ピンヒールで仕事もプライベートも頑張っていた頃…ペタンコ靴に履き替えて

ピンヒールで仕事もプライベートも頑張っていた頃…ペタンコ靴に履き替えて

「#両立って必要?」
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仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。理想の自分になるためにがんばってはいるけれど、時々しんどくなってしまうことも。

今回、ウートピでは、そんな悩ましい両立について、改めて問い直してみるキャンペーンを始めました。その両立は貴女の人生に本当に必要なものなの? 貴女が幸せになれる両立ってどんなカタチ? 一度、一緒に考えてみませんか?

みなさんはハイヒールを履きますか?

仕事のある日はほぼ毎日履く。
「ここぞ」という勝負の日に履く。
結婚式やパーティーなど、特別な日に履く。
彼氏と会う時だけ履く。

履けば、ちょっと視界が上がり、背筋がピンと伸びて、自分の中でスイッチが入る。一日履くと本当につらいけれど、その痛みとトレードオフで、自信を与えてくれるファッションアイテムです。

そんなハイヒールを最近思いきってやめたのが、メディアプロデューサーとして活躍する元「C CHANNEL」編集長のやまざきひとみさんです。10年前に社会人になって以来、仕事のある日は毎日履いていたという10センチ超のハイヒール。なぜ、今やめる決意をしたのでしょうか?

身長152センチ、いつも「あと10センチあれば」と悔しい思いをしながら生きてきたウートピ編集長の鈴木円香が聞いてきました。

「ハイヒールやめます宣言」の裏側

——実はこの企画、以前Facebookでやまざきさんが「ハイヒールやめます宣言」をしていたのを見たことからスタートしたんです。実は20代後半から30代の女性をヒアリングしていると、みなさんハイヒールにはいろいろと複雑な思いがあるみたい。みんな「やめたいけど、やめられない」とか、「移動しにくいから、やめた」とか、ハイヒールに対しては揺れ動く心があるようです

今日は、「ハイヒールやめます宣言」の裏側をじっくり取材させてください。

やまざきひとみさん(以下、やまざき):裏側(笑)。はい、よろしくお願いします!

「ハイヒールやめます宣言」から3ヵ月。取材にもやっぱりペタンコ靴でやってきたやまざきさん。

「ハイヒールやめます宣言」から3ヵ月。取材にもやっぱりペタンコ靴でやってきたやまざきさん。

——やまざきさんはもともとハイヒールが大好きだったとか?

やまざき:そうですね、新卒でサイバーエージェントに入社してからは毎日履いていました。しかも、10センチ超のピンヒール(笑)。あの頃は20代らしくダイアナなどで手頃な値段のハイヒールを買ってたかな。当時、目黒にあった自宅から渋谷のオフィスまでカツカツとピンヒールで出社して、深夜までずーっと履きっぱなしでした。

——履きっぱなしなんですか? オフィスでスリッパに履き替えないんですか?

やまざき:他の同僚の女の子の多くは履き替えてました。でも、私は絶対に履き替えなかった。そもそも会社にスリッパを置いてませんでした。だって、職場はオンの場所だから、そこでスリッパを履くって何かを一つ諦めるような感じがして。ほぼ内勤でエンジニアとのやりとりが主な仕事内容だったんですけど、一日中ハイヒール履いてました。

——デスクの下でも脱がなかったんですか?

やまざき:脱がなかったです。パソコンの前は自宅のリビングじゃないし(笑)。ペタンコのスリッパを履いてオフィスを歩いている同僚の子を見て、「なんか、頑張り方違うよな」と内心思ってました。あの頃の私にとって、ハイヒールはオンの時間を頑張るための戦闘服だったんです。

——ハイヒールは戦闘服。ああ、なんか、わかる気がします。

今も大切にしているマノロブラニクのハイヒール。

今も大切にしているマノロブラニクのハイヒール。

トッズのハイヒール。「いつもこのくらいの高さのを履いていました」とやまざきさん。

トッズのハイヒール。「いつもこのくらいの高さのを履いていました」とやまざきさん。

やまざき:サイバーエージェントには2007年に新卒入社してから2015年まで9年ほどいましたが、その間はずっと心のどこかで「ナメられちゃいけない」という気持ちがありました。だから、仕事をしている時は常に戦闘服が必要だったんです。

——年齢でいうと、サイバーで会社員をしていたのは23歳から32歳までに当たりますね。若い分やっぱり素のままでいるとナメられちゃう場合も多かったんですか?

