期待しないから一緒に暮らせる
下重:だから親の期待ほど子どもにとってしんどいものはないですよ。子どもの期待ほど親にとってしんどいものもない。夫が妻に期待するのも、その逆もね。
私とつれあいは互いに全く期待しません。それぞれ勝手に生きて、個人と個人が一緒に暮しているの。違いを尊重するから、向き合ったり、相手への理解を深めたりできる。想像力や思いやりが育まれるんです。その日々の中で、確固たる私という人間が作られていく。子どもを持つ/持たないで一人前になるかどうかなんて全然関係ない話ですよね。
(取材・文:安次富陽子 写真:青木勇太)
下重暁子(しもじゅう・あきこ)
作家。日本ペンクラブ副会長。日本旅行作家協会会長。早稲田大学教育学部国語国文科卒業。NHKに入局。アナウンサーとして活躍後フリーとなり、民放キャスターを経たのち、文筆活動に入る。ジャンルはエッセイ、評論、ノンフィクション、小説と多岐にわたる。公益財団法人JKA(旧:日本自転車振興会)会長等を歴任。著書に、60万部を超すベストセラーとなった『家族という病』(幻冬舎)をはじめ、『持たない暮らし』(KADOKAWA/中経出版)『母の恋文』(KADOKAWA)、『「父」という異性』(青萠堂)、『老いの戒め』『若者よ、猛省しなさい』(集英社)などがある。近著は『わたしが子どもをもたない理由』(かんき出版)。