「Fit Me」の代表・星田奈々子さんインタビュー

ボタンもつけられないけどアパレルで起業 副業生活を8年続けて独立するまで

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ボタンもつけられないけどアパレルで起業 副業生活を8年続けて独立するまで

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会社員を続けながら、副業で起業する――。そんな「2足のわらじ」生活を8年間続け、2014年に独立した星田奈々子(ほしだ・ななこ)さん。1万円台で叶うフルオーダーメイドのサロン「Fit Me」を「2足のわらじ」で続けてきた、これまでの話を伺いました。

<星田さんが「やりたいこと」を見つけるまで>

22〜39歳:株式会社リクルートで会社員としてさまざまなな新規事業に関わる。
32歳:組織内で働くよりも、起業したいと考えるようになる。
32歳:プライベートで訪れたベトナムでオーダーメイド服に出会う。
33歳:副業としてフルオーダーメイドサロンFit Meを立ち上げる。
40歳:妊娠・出産を経験する
41歳:8年の「二足のわらじ」生活にピリオドを打ち、Fit Meに専念する。

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仕事は楽しいけど、マネジメントはやりたくなかった

「実は、特にアパレルが好きなわけでも、専門的な知識があったわけでもないんです。裁縫が好きだった? いえ、ボタンも自分でつけられません(笑)」

そう話すのは、フルオーダーメイドのサロン「Fit Me」のオーナー、星田奈々子さん。リクルートで会社員として働く傍ら、2006年の3月にこのビジネスを立ち上げました。
 
きっかけは、30代で迎えたキャリアの岐路。会社員として上を目指すのか、それとも別の道を選ぶのか――。選択しなくてはいけないタイミングに差しかかっていました。

「仕事はすごく楽しかったけれど、この先、マネジメントがやりたいかといわれれば、ちょっと違う。もともと起業の意志を持っていたこともあり、ある日突然、エレベーターを待っている時に、“よし、やめよう!”と決意したんです」

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ボタンもつけられないのに、アパレルを始めた理由

そこで、すでに起業していた元リクルートの親友を招集。“ビジネスの種”を彼女とブレストします。

「心に決めていたのは、“誰かを幸せにする仕事がしたい”ということでした。その上で、大義があり、シンプルで分かりやすく、ニーズが多い。この3つを満たしていれば、ビジネスとして必ず成功する。たくさん新規事業に関わった経験から、そう確信していました」

親友とのブレストのなかで飛び出したのが、「最近、楽しかったことは何?」という質問。脳裏にパッと浮かんだのは、その年のベトナム旅行での光景でした。

「それまで行ってきた海外旅行では洋服をオーダーメイドするのが楽しみの一つ。ベトナムでも30着くらい作ったのですが、それがすごくワクワクして楽しかったんですね。生地やデザインを選び、自分にピッタリのサイズで作ってもらう。私のためだけの洋服ができあがるのを待つ高揚感もあります。日本だと、オーダーメードは高いけれど、アジアで作ればすごく安いんです」

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さらに星田さんは、同僚の言葉を思い出します。

「胸の大きな同僚が“自分に合うサイズがない”と嘆いていたんですね。でも、オーダーメイドだと高いから無理だと。それを思い出し、“これってビジネスになるんじゃない!?”とビビッと来ました。1万円台というアイテム別の一律価格でオーダーメイドの服を作ることができれば、絶対に喜ばれる。受注式だからリスクも少ないはずです。これならいける、と思いました。とりあえず、“小さく始めてみよう”と始動したんです」

思い立ったら即行動。アドバイスをくれた親友と共にベトナムに渡航し、飛び込み営業で、パートナーになってくれる縫製工場を探すことに。同世代の女性オーナーと契約を交わした星田さんは、実際に現地のオーダーメイドサロンで1ヵ月間、無償で修行をしました。

「採寸の方法やデザインの決め方、オーダーのフローや生地の管理をどうするか……。アパレルのことをまったく知らず、縫製の知識もない状態だったので、覚えるのに必死でした」