やまざき:実際にナメられるというより、自分で勝手に「ナメられたらどうしよう」と力んでいたんだと思います。入社3年目で初めてマネジメントを経験して以来、ちゃんとしてるように見せなきゃ、人がついてくるようにしなきゃ、という意識がありました。

ピンヒールを履いて出世一筋だった20代

やまざき:20代って、「頑張る」くらいしか武器がないんです。だから、とにかくがむしゃらに頑張ってた。そうすると、「やまざき頑張ってるから、やらせてみるか」と抜擢されて仕事をもらえるようになって。でも、「抜擢」って、いつも最後についていくことなんです。

——最後についていく?

やまざき:会議ではメンバーの中でいつも私が一番後れてるんです。絶対的に知識が足らないし、会話にも入れない。管理職っぽいポジションに就くにつれ、出席する会議も男性ばかり、しかも一生かけても追いつけないような神様みたいな人ばかりになっていく……。それでせめて、10センチ超のピンヒールを履いて背だけは高く見せようとしていたんですね、きっと。

抜擢、抜擢でいつも高いハードルが目の前にあって。焦燥感を覚えることは、すごく多かったです。ずっと受験勉強をしているような、まだ小学生なのに大学の授業に出ているような。そんなつらさがありました。

ハイヒーる

——でも、どうしてそこまでがむしゃらに頑張れたんですか?

やまざき:出世したかったからです。

——キッパリ、ですね(笑)。私は会社員時代は全然出世に興味がなかったので、そんなに素直に出世を目ざせる理由を知りたいです。

やまざき:「出世しよう」と決めたのは、26歳の時でした。それまでは頑張ってもなかなか結果が出なくて、「もう会社に行きたくない」という時期もありました。何のために頑張ればいいのかわからないと悩んでいた時に、メンターの先輩から「会社員なんだから、出世を目ざした方がいいよ」と言われて、「ああ、そっか」と。

実際、出世を目ざす女性は少ないので、「私、出世したいんです」と社内で口に出していたら、大きな仕事のチャンスをいくつかもらうことができました。それで30歳目前までピンヒールを履いて突っ走ってた感じですね。

「やまざき、仕事だけじゃダメだぞ」

——新卒で入社した会社で出世の階段を登り詰めるつもりだったやまざきさんですが、2015年に退社してフリーランサーとして独立、「C CHANNEL」の編集長を務めたのち2016年7月には自身の会社HINT,inc.を設立。現在はメディアプロデューサーとして活躍中です。

出世一筋から、どこでどんな心境の変化があったんですか?

やまざき:いろいろな理由があるんですが、一つには「30の壁」が大きかったですね。ここまで20代は仕事をがむしゃらに頑張ってきたと話してきましたが、実はプライベートもかなり頑張ってたんです。

入社1年目でサイバーエージェント社長の藤田晋さんに言われたんです。「やまざき、仕事だけじゃダメだぞ。みんながついていきたいと思うのは、仕事もプライベートも充実してる女性なんだから」と。確か、失恋直後で元彼のことが忘れられなくて、「社長、私、もう仕事に生きます!!!」って飲み会で宣言した時のことだったかな(笑)。

——藤田社長の言葉を聞いて、20代は仕事もプライベートも両方頑張ってたんですね。

やまざき:そうなんです。頑張って両輪を回していました。素敵な彼氏もできて27歳で順調に結婚もして。だけど、30歳を目前にしてその両輪が合わなくなって、一度グチャって潰れちゃんたんです。

——グチャっと?

