フィンランド、どこで何をしよう? vol.2

ととのい未経験の私が、フィンランドのサウナで気づいたこと

ととのい未経験の私が、フィンランドのサウナで気づいたこと
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2022年1月、私は突然サウナにハマった。これまでも何度か入ってみたことはあって、そのたびに「熱くてしんどい」「水風呂、意味不明」と思っていたのに。なぜか唐突に「今日、水風呂、平気な気がする」と思い立ち、ハマったのである。

サウナ室で10分耐えられるようになり、水風呂も克服するとサウナへの興味はより深くなり、都内で話題のサウナはもちろん、静岡や沖縄でもサウナに行った。しかし、「ととのい」を感じることはなかった。そんな時に巡ってきた、サウナの国からのお誘い。

フィンランドのサウナなら、ととのって疲れ知らずで、ハッピーになれるかも、と欲張りな期待を胸にサウナを体験してきた。

フィンランド式サウナの特徴

心身が「ととのう」とサウナーの間で話題となり、2019年にはドラマのテーマにもなった「サウナ」。フィンランド語で蒸し風呂を意味する「Sauna」が語源となっているのだとか。

フィンランド式のサウナには、基本的に「サウナストーブ」と「サウナストーン」が設置されている。ストーブによってあつあつに熱されたサウナストーンに水をかけて、蒸気を発生させそれを全身で浴びるのが入り方のポイント。ちなみに、このときに発生する蒸気を「ロウリュ」と言う。

ドライサウナよりも湿度が高くなるため、息苦しさはそんなに感じなかった。しかし、蒸気だと思って油断すると「……熱い!!!!」とびっくりすることも。ロウリュのしすぎに注意。現地では、ロウリュする時は一声かけること、一度に2回までがマナーとのことだった。

熱々のサウナストーンに水を掛ける瞬間は毎回ドキドキ…

550万人に対して、330万個のサウナ

フィンランドの人たちにとって、サウナは生活の一部としても大切な場だ。公衆サウナのほかにも自宅や住んでいるマンションにサウナを設置しているところも多くあり、なんと人口550万人に対して、330万個のサウナがあると言う。

昔は、自宅にあるサウナ室の中で出産をしたり、誰かが亡くなった際にはそこで遺体を清めたりもしていたそうだ。

公衆サウナには、幅広い年齢の人たちが集まる。現地の人や観光客、お年寄り、子ども、家族、友人……中には、PCを広げてリモートワーク中らしき女性も見かけた。

タンペレにあるラウハニエミ公衆サウナにて。

サウナ室で一緒になったフィンランド人は口を揃えて「サウナ室の中では誰もが対等」なのだと言う。サウナ室の外でも平等意識が根付いている人たちなので、ニュアンスとしてはもっと……「ただの人間じゃん私たち」という感じなのだろうか。

こういうコミュニケーションがベースにあるから、「男女以前に、人間はみんな平等という考え方を持っているんです」(現地ガイドの山口さん談)と即答できるのかもしれない。かっこいい。

サウナ室の中でどんな会話が行われているのか気になって、帰国後、2010年にフィンランドで公開された映画『サウナのあるところ』を観た。過去の辛かったことや現在の悩み、幸せなどを静かに語る姿が印象的で、サウナ室が心身の支えになっている理由がわかった気がした。特に、語り終えて涙を流す相手にボソッと「もっとロウリュする?」と声をかけていたシーンが印象的だった。やだ。慰めのロウリュ、素敵じゃないの。

サウナの入り方

Harri Tarvainen

フィンランドの公衆サウナは、男女別のところも、一緒のところもある。ただし、男女別と案内されていても、曜日やイベント時には男女が同じサウナ室を使うこともあるので、事前にその日の状況をチェックしよう。

男女共用の場所では基本的に水着やタオルを着用する。(取材中、全裸の男女を数人見かけて驚いたけれど、施設のルールでOKならばもちろん問題ない)

1. 受付を済ませたら、更衣室で着替え。シャワーを浴びてサウナ室へ。衛生マナーでもあるので、お尻の下にしくサウナシート(たいてい入口付近に設置されている)をお忘れなく。

2. サウナ室の中では、サウナストーンに水をかけ、ロウリュを楽しむ。ロウリュする際には、石に水をかけてもいいか確認を。

3. 適度な汗をかいたらサウナ室を出て、シャワーを浴びて外気浴で休憩。近くに海や湖、プールがあるときは泳いでクールダウンすることも。自分のペースで1〜3を繰り返す。

ととのうって、フィンランドでなんていうの?

