タラタラ鼻水、苦しい鼻づまりケア/第1回

鼻水の適切なかみかた…止まらないときはどうする?【専門医に聞く】

鼻水の適切なかみかた…止まらないときはどうする?【専門医に聞く】

風邪なのか花粉症なのか、それとも寒暖差アレルギーなのか、ともかく鼻水がタラタラと出る、鼻が詰まってうっとうしいとき、なんとか自分でケアする方法はないものでしょうか。耳鼻咽喉科・気管食道科専門医で『免疫入門 最強の基礎知識』(集英社新書)の著書がある遠山祐司医師にお話しを聞きました。

遠山祐司先生

遠山祐司医師

鼻水にはウイルスや花粉をせき止める重要な役割が

——人前でも、鼻水がタラタラと出ることがあり、悩まされます。少しでも軽くすることはできないものでしょうか。

遠山医師:まず知っておいていただきたいのは、鼻水は体にとって重要な役割があり、なくてはならないものだということです。

鼻水には、空気中に含まれるホコリやチリ、ウイルスや細菌、花粉など、病気やアレルギーを引き起こす異物を体内に吸い込まないように排出する働きがあります。目にゴミが入ると涙が出て洗い流すのと同じように、病原菌や汚れを鼻より奥に入らないようにするシャワーのような存在なのです。鼻の洗浄液とも言えます。鼻水は生体の防御反応であるわけです。

——そういえば、ホコリが鼻に入ったら、くしゃみと鼻水が出てきます。体を守っているのですね。鼻水は水分でできているのでしょうか。

遠山医師:鼻水は鼻の粘膜をおおっている粘液の量が過剰になり流れ出てきたものです。

鼻水の粘度や色は体調を示すサイン

——その水分と粘液の混ざり具合は、ときと場合によって違いますね。鼻水は、サラサラでポトポトと落ちてくるときと、ネバネバした感じが強いときがあります。

遠山医師:鼻水の粘度や色は、そのときどきの体調、病気を表すサインになります。自然の反応なのか、ウイルスや細菌に感染しているのか、何かの病気で炎症や出血があるのかなどによって変わります。鼻水が出るとき、次のことに注目してください。

・サラサラして、透明……風邪のひきはじめ・花粉症などアレルギー性鼻炎・寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)に多い。花粉、ウイルスや細菌、気温差に対抗するために、水分を出して洗い流そうとします。

・鼻水以外に、のどが痛い、頭痛、筋肉痛、微熱などの症状があれば風邪、花粉の季節でくしゃみを伴う場合はアレルギー性鼻炎、朝晩など冷え込みが激しいときにくしゃみを伴うときは寒暖差アレルギーが考えられます。

・粘り気があって、白い……風邪が進んでいる。ウイルスや細菌の侵入をせき止めようとして、粘液も多く分泌されはじめる。

・粘り気があって、黄色い、におう……風邪のピーク・副鼻腔炎。さらに粘液が分泌される。

・粘り気があって、緑色、におう……風邪のピーク・副鼻腔炎・慢性副鼻腔炎(蓄膿症・ちくのうしょう)・まれに悪性の病気。緑色は、ウイルスや細菌と白血球が戦った死がいが含まれるため。

・赤い……血液が混じっている状態。鼻出血など。

——インフルエンザや新型コロナの場合は、鼻水はどうなのでしょうか。

遠山医師:インフルエンザでは、発熱や咳が出てから、または、発熱や咳とほぼ同時に鼻水が出てくる場合がありますが、その性状はサラサラした水っぽいものから始まることが多いです。新型コロナウイルス感染症(以下・新型コロナ)では、鼻水・鼻づまりの症状は多くありませんが、あったとしてもその鼻の症状だけで新型コロナとインフルエンザを見分けることは非常に困難です。

鼻水が止まらないときの対処法

——鼻水が止まらなくてつらいとき、どうすればいいでしょうか。

遠山医師:少し下を向いて、片方ずつそっと鼻を前に送り出すようにしてかんでください。一度で出し切ろうとしないで、小刻みに数回に分けてかみます。こうすると、かみ残しが少なくなり、鼻の奥や耳への不快感も軽減されます。

両方の鼻を同時に、チーンと勢いよくかむ人がいますが、鼻の粘膜や耳を傷める原因になります。中耳炎を引き起こす場合もあります。とくに、鼻をかむと耳がキーンとなりやすい人は避けてください。またこのかみ方では、かえって鼻水が鼻に残りやすくなります。

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鼻水がつらいときは、次の方法を試してください。ただし、鼻水は異物を排出するための反応なので、すぐには止まりません。寒い、冷気にあたるなどすると、自律神経の働きで鼻水が出るので、軽減のポイントは「温める」ことです。

・体全体を温める。
・屋内では加湿をして湿度を50~60%に保つ。
・蒸しタオルを鼻にあてる。
・カイロをタオルにくるんで、鼻にあてる(やけどに注意)。
・マスクを着用して、鼻腔や口腔を温め、加湿する。
・風呂の湯船につかる(風邪や病気で発熱時以外)。
・寒暖差アレルギーの場合は、ウォーキングや軽い筋トレ、ヨガ、ストレッチなどを行う。
・鼻水、鼻づまりのツボ「迎香」(げいこう。小鼻のすぐ横のくぼみ)や「鼻通」(びつう。迎香の数センチ上の小鼻の付け根のすぐ横のくぼみ)を、左右同時に指先で数秒押すことを3~5回くり返す。

——受診したほうがいいケースはありますか。

遠山医師:水っぽい鼻水が、止まらないと思うほど出てくる、また断続的でも1週間以上続く、粘度が強くて黄色や緑色の鼻水に変化した、風邪ではないのに断続的に鼻水や鼻づまりが続くなどの場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
また、耳鼻咽喉科では、風邪の場合でも、内科では処置しない鼻の洗浄や鼻水の吸引、さらに鼻やのどをファイバースコープで観察することが可能です。副鼻腔炎や中耳炎、扁桃腺炎にもすぐに対応できるので活用してください。

聞き手によるまとめ

うっとうしいとばかり思っていた鼻水は、実は体を守るために出ていること、そのときどきで特徴が変化するので不調のバロメーターになること、適切にかむ方法や軽減する対処法があるということです。認識を改めて、体全体や鼻を温め、加湿して対処したいものです。次回・第2回鼻づまりのケアに続きます。

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(構成・取材・文 藤井空/ユンブル)

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