干場弓子社長インタビュー第2回

「媚び」と「可愛がられる」は別モノです。モヤモヤを“大先輩”にぶつけてみた

「媚び」と「可愛がられる」は別モノです。モヤモヤを“大先輩”にぶつけてみた

ある程度の経験を積み、仕事もやっと面白くなってくる20代後半から30代。責任がある仕事も任されるようになって「できること」は増えたけれど、だからこそ、これから自分はどうしていきたいのか、どう働いていけばいいのか、ふと考えたり、モヤモヤしてしまうことも。

そんな働き女子の不安やモヤモヤを“大先輩に”ぶつけてみたら何かヒントが見つかるかも……?
 
というわけで、今回お話を伺う“大先輩”は「ディスカヴァー・トゥエンティワン」の干場弓子社長。

同社は、「婚活」ブームのきっかけとなった『「婚活」時代』(2008年)やミリオンセラーとなった『超訳 ニーチェの言葉』など、話題の書籍を次々と世に送り出している出版社。取次店を通さずに書店と直取引をするという出版界の“常識”を覆すビジネスモデルを確立し、業績をグングンと伸ばしています。

第2回目のテーマは「おじさんに媚びるのは本当に得ではないのか?」問題です。

【1回目は…】干場弓子社長に聞く「30代女子に覚えておいてほしいこと」

「女子にモテない女性は出世できません」

——数ヶ月前に「おじさんに媚びても得はないよ」っていう記事を掲載したらすごく反響があったんです。働く女性の“処世術”と称して、おじさんへの媚びが良しとされている風潮もあるなあと思っていたので、記事の反響を見て、やっぱりみんなモヤモヤしているのねと思ったんです。

その一方で、まだまだ男性社会ですし「本当にそうだろうか?」という疑問も消えなかったんです。なので今回、干場社長に”ウラ取り”をしたくて。「本当に媚びなくても出世できますか?」って……。

干場弓子社長(以下、干場):なるほど(笑)。なんとなくお知りになりたいことはわかりました。

まあ、出世欲があるかどうかは別として、30代の女性がずっと働いていくつもりでいたら、それなりに裁量権を持ちたくなると思うんですね。それなりのポストに就けば「これがいい」と思った決断をして仕事をしていくことができるし、そのほうが仕事って面白いでしょ?

——はい。“出世”と聞くと、ちょっと身構えてしまうのですが、自分ができることの権限が広がるほうが仕事はしやすいし、面白くなると思います。

干場:そういう時にね、おじさんに媚びる女性って「女子」からは信頼されないんですよ。

——「女子」っていうのは上からも下からもってことですか?

干場:そう。先輩も後輩も同僚も。別に悪気がなくても女性ってひと目でわかるじゃない? 「あ、こいつ媚びてるな」って(笑)。

——わかりますね。意地悪しているつもりじゃないけれどわかっちゃう。余談ですが、女性にも媚びる女子いますよね。「先輩、大好きです〜」とか言わなくていいからちゃんと仕事しろよって思っちゃう。

干場:でしょ? 「女性活躍」って言ってこれからは女性が下にたくさんついてくるし、戦力になってくる。でも、オジサンに媚びる女性には、下がついてこない。人望がない。だから女性にモテない女性は出世できないですよ。

——なるほど。

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「媚び」と「可愛がられる」は別モノです

干場:あと、おじさんから「可愛がられる」のと「媚び」って別ですから。自分のことを振り返ってみれば、自分では媚びているつもりはなくても、社内外のおじさん達によくしてもらったなっていうのはあります。男性が若い女性に親切にしてあげたいっていう気持ちはいいんじゃないの? ありがたく受け取って。

——そうですね。私も振り返ってみると、ちょいちょい声をかけてくれたり、親切にしてくれたりするおじさん、いましたね。今でも覚えています。

干場:そうそう、媚びなくてもおじさんは優しくしてくれるので普通に好意はありがたく受け取っていいんじゃないのって思いますね。無理に突っぱねる必要もないですし。

一方で、いわゆる「媚びる」っていうのが癖になっちゃってる女性がいるのも確かですよね。特にバリバリの男社会の中で生き抜いてきている人に多いかな。「媚び」が染み付いちゃっている。そういう女性って私にも媚びてくる(笑)。一応社長やっているし、利用価値があるって思うんでしょうね。