フィンランドのサウナの入り方はすごくシンプルだった。行く前は、「6〜12分入って、水風呂を1分、休憩5分の1セットを3回…」といったルーティンがレシピのように決まっているのかと思っていたけれど……。ととのうことに囚われず、もっと自由にやってみたらいいのかもしれない。なんか水風呂いけそうな気がする……とひらめいたあの瞬間のように。

そして、いくつかの施設を訪ねてふと気づいたこと。

あれ? 水風呂なくない???

湖やプールが近いところもあるけれど、ホテルのサウナ室にはシャワーのみ。それだと日本のルーティン「サウナ室」「水風呂」「外気浴」ができなくて、ととのわなくない??

フィンランド人に「ととのう」について聞いてみた。すると、「特に該当する言葉が見つからないのだけど……それってどういう状態のこと?」と逆に質問されてしまった。

「えっと、ディープリラックスとか、エクスタシー、ハピネスとか??」「うーん……」。

サウナに入って、そういう状態を感じることは理解できるけれど、やはり「ととのう」に該当する言葉はないようだ。そのうち、「日本人はサウナにくると、必ずTotonouを聞いてくるよね」「わかるー。Totonouって言うよね」なんて会話から、「ととのう」が定着する日が来るかもしれない。

ちなみに「誰もが真冬の凍った海や湖にダイブするわけではない」そうだ。自分のペース、大切に。

こんなイメージがあったけど、楽しみ方は人それぞれ。@Visit Karelia / Harri Tarvainen

ヘルシンキ&タンペレで行きたいサウナ

ここからは、今回の視察で訪れたサウナを紹介! まずは実際に入ってみたサウナ3つから。

Allas Sea Pool(アッラス・シー・プール)/ヘルシンキ

Photographer:Julia Kivelä/Visit Finland

ヘルシンキの中央部、マーケット広場のすぐ隣にあるサウナ。2016年にオープンしたモダンサウナ施設だ。温水、子ども用、海水3つのプールと男性用、女性用、混浴のサウナがあり、週末は地元の人たちで賑わうそう。ちなみに温水プールの水深は165cm。154cmかつ泳げない私は、プールのふちにつかまって小鳥のようにじっとしていた。

新設されたサウナ室(画面右側の黒い建物)

新しくオープンした、プールデッキにあるサウナ室はガラス張りで、海を眺めながらロウリュができる。比較的まろやかな温度なので、じんわりと汗が出る。海水プールの水温は、夏でもキンキンの約10度。なかなか攻撃的な冷たさだった。

サウナとプールのあとは、併設されているカフェ・バーで低アルコール飲料の「ロンケロ」を。ここではサーバーから直接、注がれるロンケロを楽しむことができる。

ロンナ/ヘルシンキ

(Visit Finland)

「Lonna Sauna(ロンナ・サウナ)」は名前そのまま、ロンナ島にあるサウナ。ロンナ島は、マーケット広場から出るフェリーに乗って約10分で到着する全長150メートルほどの小島だ。1973年まで軍事目的で使用され立ち入りが制限されていたが、2014年に一般公開された。

毎週火曜日と金曜日は男女混浴の日。人が少ないほうのサウナ室であることを願ってドアを開け、ロフトをのぼる。「あ、また会ったね!」と挨拶をするのも楽しい。

ロウリュは蓋を開けて、長い柄杓で水をかけるスタイル。職人になったような気分になる。

クールダウンは、海で。ゴツゴツした岩場の上を行くのでビーチサンダルを持っていくと安心。どこまでも続く海。穏やかな風と日差し。この世のリラックスが全部ここに「ある」と感じる瞬間。

