『生涯未婚時代』永田夏来さんインタビュー 最終回

息抜きの不倫ほどつまらない時間はない 夫婦のカタチについて考えてみた

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息抜きの不倫ほどつまらない時間はない 夫婦のカタチについて考えてみた

この人だと思う人に恋をして、結婚して、子どもを産んで生涯添い遂げる。人生は基本自由!だとわかっているけど、こと結婚に関しては「そうあるべき」と心のどこかで思っていたりしませんか?

でも、実際には、仲は良くてもセックスはしないとか、別々に暮らしているとか、あえて子どもを持たないとか、「夫婦のカタチ」は実にさまざまです。

前回に引き続き、『生涯未婚時代』(イースト・プレス)を上梓した、永田夏来(ながた・なつき)さんに、家族という単位の元となる夫婦について話を聞きました。

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【第1回】結婚していない「私」は未熟なの?
【第2回】なぜ「理想の家族のカタチ」は変わらない?

プリンセスさえ「掴みにいく時代」

——今回は、夫婦について聞いていきたいと思います。ウートピでいろんな夫婦のカタチを見ていると、結構自分が保守的なんだと気づかされることがあるんですよね。

永田夏来さん(以下、永田):保守的ですか。それってまさか、「運命の人がいて、向こうも自分のことを一番愛してくれて、まさにベストマッチング! その人と一生を添い遂げるのが幸せ」だなんて思っていませんよね。最近のディズニープリンセスだってどんどん自分から幸せを掴みに行っているのに。

——さすがに、いつか王子様が向こうから来てくれるとは思っていませんよ(苦笑)。ただ、互いに1番好きで、一生添い遂げられたらいいなぁとは思います。

永田:その価値観は、小さい頃に聞いた話が絶対だと思っているからかもしれません。でもそういう考え方は、変えて大丈夫ですから。

——なぜですか?

永田:だって、結婚しても安泰ではないですよ。死別はもちろん、離婚の可能性だってありますし。以前よりだいぶ増えてはいますが、日本はまだ諸外国と比べると離婚は少ない方です。家族が安定しているという意味ではいいんですけど、でも、家の中で無理して頑張っている人がいる可能性があるなら要検討ですよね。

結婚神話、いつまで続けるんですか?

——離婚したいけど、できなくて無理しているという状況ですね。

永田:そう。結婚を必要以上に神聖視して身動きできなくなっているケースもある。現状は苦しいけど、結婚が勝手に神話化されちゃって。神話があることによってみんなが頑張れるならいいのですが、今は逆にしんどくなっているんじゃないかと思うんですよ。

以前、ゼクシィ編集長と対談したことがありました。『ゼクシィ』という雑誌はもちろん結婚がメインコンテンツなのですが、実は再婚やLGBTの結婚などもとりあげて、「時代にキャッチアップしていこう」とすごく工夫しているんです。それでいて結婚の神話が守られているのはすごいことだと思いますね。

——どういうことですか?

永田:つまり、昔の考え方に固執しないで、時代の変化に合わせて進化する努力をしている。その中で選ばれる結婚の形ってなんだかよさそうなものだって思いませんか?

——なるほど。最近話題になったゼクシィの「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」というコピーはまさにそうですね。

永田:そうそう。まさに。でも『ゼクシィ』に代表されるような結婚産業が工夫を凝らしているからこそ、結婚って、そんなにいいことばかりじゃないというリアリティを伝えるのも大事だと思っています。結婚して素晴らしい時もあったけど、つらい時もあったとか。あるいは、うまく相手を選べなくて失敗することもあるんだという事実もしっかり出す。ネガティブなこととして隠す必要はないと思いますね。

軽はずみな結婚は悪いこと?

——結婚にまつわるつらい経験や離婚もきちんと伝えることで、「失敗も単なる失敗ではない」というメッセージにつながるんですね。スターター・マリッジもそうかなと。

永田:高学歴で上昇志向が強くて恋愛にも積極的なカップルが、20代のうちに結婚したものの子どもを持たないうちに5年以内に離婚する。それがアメリカに見られるスターター・マリッジですね。

——若気の至りとか、軽はずみな結婚と言われがちですが、相手との「居心地の悪さ」を無視できなくなるという事実はおもしろいですよね。

永田:そうですね。自分の人生の方向性がまだはっきりしない時に、「堅実な家庭を築きたい」と結婚して、その理想と環境がブレないまま60年ぐらい共有できたらすごいことですけど……。できなかったからといって、不思議はないと思います。

1980年代前半までは、ライフプランにそんなにバリエーションがなかった。平均寿命も当時は、男性は75歳くらい、女性は80歳くらいでしたし。しかしここ30年くらいの間に寿命自体も健康に過ごせる余生も伸びて、それぞれがいろんなライフプランを考えるようになったんです。すると当然、夫婦関係も20代前半、30代、40代……と各年代でベストと思う形がズレてくる。それをお互いに修正して夫婦関係を再構築するのが負担になる状況は起こると思います。

——100年時代だと言われる今、還暦を過ぎてもまだ40年もあるんですよね……。30歳で結婚したとして、一生添い遂げるっていったら70年!?

永田:長いな。

——はい。長いっす。

永田:これからは、第二の人生、第三の人生みたいな感じで人生のサイクルが変わってくると思いますよ。離婚当たり前時代みたいな。2、3回結婚してもいいし、第二の人生で結婚してもいいとか。

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離婚から20年を経たふたりの話

——離婚を前提に結婚……?

永田:そう。私の勝手な考えかなと思っていたんですけど、実際そういう人は結構多くて。離婚後の人間関係もいろいろあるんですよ。

——結婚したことがないので、想像しかできませんが、離婚したら一生関わり合いたくないような気がします。

永田:たとえば、こんなケースがあって。離婚したけれど、それまでの仕事の関係もあって、そんなに離れて住むっていうわけにもいかなくて。元夫婦が近いところで暮らしていたらしいんです。それで20年ほど時間が経って、子どもたちが「再婚とかしなくてもいいけど、どうせ近いところに住んでいるんだから、お父さんが暮らしている2世帯住宅にお母さんが住めば?」と。「それでもいいかもね」ということになって話が進んでいるみたいなんです。

離婚したとしても、それは夫婦という関係にカタが付いたということであって、人間関係まで切れるかというとまた違う話だと思うんですよね。仕事で何かつながりがあるかもしれないし、趣味でつながりがあるかもしれない。今までと違う人間関係を作るのだと考えれば、単なる失敗ではない別の方向性が見えてくると思います。

——なるほど。

永田:そうやって人生100年の中で結婚して離婚して、ダメだったからといってそれを大きな挫折だと思う必要はないと思うんです。その先にもまたいろんな展開があるわけです。20代半ばでの離婚が、30代、40代になって、また違う形で自分のことを助けてくれるかもしれないし。

そういう可能性を考えたら、夫ないし妻に対して不満を溜めながら何十年も過ごしたり、息抜きのために不倫をしたりして、つまらない人間関係に時間を使うよりも、自分で関係のあり方を決めるためにも離婚という選択肢を持つ方がよっぽど、夫婦関係に対して真摯に向き合っているんじゃないかなと思いますよね。

(取材・文:ウートピ編集部 安次富陽子、撮影:面川雄大)

【イベント情報】
永田夏来さんと、エッセイストの紫原明子さんの対談トークイベントが開かれます。

結婚と家族にしばられない生き方って? ~「呪い」の言葉をはね返す「白魔法」~
日時:2017年9月22日(金)19:00〜21:00
参加費無料
詳しくはこちらをご覧ください。

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