コラムニストの桐谷ヨウさんによる連載「なーに考えてるの?」がスタートしました。ヨウさんがA to Z形式で日頃考えていることや気づいたこと、感じたことを読者とシェアして一緒に考えていきます。第24回目のテーマは「Y=Young(若い)」です。
「今日が人生でいちばん若い日です」が沁みるワケ
「今日が人生でいちばん若い日です」
この1年でいちばん多くの動画を視聴して、たくさんの勉強をさせてもらったYouTuberが必ず言うキラーフレーズであります。これですね、若い頃に聞いていたら「はいはい、よくあるポジティブ・シンキングのセリフですね」と思ってたと思うんだけど、この歳になると……沁みます(笑)。
思えば、年齢に対して実際の自分が追いついていないような感覚はずっと昔からあったように感じる。たとえば25歳のときは、もっといろんなことができるようになると思っていたし、30代はもっともっと大人になっていると思っていたら、案外そうでもなかった。毎年、誕生日のたびに感じるというか。
この感覚は俺だけじゃなく、周囲でも同じようなことを言っている人は、多い。あくまでも身近な人では、ですが。
最近、あらためて見直している言葉がある。それは「拙速」というものである。
厳密な意味合いとはちがうのかもしれないけど、俺のいまの受け取り方は「ウダウダ考えずに、とりあえずさっさとやっちゃったほうがベター」って感じです。
どんなに考え尽くしても、どうせパーフェクトに巧くやることはできない。それならば、拙(つたな)くてもスピーディーにやったほうが結果的に良いことが多いんじゃないか、と。それはいまの世の中が読みづらい変化の激しい世界観だからってこともあるし、そもそもなんでもやるなら早いに越したことはなかったりするからです。
そう、やり始めるのが遅くて損することはあれど、やり始めるのが早くて損することはそうそうない。今までの自分の経験を振り返っても、案外そうじゃないだろうか?
自分がいつ死ぬのか分からないし、寿命がどれくらい残されているのかは考えたくもないけど、まちがいなく今日というのは残された日々の初日であって、今日から始めない理由は存在しないと言えるわけです。
ホワイトニング、お箸、永久脱毛…この歳になって始めたこと
とはいえ、そんなに大げさなことを始める必要はないと思っていて、本当に小さくて個人的な「なんとなくずっと気になっていたこと」を解消していくのが良いと思っています。
たとえば俺の場合、いちばん大きなものは歯ですね。数年前から虫歯を増やさないように意識は上がっていたのですが、審美的な目線で突き進めて行くようになりました。長年のタバコとコーヒーで染まりきった歯をクリーニング&ホワイトニングして白くしていくことだったり、銀歯がめちゃくちゃ多いのでセラミックに置き換えていく施術をしています(めっちゃ金かかる!)。
あとはお箸の持ち方ですね。30数年、ちょっとクロスしちゃう持ち方&使い方をしてしまっていたのですが、なんとなく直してみようと思い立って練習を始めて数週間です。なかなか慣れ親しんだ運動パターンを変えるのは苦労していますが、この歳になってできなかったことができるようになっていくプロセスというのは、楽しいものです。なにより、箸の持ち方を変えると、箸の動かし方、箸使いに気持ちがいくようになって、新しい感覚を得ていることが、面白い。
これから始めるのは永久脱毛ですね。全身の毛は薄い方なので困ったことはないのですが、ヒゲですね。毎日のようにヒゲを剃るのはバカバカしかったし、生やしてみても似合ったためしがないのです。これはもう毛根を抹殺してしまおうという考えに至りました。トゥルットゥルになるのが楽しみです。
非日常が日常になってしまって、好きに外出できないヒマすぎる今こそ、こういう手付かずのネタを解消して行くのにうってつけだと思うんだよね。
どの年代になっても“若輩者”
最後に書きたいのは、どの年齢になっても若輩者ということである。
たとえば仕事とかが分かりやすいんだけど、二十代のときは問答無用で青二才扱いである。そこから数年すると担当者レベルとしては一人前になるけど、難しいことの判断はまだまだ自分ではできなかったりする。良い感じに中堅になってきても、マネージャーから見るとまだまだ視野が足りていなかったりする。その中間管理職だって、部長・部門長の世界観からすると、ツッコミを入れたくなる感じだったりする。
ようは三十代は三十代の、四十代は四十代の、五十代は五十代の「その世代と立ち位置ごとの若輩者感」がある、ということである。
健全に前に進んでいれば、積み重ねた年齢のなかでは新人で、まだまだ学べることはたくさんある。老化とは、変化することを止めたときに訪れる。どのタイミングでも若輩者であることを意識しながらひとつひとつ吸収していくことが大事なんだと俺は思っている。
逆に、年長者として場の中でいちばん年上になることもあるだろう。そんなときはOssanの回で書いたように、とにかく聞き役にまわろう。話を振られても乗ってはいけない。年上の話は相手からするととにかくおもんないと心がけよ。いまの最新の価値観を教えてもらい、自分のズレをアップデートする機会を与えてもらおう。できることは経験で培ったコミュニケーション能力で場をうまく回すことと、年長者の流儀としての金払いの良さくらいである。悲しいが、これは胸に刻んでいきたい事実である。
「今日が人生でいちばん若い日」、ともにアップデートし続けていきましょう。