島には、サウナの他にも、オーガニックレストランやコーヒーシップがあるので、のんびりと滞在したい。

公式サイト
http://www.lonna.fi/en/
*営業は夏の間のみ(2022年は5月5日から9月30日まで)

ラウハニエミ・サウナ

フィンランド人が選ぶ住みたい町ランキングで上位にランクインする、タンペレ。ヘルシンキからは電車で1時間半ほどの場所にある。フィンランドの中でも最もパブリック・サウナの数が多く、2018年には「サウナ・キャピタル」の公式ステータスを獲得。伝統的なサウナから最新のサウナまで、あらゆる種類のサウナが揃う町だ。

ラウハニエミ・サウナは1929年から運営されている、歴史のある公衆サウナ。体験したサウナの中で、いちばん話しかけられた場所だった。雰囲気は「よく来たな!サウナのこと教えてやるよ!」という感じで、ローカル感たっぷり。

(VisitTampere)

1年中利用でき、冬には凍った湖で泳ぐこともできる。サウナは男女混合。予約をすればプライベートで利用できるログサウナもある(別料金)。

特筆すべきは、サウナ室から、湖への同線がばっちりなこと。飛び込み台からドボン!はみているこちらも気持ちがいい。私は泳げないので、隣の階段からそろりと降りて蝉のように手すりにとまっていたけれど……。それでも、ロウリュで蒸された体が冷たい湖の水に包まれて、気分は爽快。

それぞれ好きな場所でリラックス

公式サイト
https://rauhaniemi.net/en/

サウナキャピタルに、ニューフェイスが続々オープン

続いて、見学させてもらったサウナを3つ紹介する。比較的最近オープンしたもので、どの施設も新しくてきれい。都会のど真ん中にありながら、自然の中で感じたリラックス感とはまた違う開放感を感じられる場所だった。

サウナレストラン Kuuma(タンペレ)

(VisitTampere)

1階がサウナとレストラン、2階がバーのサウナと飲食店が一体化した施設。「みんなのリビングルーム」として、住民にも観光客にも愛される場所を目指す。ヘルシンキにある都市型サウナ「ロウリュ」の弟分的な存在の場所でもあり、「伝統×モダン」、「ローカル×アーバン」といった掛け算のコンセプトが注目されている。

川で泳いでいるような気分になれるプール

サウナは、薪で温めるスモークサウナが特徴。レストランのメニューは、地産地消でオーガニックにもこだわって開発。ヴィーガンやローフードにも対応している。

PERISCOPE(タンペレ)

2022年5月にテラスが拡張され、ゴージャスな屋上サウナが誕生。サウナとジャグジーからは、ラティーナスタジアムを眺めることができ、まさに都市のサウナ。レストランには、和食やタイ料理、韓国料理などをアレンジしたメニューも。アジアが恋しくなった瞬間だった。

LAPLAND HOTELS ARENA(タンペレ)

お部屋にサウナが…!

客室数273部屋からなる、ラップランドホテルズアリーナ。サウナつきの部屋が72部屋以上あるだけでなく、宿泊者が無料で利用できる男女別のサウナが屋上のテラスにも用意されている。予約をすれば、プライベートサウナを貸し切ることもできる。

風と景色が最高!

(取材・文:安次富陽子)

本記事は、2022年6月26日~7月2日に開催された、Visit Finland(フィンランド政府観光局)主催のプレスツアーのレポートです。「サウナ」と「サステナブル」をテーマにヘルシンキとタンペレを巡りました。

<取材協力>
Visit Finland(フィンランド政府観光局) https://www.visitfinland.com/ja/
ヘルシンキ観光局 https://www.myhelsinki.fi/
タンペレ観光局 https://visittampere.fi/

<読者のみなさまへ>
今回、アフターコロナの旅行先としてフィンランドを紹介しておりますが、渡航についての条件等は国内外で日々変化しています。下記に紹介するサイトなどで、信頼できる最新情報を各自でご確認のうえ、旅の計画をお願いいたします。世界中を安全に回れる状況が、1日も早く戻ってきますように。

外務省海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html

厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

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