「働く女性」と言うと、すぐに「輝け」だの「仕事と家事の両立ができる女性が素晴らしい」と言われることが多い昨今。
「働くキラキラ女子」がメディアで取り上げられるたびに「私はできていない」「仕事と家事の両立なんて無理!」と自己嫌悪に陥ったり、不安に思ったりする人も多いのではないでしょうか?
大手化粧品メーカー「エイボン・プロダクツ」のマーケティング本部で看板ブランド「ミッション」の商品開発を手がける関本由紀子さん(43)。31年目を迎える基幹スキンケアブランド「ミッション Y」の開発責任者で、プライベートでは8歳と5歳の2児の母です。
前々回、前回と「人の手を借りる子育て」や「30代で失敗したことや学んだこと」について聞いてきました。今回は、関本さんが実践している仕事術について聞きます。
「仕事は細切れ」がいい理由
——これまでのインタビューで「子どもを産んで仕事の仕方が変わった」とおっしゃっていましたが、どう変化したのでしょうか? 独身の働く女性にも参考になるのではと思います。
関本:例えば企画書は細切れに作ったほうがいいです。
——「企画書を細切れ」ってどういうことですか?
関本:企画書って、企画の背景や競合他社情報などいろいろな項目から成り立っていると思うんですが、少しずつでも進めておくと内容の濃い企画書ができあがるんです。つい一気にガーッとやっちゃいたいなって思うんですが、時間がないってなるとそうもいかなくなる。
「この時間は市場動向から開発背景まで」「次回は発売目的とターゲット」というように細切れにして、電車に乗っている間にもちょこちょこ考えながら2週間くらいかけて作るんです。そうするといいアイディアがフッと降りてくる。
たとえば、今回リニューアルに取り組んだ「ミッションY」のコンセプトも、最近巷で言われているレジリエンス(再起力)をヒントに、「折れない肌」というキーワードにたどり着きました。
ああでもない、こうでもないと行ったり来たりしながら考えているからこそ、降りてくる瞬間があるんです。
「時間でカバーする」という発想からの転換
——企画書は一気に作りたいと思っちゃうんですが、一旦寝かせないと浅いものになってしまうというのは心あたりがあります。
関本:そうなんですよね。子どもを産む前は、終電まで企画書を練ったり、時間を自分が好きなようにめいいっぱい使ったりできていたんですが、それも自由がきくからできてたことかなって。
子どもがいればお迎えに行かなきゃとか、夕食の世話をしなきゃとか自由がきかなくなる。母親という役割が出てきて責任を全うしようとなると時間の使い方が違ってきました。
——私も「私の時間は全部私のもの!」って思って終電まで仕事をしちゃってました。「働くシンデレラみたいだなー」って思いながら。
関本:そうそう、時間でカバーすればいいと思っているんですよね。やっぱり、企画業務とか「ゼロから1を生み出す」仕事、究極までアイディアを練り上げる仕事に就いている人は、時間が限られているという状態になったらものすごく辛いと思います。
ただ、もう自由がきかないってなったときに「2時間集中する時間を取るためにはどうすればいいか?」という発想に変わるんです。
あとは、夜は子どもたちと一緒に寝て、早朝4時から子供が起きでくるまでの、静かなまとまった時間に企画書などを仕上げるというのも集中できていいですね。
——「時間は無限にある」って思って時間でカバーしようとしないで、区切りを決めて取り掛かるというのがいいということですね。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)