まあ、それはさておき、積極的に媚びたり転がしたりしている女性って同性にはバレているので女性には信頼されないし、媚びているおじさんが定年とかでいなくなったらどうするの? って思いますけどね。自分が50歳になった時にそういうおじさんはいないわけだから。

「自分でお金を稼ぐ」意味とは…?

——そうですね。あまり得策ではないっていうのはわかりました。ただ、若い女子がおじさんにおいしいものをおごってもらったり、高いプレゼントを買ってもらったりするのをSNSとかで見ると「ちぇっ、いいなあ」という気持ちになってしまうんです。

干場:わかる! 羨ましいよね(笑)私もあまりそういうおいしい目に合ってこなかったので、羨ましいなってのはわかります。

——干場さんは社長だし、出版社っていう華やかな世界の人だからそういうことは日常茶飯事だと思っていました。

干場:昔ある人に「干場さんは知らないでしょうけれど、家計とは別にお小遣いを200万くらいポンってくれるような男性と結婚している人もいるんですよ。うらやましいでしょう?」って言われて、大げんかになったことがありました。

——詳しく聞きたいです!

干場:前もお話したように、私は、大学に進学するときから、一生働き続けたいと思っていて、当時としてはそれは少数派だったのですが、その最大の理由は、誰かの地位やお金を自分のアイデンティティにするような人生は送りたくないと思ったから。

それから、誰かに命令されるのもいや。自分で正しいと思ったことを、常に自分で決断して、責任をとれる状態で生きていきたかった。つまり、精神的自立。そのためには、経済的自立が必須なんです。

たとえば、誰かお金持ちの夫人になったとしても、離婚したら、その人が死んじゃったら終わりでしょう?

慰謝料目当て、遺産目当て、というのもあったんだ! ということはあとで知ったので(笑)。

それはともかく、何か一つの大きなところに依存すると、それがなくなったらおしまいだと思って、自由な決断ができなくなっちゃうんです。

——自由な決断……。

干場:そう、それって「ディスカヴァー」の直取引にもつながっている精神なんですよ。

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「正しい決断」のために必要なこと

——えっ、どういうことですか? 「ディスカヴァー」が「取次」を通さないで書店と直取引をしているというのは出版の世界では有名ですが……。

干場:そうそう、普通の出版社は新刊を取次がまとめているわけですが、それは要するに、取次依存するということでしょう? 大きなところに頼ったり、一つのところに依存したりっていうのは、「下請け」になるということなんです。

それはどういうことかというと、何か決断する時にロジカルじゃない理由、例えば相手に従わないといけないという理由で正しい決断や独立した決断ができなくなっちゃうということでもあるんです。

——弱みを握られている、みたいな? 確かに弱みを握られていたり、馴れ合いになったりしたら、それに引っ張られて「正しい判断」なんてできないかもしれない。

干場:そう、そんなの仕事でもプライベートでも嫌なんです。だからディスカヴァーは直取引だし、私も夫に頼らないで自分でお金を稼ぐ。それが、わたし自身がストレスなく働き続けられている理由の一つだとも思っています。

——なるほど。ディスカヴァーの直取引の理由にまで話が広がるとは思いませんでした。

干場:取材でよく「ストレスなく働く秘訣はなんだと思いますか?」って聞かれるんですけれど、何事も自分が決めているって思えば、後悔もないなと思っています。「自分で決めた」っていうのがあれば結果が悪くても納得できるんですよね。

ストレスってなぜ発生するかって言ったら「あの時こうしてれば、あの人がああ言ったから」っていう他責であり、後悔というが一番大きいとわたしは思っています。自分で決めれば、辛いことがあっても、ストレスにはならないんじゃないかなって思います。

※次回は10月12日公開です。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)

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