生理がきっかけで学校を辞めてしまう女の子たちもいる【安田菜津紀】

生理がきっかけで学校を辞めてしまう女の子たちもいる【安田菜津紀】

性別や年齢など、何かと理由をつけて差別を受けてしまう途上国の女の子たち。そんな彼女たちを支援する国際NGO『プラン・インターナショナル』は、10月11日の「国際ガールズ・デー」の活動の一環として、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんとグアテマラを訪問。

国民の60%が貧困層、ギャング集団の横行による治安の悪化に加え、「マチスモ」という男性優位主義の中で生きる女の子たち。その様子を安田さんに前後編に分けてリポートしていただきました。

前編:「学校に妊娠しに行くんだろう」と父や兄は言う

生理のこと、誰に相談しましたか?

初潮を迎えた経験のある人は、最初にその日がきた時、どれくらいその知識を持っていたでしょうか。そして真っ先にそれを、誰に相談したでしょうか。

前回の手記では、「マチスモ」という、グアテマラをはじめ中米に根強く残る男性優位の価値観について触れました。それはただ単に女性の教育の機会や社会進出の壁となっているだけではなく、生活に必要な知識を得るための機会を奪ってしまうことがあります。

グアテマラの中でもとりわけ農村地帯は保守的なコミュニティが多く、性教育を公に行うことも難しいため、生理がきた少女たちが、ただただ戸惑ったり、「生理がきたらお風呂に入ってはいけない」という誤った知識を信じてしまったりすることがあるのです。

「同じ世代の子たちの中には、生理がきて驚いてしまい、家にこもってしまう子たちもいました。幸い私の母はしっかりと生理について教えてくれましたが、話しづらくて困っている子たちの方が多いと思うんです」。

プラン・インターナショナルの活動に参加してきたエベリンさん(20)はそう語ります。

学校に行っても男女でトイレが別れていないため、“血が出ていることがばれたら大変”と、学校を辞めてしまう子さえいるのだといいます。

プラン・インターナショナルの活動に参加してきたエベリンさん。

プラン・インターナショナルの活動に参加してきたエベリンさん。

カラフルなデザインの生理キットを配布する理由

エベリンさんが暮らすアルタ・ベラパス県ポロチックは、マヤの人々が人口の多くを占めています。彼女の母親が「ウィピル」と呼ばれる伝統衣装を仕立てる仕事をしているため、彼女も鮮やかな刺繍の衣装を誇らしげにまとっていました。

首都から7時間以上も離れた山間の地域ということもあり、そうした伝統が損なわれずに残っている一方、女性たちが必要な知識を得ていくことは、とりわけ困難な地域なのだといいます。

エベリンさんたちが、プラン・インターナショナルの活動の中で配られた、生理用のキットを見せてくれました。布ナプキンやパット、石鹸などがセットになっている上、かわいらしい花柄でカラフルなデザインです。キットへのこだわりを、プラン・インターナショナルの現地スタッフたちも熱を込めて語ります。

「生活困窮家庭ではどうしても、安価な紙ナプキンで肌を痛めてしまったり、使い古した不衛生な布をあてていることもあるんです。キットに布ナプキンを選んだ理由は、布であれば経済的な負担も軽減できるからです。女の子たちが手に取りやすいよう、模様や色もかわいらしいものにしました」。

プラン・インターナショナルが支援し、新しい校舎へ建て替えられた学校では、男女別のトイレを作るなど、環境改善を進めています。ただ、問題を根本から解決するためには、ハード面だけではなく、ソフト面からのアプローチが不可欠となります。

活動の中で少女たちに配られた生理用のキット。

活動の中で少女たちに配られた生理用のキット。

次第に荒れていった父

エベリンさんの母親はとても活発な人で、地域の保健医療の活動などにも積極的に参加していました。一方、父親は、女性が自由に出歩くことをよく思わず、母親が活動の一環でもらってきた修了証などを破いて捨ててしまったこともあったそう。

「父は女の子たちが教育を受けることにも理解を示さず、次第に荒れていってしまったため、母と私たちは父と離れて暮らすようになりました」。

その間、母親はこっそりエベリンさんのお姉さんにお金を渡し、学校に通わせていたのだといいます。姉が中学校を卒業し、父親にそのことを報告しにいくと、「学校に行っていたなんて聞いていないぞ!」と喜ぶどころかお姉さんに怒りをぶつけました。

無意識に社会に定着させてきた価値観を変えていくことは、容易なことではありません。そのために女性たちは、実際の努力と結果で説得しなければなりません。それは時間も労力も、そして根気も要するでしょう。

「それでも姉は諦めず、奨学金を得て看護の道に進みました。着実に前に進む姉の姿を見て、父の態度も少しずつ変わっていきました」。

徐々にではあるものの、父親も理解を示し始め、お姉さんに背中を押されるように、エベリンさんも中学、高校と進学、そしてついに大学入学を果たしました。

未だ女性たちへの風当たりが強いコミュニティに生きながら、大学進学まで成し遂げるのは容易なことではなかったはずです。

中学校の教師になるという夢をかなえるため勉強に打ち込む傍ら、「同じような壁に苦しむ子どもたちの力になりたい」と、地域の子どもたちに、自分がプラン・インターナショナルの活動で学んだことや気づきを伝える場を築いているといいます。

生理についてや、女性が置かれた状況について、同じコミュニティー出身の少女たちと語るエベリンさん(左)。

生理についてや、女性が置かれた状況について、同じコミュニティー出身の少女たちと語るエベリンさん(左)。

これはグアテマラだけの問題ではない

こうした女性たちの前に立ちはだかる見えない壁は、グアテマラだけの問題ではありません。私がグアテマラから帰国した直後に参院選があったということもあり、改めて女性の政治参画について調べてみました。

下院(日本でいえば衆議院)比較で見ていくと、グアテマラの女性議員の割合は約20%、世界110位です。ところが日本は約10%、世界165位*でした。性教育のタブー視も、決して昔の話とはいえません。

*Women in Politics: 2019 | Inter-Parliamentary Union

女性の社会進出の難しさやハラスメント、それは日本だけの問題でもなければ、グアテマラだけの問題だけでもありません。だからこそ課題を共有することで、手を携えて解決に向かう糸口も見出すことができるはずなのです。

プラン・インターナショナルの招きで、間もなくエベリンさんは日本へとやってきます。国境を超えた分かち合いを通し、また新たな気づきを生み出してみませんか。

■写真展&トークイベントのお知らせ
今回の訪問についての写真展とトークイベントが開催されます。

「フォトジャーナリスト 安田菜津紀が出会ったグアテマラの女の子たち」トークイベント&写真展

<写真展>
日時:2019年10月1日(火)~ 10月16日(水)12:00~19:00
場所:YELLOWKORNER SHOWROOM
(東京都港区六本木5-17-1 AXISビル3F ICS)
※入場無料 ※土日祝日は定休日

<トークイベント>
開催日時:2019年10月1日(火)19:00~20:15 (受付開始 18:30)
開催場所:YELLOWKORNER SHOWROOM(同上)
参加申し込み:https://plan-international.jp/girl/idg2019

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(文・写真:Natsuki Yasuda)

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