「彼氏はいるけれど結婚したいのか、したくないのか自分が分からない」「相手のことを大好きだと言える確信が持てない」「自分にピッタリな人に出会えない」ーー仕事はバリバリこなせても恋愛ごとになると自信を失ってしまう、そんな女性が多いようです。
そこで、以前『友達のフェイスブックにイライラするのはなぜ? 脳科学者と心理学者が解説する「嫉妬」と「妬み」の正体』で悩める女性に助言をいただいた、脳科学者・中野信子さんに再び解決策をお聞きしました。
恋愛はただ好き、心が動く、という感覚が動かしているというのが当然だと思っている人が多いでしょう。でもそこには心ではなく、体と現代の文化が私たちを揺り動かす要素が詰まっていたのです。
つきあってしばらくすると、訪れる倦怠期。パートナーから連絡が来るだけでテンションが上がるような日も確かにあったのに……。できれば、あのときの気持ちをふたりの間に取り戻して、「好き」という気持ちを思い出したい人もいるのではないでしょうか。
恋の終わりにもつながる倦怠期の仕組みを脳科学の視点から中野信子さんに解いてもらいました。……手厳しいご意見につき、ご容赦ください。
恋愛するよりも怠けていたい、私たちの脳
——いわゆる“倦怠期”というものは、恋愛のやる気スイッチをOFFにしている状態ですが、これはなぜ起こるのでしょうか。
中野信子さん(以下、中野):人間の脳はとても怠惰なものですから、脳を使いたくないんですよ。世の中がこれだけ脳のトレーニングを勧めていたのは、脳トレが足りないからです。でも怠惰なことにも理由があるんです。
脳は体に対して2%くらいの体積しかないのに、めちゃくちゃリソースを使う臓器です。脳はブドウ糖をエネルギーにしていて、そのエネルギーを得るためには酸素が必要になります。ブドウ糖と酸素はエネルギーをつくる代表的な要素なのに、その多くを脳が使用してしまう。
2%しかない小さな部署が、会社の予算の多くを使っていたら「節約しろ!」と言いたくなりますよね。だから脳を使わなくなってしまうんです。
——とはいえ、恋愛するといろいろ考えちゃいますよね。楽しいことから辛いことまで、24時間脳をフル活用しようとしてしまいます。
中野:そう、どうしても考えてしまう。それをデフォルトネットワークというんですけど、寝ているときでも6割の脳は動いているんです。それほどリソースを使うので、できるだけ脳を動かしたくない。でも脳内で意思決定するとパソコンが立ち上がるようにまた動かなくてはいけない。自然に脳も疲れますよね。
——少しでもサボりたいのが、脳。
中野:例えばパートナーに「夕飯を何にする?」と聞かれて「なんでもいいよ」と答えられると「なんでそうなるの!」とイラッとしたことはありませんか? あれは「私の脳がリソースを使うのかよ!」っていう現象なんです。
恋愛初期は楽しさが先行しますから脳がずっとブーストされて、ドーパミンがどんどん出て、疲れを感じずにいられます。でもだんだん時間が経てば疲れてきますよ。そうなると「なんでもいいよ」に腹が立ってくるという。それが倦怠期なんでしょうね。
倦怠期は乗り越える努力よりも リセットがラク?
——では中野さん、その倦怠期を越えるためには……?
中野:うわ〜、それ難しいかも(笑)。
——別れるのは実際気力も体力もいるし。努力で改善できるならそうしたいな、と。
中野:私は別れて新しい出会いを検索することをお勧めします(笑)。倦怠期を乗り越えるのは本当に難しいんですよ。そのためにみんなトリッキーなことへ走っちゃうんです。エションジストクラブって知っていますか?
——ハプニングバーのことですよね。
中野:そうです。パートナーを変えて楽しむっていう……。それくらい強い刺激を必要とするんです。そこまでして倦怠期を抜けたい理由はありますか?
——うーん、「一人になるのが嫌だからキープしたい」という気持ちはありそうです。
中野:相手の立場に立って欲しいんですが、30歳同士のカップルがいたとしますよね。そこそこ交際期間があるけど、マンネリ気味。「本当に自分のことが好きなのか」という疑問がある状態の相手と、未来を考えたくはないですよね。
——そうなると、やはり新しい恋なんでしょうね。
中野:それを脳も希望していると思います(笑)。
倦怠期を乗り越えるよりも新しい恋。合わない相手と無理に交際を続ける必要はなさそうです。
次回は脳科学の側面から考える「失恋の乗り越え方」を聞いていきたいと思います。
【第1回】「恋愛の教科書がない」 “タラレバ娘”世代 脳科学者に聞く、恋愛の処方箋
【第2回】「恋しなくちゃ」と思い込んでいる貴女へ 脳科学者に聞く恋愛のカタチ
【第3回】SNSによって生まれた新たな恋愛観
【第4回】脳のクセを使えば「運命の人」に出会える