やまざき:はい、グチャっと。29歳の時にふと「私、本当に出世したいんだっけ?」と立ち止まっちゃったことが、一つ。このまま頑張り続けても自分は、会社を支えている役員のようになれる器じゃないという諦めもあったし。そんなふうに1、2年モヤモヤしていました。ちょうど31歳で離婚も経験しましたし。サイバーが楽しすぎて他に行きたい会社もなかったので、「ここが人生のクロスポイントだなあ」と感じて31歳で独立しました。

ペタンコ靴を履いて、人生リビルド中

やまざき:今は、30歳の壁にぶつかり一度グチャっとなってしまったものをリビルドしてる段階ですね。

——なるほど。ハイヒールからペタンコ靴に履き替えて、人生をリビルド中なんですね。独立したこととハイヒールをやめたことは直接関係あるんですか?

やまざき:ありますね。独立した時も、やっぱり戦闘服というか、自分を大きく見せてくれる鎧が欲しくなったんです。立派な屋号とか、信頼を得られるようなセルフプロデュースとか。ナメられちゃいけないという思いがどこかにあって、あれこれ考えてました。

でも、独立していろいろな仕事をやっているうちに気づいたんです。これからは実績を名刺にしていくしかないんだな、と。サイバーという看板もなくなっちゃったし、10センチのピンヒールで武装してどうこうなるほど、会社の外の世界は甘くない。

——ここまでの話を聞くと、やまざきさんにとって、ハイヒールを履いてた時代は力んでいた時代だったのかもしれませんね。

やまざき:力んでました(笑)。あとは、「ハイヒールを履いて頑張る」みたいなキャリア女性像が、今っぽくないなという感覚もありました。肩に力が入っているのって、時代に合わないんです。だから、これからは肩の力を抜くことを頑張った方が、仕事も仲間も、いろんなものがついきてくれるような気がして。それもあって「ハイヒールやめます宣言」を出しました。

——「ハイヒールやめます宣言」を出したのが今年の1月6日。そろそろ3ヵ月が経ちますが、ハイヒールをやめてみてどうですか?

やまざき:とにかく移動がラクですね。独立すると、オフィスを起点に動くというワークスタイルから、クライアントのオフィスや撮影の現場を一日に何ヵ所もはしごするというワークスタイルに変わり、移動がすごく増えました。だから、歩きにくいハイヒールで移動するのは、効率が悪いし疲れてしまって。

歩きやすいペタンコ靴にした上で、さらに「出かけずにデスクワークに集中する日」と「打ち合わせをはしごする日」を意識的に分けることで、効率はグッと上がりましたね。そうやってオンの時間を最大限効率化することが、自分にとっても会社にとっても利益になるし。何より、女性の30代にとって「時間は資産」だから、思いきってハイヒールをやめてよかったです。

——「ハイヒールやめます宣言」の裏側には、悲喜こもごもさまざまな秘話があったんですね(笑)。やめたくても、なかなかやめる勇気が出ないハイヒール。やまざきさんの話に共感する女性は多そうです。今日はありがとうございました。

(ウートピ編集長・鈴木円香)

「#両立って必要?」キャンペーンがスタート

「仕事と家庭」「恋愛と仕事」「有能さと可愛げ」などなど……私たち働く女性の周りにはたくさんの両立が存在します。「どっちも手に入れたい!」という人もいれば「でもそれも大変そう」という人や「そもそもそんなこと意識したことなかった」という人もいるのでは?

そんな「両立」について、ちょっと立ち止まって考えてみない? というわけで、ウートピ編集部では9月11日から「#両立って必要?」キャンペーンをスタートしました。あなたが普段感じていることをハッシュタグ「#両立って必要?」をつけてSNSでつぶやいてください。皆さまからの生の声をお待ちしております。

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