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二足のわらじを履かせてくれた上司の言葉

準備は万端。星田さんは、上司に起業の意志を伝え、退社を申し出ます。しかし、そこで返ってきた答えは、意外なものでした。

「我ながらいいビジネスモデルだと思い、意気揚々と話したところ、なぜか爆笑されたんです。“奈々子、そんなちっちゃなビジネスをやるために辞めちゃうの? そんなの片手で回しちゃいなさい”と、発破をかけられたんですね。リクルートは副業が認められていたので、両立を勧められたわけです」

豪快な女性上司の言葉に背中を押され、「二足のわらじ」生活がスタートします。とはいえ、副業を公言するからには本業でも結果を出さないとまわりに示しがつきません。これまで同様、それ以上にパワフルにフルスロットで仕事を続けながら、飲みに行く回数を減らすなどして、副業の時間を捻出しました。

「育児をしながら働くママがいるように、自分の事業を育てながら会社で働く人がいてもいいんじゃないかと。何より人に喜ばれる仕事ができているという嬉しさが、私のエネルギーになっていました」

同僚や知り合いの口コミでお客さんも広がり、評判は上々。軸足が2本になったことで、目の回るような忙しさに襲われますが、「全然大変だと思わなかった」と星田さん。

「本業でやっていた新規事業に加え、自分だけの“プロジェクトX”を持っているようなワクワクした感じ。もう楽しくて(笑)。自分の判断ですべてが決められ、しかも、会社で新規事業を行っている時と違い、撤退を考えなくていいんです。永続的にやっていける事業を持っていることに、なんて幸せなんだ、私!と思っていました」

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「ガツガツしない人生」を始めたくなった40代

迷いなく突き進んできた道に、ふと立ち止まることになったのは、39歳の時。長く続けていた不妊治療が実って妊娠。あらためて自分の人生と向き合うタイミングとなりました。

「20代は死ぬ気で働き、30代はひたすらスキルを磨いて2足のわらじを履いた。じゃあ40代はどう過ごそうか?と考える中で、仕事という軸だけでなく、プライベートももう少し大事にしてもいいのかなと思ったんです。スキルが上がっている分、育児を加えた“3足のわらじ”も、もしかしたら可能かもしれない。けれども、それって自分のやりたいことなのかなと。子どものことを考えた時に、もっと自然体でガツガツしない“丁寧な人生”を送る道もあるのでは?と考えるようになりました」

育児だけに専念するつもりもないけれど、子どもに充てる時間もきちんと作りたい。これまでのように、仕事にも誇りをもって打ち込みたい。何を選び、何を手放すか――。悩んだ末、「副業で独立し、自由度を高める」道を選ぶことに決めました。

2014年7月、41歳で会社員生活にピリオドを打ち、フルオーダーメードサロン「Fit Me Order Made」をスタート。「“誰かをハッピーにする”という醍醐味を日々味わっています」と笑う星田さんが今、新たに取り組んでいるのは、トランスジェンダーの人たちの幸せの手助けをすること。

「サイズに合った洋服がないという声を受け、受注をスタートさせました。同時に肌の弱い人のためのオーガニックコットン素材も扱い始めています。いろんな垣根を飛び超え、いろんな人に平等におしゃれを楽しんでもらいたいんです」

広々した真っ白なサロン。壁に大切に掛けられていたのは、星田さんの“今”を手繰り寄せるきっかけとなった1枚――。ベトナム旅行で最初に作ったオーダーメードの鮮やかなワンピースでした。

今も大事にしているベトナムのワンピース

今も大事にしているベトナムのワンピース

「この服がすべての始まり。私にとって宝物ですね。もっとみんなに喜ばれるビジネスにしていきたいし、そうできると確信しています。いろんな可能性を探っていきたいですね」

Fit Me公式HP

(西尾英子)

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会社や組織に縛られることなく、自分ら人生の決断をし、新たな働き方を見つけてきた女性たちのインタビュー連載です。30代女性が、もっとしなやかに、そして軽やかに生きていくためのヒントが、ここにありました。

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