけないと思います。そこで大事になるのが、モチベーションやエンゲージメント、選択肢があることです。テレワーク、フリーランス、兼業副業、限定正社員。今、すごい勢いで働き方は多様化しています。国としても、副業の容認へ、モデル就業規則の改定が行われました」

人生すごろくからポケモンGOの時代へ

これらの流れを受けて「会社と個人の関係が1対1から、フレキシブルなものに変わる」と伊藤さんは続けます。

「従来の結婚や働き方観はもうアウトデートになっています。キャリアを一つずつ上っていくキャリアラダーという概念はキャリア論ではすごく重要なのですが、これまでのようにサイコロを振ってコマを進めて、最後に『上がり』となるような“昭和の人生すごろく”から、いろんな世界にでかけていって、自分の持ち札であるポケモンをゲットしていくするような“ポケモンGO”の時代に変わってきているのです。

これから“人生100年時代”がやってきます。その時代を生き抜くには持ち札を増やすことだと思っています。つまり、選択肢を広げるということ。しかし、選択肢が広がるということには責任を伴います。責任というのは、それぞれの立場に応じてプロフェッショナルであるということ。私は、そういうことを考えながら働き方改革を進めていきます」

次の記事: 20歳で2社目の起業、会社員で10社超の副業…新しい働き方の最前線

(構成:ウートピ編集部、安次富陽子)

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