『伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―』第1回

「店員さんにも神対応でお願いいたします」藤井貴彦アナのあの言葉が生まれるまで【伝わる仕組み】

「店員さんにも神対応でお願いいたします」藤井貴彦アナのあの言葉が生まれるまで【伝わる仕組み】

日本テレビの藤井貴彦(ふじい・たかひこ)アナウンサーによる新刊『伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―』(新潮社)が2月16日に発売されました。

藤井アナと言えば、夕方のニュース番組「news every.」(日本テレビ系、月~金曜午後3時50分)のメインキャスターを務め、新型コロナウイルス報道では視聴者に寄り添った呼びかけを続け、視聴者から「言葉が響く」「心に届く」と話題になりました。

新刊では、日常会話から会議、プレゼンといった社会人が経験するさまざまな話す機会を念頭に、どうすれば自分の真意が相手に伝わるのかを実用的につづっています。

新刊の発売を記念してウートピでは本書の一部を抜粋してお届けします。全4回。
※見出しはウートピ編集部が作成。

藤井貴彦アナウンサー=新潮社提供

藤井貴彦アナウンサー=新潮社提供

はじめに

私がこの本を書き終えたのは、東京パラリンピックが始まる頃でした。

どこかで耳にした「多様性を受け入れる」という言葉。
あなたを受け入れますと言われたら、あなたはどんな思いになるでしょうか。
さみしい思いをする人が、どこかにいるかもしれません。

では、
「認め合う」という表現ならどうか、
「理解する」という表現ならどうか。
こんな風にして相手の立場で言葉を選び出していくことがコミュニケーションにおいてはとても大切です。

ただ、あの「受け入れる」という言葉の選択は見事でした。
それが現状だったからです。
そこから一歩前に踏み出すべき時に、適切に使われた言葉でした。
実は言葉に違和感を残すことも、伝わる仕組みの一つです。

私は『伝える準備』という本で、言葉を発する心構えについて書きました。
この『伝わる仕組み』では、その先の実践について書いています。

言葉を持って外に出れば、私たちは必ず問題に直面します。
不用意な言葉で相手を傷つけ、そのことで自分も傷つく。
コミュニケーションでの悩みは尽きません。

なぜ思い通りに言葉が届かないのか、
どうしたら届けられるのか、
その仕組みがわかれば、アクシデントを大幅に減らせます。
大切なのは相手の立場を知ることです。
まさに、認め合う、理解することが大切なのです。

その一方で、自分自身を大切にすることも忘れてはいけません。
相手のことを思いやるあまり、ご自身が疲弊していないでしょうか。

本書ではコミュニケーションで起きる課題について、
その仕組みを紐解きながら、解決のヒントをお伝えしていきます。
少しだけ楽な気持ちで会話ができるようになるかもしれません。

さあ、まずは伝える姿勢から整えていきましょう。

01言葉を「試着」してみる

何かを伝える時に私が実践しているのは「言葉を試着する」ということです。もし、誰かからその言葉を言われたらどんな思いになるか、自分にあてがってみるのです。

例えば、「もう少し優しく接した方がいいんじゃない?」という一言があったとします。これを、自分が言われたとするとどうでしょう。自分のことを気の利かない、雑な人間だと言われているような気がします。こうなると、もう少し言葉の装いを変えた方がいいなと感じられるようになりますよね。こんな風にして言葉を試着してみるだけで、相手の立場で言葉を選べるようになるのです。

新型コロナウイルスの感染拡大で世の中に余裕がなくなっていた時、スーパーのレジを担当する人やタクシーの運転手さんなど、人との接触が多い仕事をする人たちが悲しい扱いを受けました。あの時、スーパーの店員さんだって感染を心配しながら仕事をしていたはずです。私は「もう少し、優しく接することができないだろうか」と感じていました。しかし、この言葉をそのままテレビで伝えてもあまり効果はないだろうとも感じていました。そこで言葉の試着と着せ替えを繰り返してたどり着いたのが、「神対応」という言葉でした。

「お客様は神様ですから、店員さんにも神対応でお願いいたします」

神対応という言葉は、アイドルがファンに対して、期待以上の対応をしてくれた時などに使うそうですね。この言葉のおかげでギスギスせずにお願いをすることができました。何より語感がとてもいい。

神対応という言葉にたどり着くまでに「謙虚な気持ちで」とか「身内だと思って」といったいくつかの言葉を思い浮かべましたが、いずれもベストフィットではありませんでした。インパクトがあって、誰も傷つけない言葉。そして「一言で」表現できる言葉はないかと着せ替えを続けました。こういうコメントは放送中に考えるため、本番まであまり時間がなくて焦っていましたが、フィットする言葉に出会えて本当によかったとスタジオで胸をなでおろしていたものです。

ただこれが、全ての方に狙い通りの意味で届くとは限りません。

実は「神のように上から目線で」というように誤解された方もわずかにいて、多くの人に同じメッセージを届ける難しさを痛感しました。

もちろん他人がどう感じるかまでは、正確に予測できません。しかし、その言葉は狙い通りメッセージを運んでくれるだろうかと再確認することで、後悔のない言動につながるのです。気持ちを伝えるために重要なのは、勇気ではなく「確認」であると、つくづく感じています。

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