健康常識アップデート 2023年版Q&A/第1回食事編①

健康常識アップデート2023年・食事編①「イライラはカルシウム不足」は本当?【専門医に聞く】

健康常識アップデート2023年・食事編①「イライラはカルシウム不足」は本当?【専門医に聞く】

「その健康常識、間違っているかも」とメディアでよく耳にしますが、医学は日進月歩、古い情報やイメージが混在しているかもしれません。そこで、2023年版にアップデートした健康情報について、連載で紹介します。第1回・第2回は「食事編」として、糖尿病専門医・臨床内科専門医で食事療法に詳しい福田正博医師に尋ねます。

福田正博医師

Q1:「ビタミンCはいくらとってもいい」は本当? 適量はある?

A1: ビタミンCは皮膚や細胞のコラーゲンの合成や抗酸化作用で、免疫細胞の活性、シミやシワなどの皮膚の老化の改善、血中のコレステロールを軽減、鉄分の吸収を促すなどの機能があります。美容のためにと、サプリメントなどでたくさん摂取する人がいると聞きますが、いくらとってもいいというのは間違いです。

たしかにビタミンCをたくさんとっても、健康な人は尿に排出されるため、強い副作用に見舞われることはあまりありません。ただしとりすぎると、下痢、腹痛、吐き気など、おもに胃腸の不調が現れることや、尿路結石の原因になる場合が指摘されています。

また、尿検査の2~3日前から直前まで次に紹介する量以上に服用していると、潜血や尿糖などが偽陰性(本来は陽性だが陰性となってしまうこと)になることがあるので注意が必要です。

厚生労働省が制定する「日本人の食事摂取基準」の現時点(2023年1月)での最新版・2020年版によると、ビタミンCの1日の摂取量の目安は、成人は1日あたり100㎎です。上限は「1,000mg(1g)」までとされています。なぜなら、これ以上の量をサプリメントなどでとっても、体への吸収率は低下して意味がない、また先述の通り、副作用が現れることもあるからです。

一方で、厚生労働省発行の「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、日本人女性30代の食事での1日の摂取量はおよそ65mg、40代は74mgとされています。目安より少し不足していますね。

まず、ビタミンCはなるべく食事でとるようにしましょう。そのうえでサプリメントで補う場合は、1粒あたりの含有量をパッケージの表示で確認して、食品以外の摂取量が1,000mg以上にならないようにするとよいでしょう。

Q2:「イライラするのはカルシウム不足だから牛乳を飲もう」は本当?

A2:カルシウムはイライラやストレスなど脳神経の興奮を抑えるように作用します。そのため、カルシウムが不足するとイライラするとイメージされることがあるようです。しかし実のところ、血液中のカルシウムは、たとえ食事からとる分量が不足していたとしても骨から補充されるため、一定に保たれています。

イライラする原因が、カルシウムの不足にあるとは言えません。イライラがおさまらない場合は、体調、精神状態、生活習慣、環境などにさまざまな原因があると考えられます。栄養の面では、イライラやストレスが溜まっていると「ビタミンB群」が消耗しやすく、「ビタミンC」も同様にイライラ時や疲労時、風邪、喫煙などでも低下し、体調不良に影響することがあります。不足しないように食事で補いましょう。

また、リラックス作用があることで知られる栄養素に、お茶のうま味成分の「テアニン」があります。お茶を飲んでほっとひと息つく、というのは理にかなっていると言われます。

Q3:「抜け毛予防には海藻類を食べるといい」は本当?

A3:ワカメやコンブを食べると髪が伸びやすい、生えてくる、黒くなる、抜け毛や薄毛を防げるといった話しを聞くことがありますね。ただし、海藻類に含まれる成分による根拠があるわけではなく、形状が毛髪に似ているからなどの俗説だと言われます。

毛髪の約90%は「ケラチン」というタンパク質であり、複数のアミノ酸でできています。ワカメやコンブなどの海藻類ではその含有成分は少量で、いくらワカメやコンブをたくさん食べても、毛髪が増える、抜け毛を予防するといったことは不可能です。

毛髪の栄養のためには、卵、魚類、肉類などのタンパク質をとる必要があります。ただし、栄養素は多種が作用し合ってこそ体内に吸収されて栄養となります。そのため、タンパク質を合成するために必要な、「亜鉛やヨウ素といったミネラル」や「ビタミンB群」、毛髪の土台の頭皮を整えるための「ビタミンA・C・E」も重要な成分です。

そのミネラルやビタミンは海藻類には豊富です。その点では、毛髪にとって海藻類は有用な食材だと言えるでしょう。タンパク質と合わせてバランス良くとりましょう。

  

聞き手によるまとめ

どの問いも、情報の一部だけがイメージとして伝わっていたようで、間違いだということです。「ビタミンCはとりすぎないようにする」、「イライラやストレスが強いときにはビタミンB・Cとお茶を飲む」「毛髪の栄養にはタンパク質が必要で、合わせて海藻類も食べよう」ということです。次回「食事編②」では「甘いものは疲労回復に良い?」などについて尋ねます。

(構成・文 藤原 椋 / ユンブル)

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

健康常識アップデート2023年・食事編①「イライラはカルシウム不足」は本当?【専門医に聞く】

関連する記事

編集部オススメ

2022年は3年ぶりの行動制限のない年末。久しぶりに親や家族に会ったときにふと「親の介護」が頭をよぎる人もいるのでは? たとえ介護が終わっても、私たちの日常は続くから--。介護について考えることは親と自分との関係性や距離感についても考えること。人生100年時代と言われる今だからこそ、介護について考えてみませんか? これまでウートピで掲載した介護に関する記事も特集します。

記事ランキング