『何でもないことで心が疲れる人のための本』インタビュー・第2回

私、無理しているかも…隠れ内向の人が“疲れ”に気付くポイントは?

私、無理しているかも…隠れ内向の人が“疲れ”に気付くポイントは?

「仲の良い友人でもずっと一緒にいるのはつらい」「自分の言動を振り返ってウワーっとなる」「組織になじむまでに時間がかかる」--。

人付き合いは苦手ではなく、むしろ積極的にいろんな人と付き合っているのに、小さなことで疲れるのは「隠れ内向」だからかも……。

そんな「隠れ内向」の悩みや対処法を解き明かし、うまく生かすためのヒントを示した『何でもないことで心が疲れる人のための本〜「隠れ内向」とつきあう心理学〜』(日本経済新聞出版)が10月に出版されました。

完全な内向型の人ほどにはマイペースになれず、他人に対して感じよく振る舞おうと気を使って周囲に溶け込もうと頑張るタイプの「隠れ内向」について、心理学博士で著者の榎本博明 (えのもと・ひろあき)さんにお話を伺いました。全4回。

私は外向型? 内向型? それとも隠れ内向?

外向型・内向型のチェックテスト

□1 何かする際には、自分はほんとうにやりたいのかをよく考えてみる方だ
□2 自分らしさへのこだわりが強い
□3 安易に人に同調したくないという思いがある
□4 過去の出来事を振り返ることが多い
□5 何かを決める際に、あれこれ考えて即断できない
□6 クラス替えや入学・入社のときなど、新たな環境に馴染むのに時間がかかる
□7 引っ込み思案で、友だちでもない相手に自分から話しかけることは少ない
□8 人見知りをする
□9 周りの人たちの様子を用心深く観察するところがある
□10 よく知らない場に出かけたり、新たなことをしたりするのは抵抗がある
□11 新しい友だちができにくい
□12 交友範囲は狭いが、深いつきあいをする方だ
□13 パーティ・懇親会のような大勢が集まる社交の場は苦手だ
□14 とくに親しい人たちといるときだけ自由に振る舞える

□15 何かする際には、みんなの意向やその場の雰囲気で決める方だ
□16 その場その場にふさわしい態度や行動をわりとスムーズに取れる方だ
□17 わりと自然に人に合わせることができる
□18 ひとりになって自分と向き合うということはあまりない
□19 決断は早い方だ
□20 クラス替えとか入学・入社のときなど、新たな環境にすぐに溶け込める
□21 自分から積極的に人に声をかけ、かかわろうとする方だ
□22 他人からみて親しみやすい方だと思う
□23 よく考えずに軽はずみな行動を取りやすいところがある
□24 未知の状況にも躊躇せずに積極的に飛び込んでいく方だ
□25 だれとでもすぐに親しくなれる方だ
□26 社交的で交友範囲が広いため、どうしても浅いつきあいが多くなりがちだ
□27 パーティ・懇親会のような社交の場を気軽に楽しめる
□28 よく知らない人たちの中でも緊張せずに自由に振る舞える

——前回のお話を聞いて「自分は内向型なのか? それとも隠れ内向?」と思った人もいると思います。本にもチェックリストが載っていました。私の場合、前半は8個、後半は7個当てはまりました。

榎本博明さん(以下、榎本):項目1〜14は内向型の人が◯をつけることが多い性質を表し、項目15〜28は外向型の人が◯をつけることが多い性質を表しています。

日本人は前半に当てはまる人が多いと思います。ただ、前半の14項目が多く当てはまり、後半も結構当てはまる項目がある人は、外向的に振る舞っているけれど元々は内向型である可能性があると言えます。

つまり、隠れ内向の可能性が高い。典型的な内向型、外向型だったら、どちらかに偏ります。今は外向型の時代なので、後半の項目に当てはまるものが多いと思いますが、よく自分の内面を振り返ってみて前半の項目にも結構当てはまるものがみられる場合は隠れ内向かもしれません。

自分では意識しないうちに抑圧していて、前半が後半よりも少なくなっている可能性もあります。その場合は、例えば、「そう言えば、新しいクラスになじむまで気を使ったな」とか、子供の頃を思い出すと内向型の自分に気が付いたりするはずです。

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日本人は人の間を生きている

——内向型の性質は、遺伝的な要素も含まれますか?

榎本:内向型であるか外向型であるかに遺伝要因が強く関与していることは、行動遺伝学的研究によっても実証されています。

——では、内向型の人は無理して外向型になるのではなく、自分に元々備わっている性質を生かしたほうがいいということでしょうか?

榎本:そうですね。ただ、内向型が損するのは確かなんですよ。だから、隠れ内向になったほうがいいかもしれませんね。内向型そのままだと、社会的に不適応になって生きづらさを感じることも多いかもしれません。今は外向型の人が生きやすい社会なので、「隠れ内向になれ」と言うのは変な話なのですが、できそうであれば少し頑張ってみるのも良いのかもしれないですね。

——確かに自分を振り返ってみても、少し外向的になったほうが物事がうまくいくことが多い気がします。

榎本:前回もお話しした通り、日本は欧米と違って「人間関係の中で生きる」という文化です。哲学者の和辻哲郎さんは、「人間」という「人の間」を意味する言葉が「人」の意味で用いられるところに日本人の特徴を見い出していますが、日本人は個ではなく人の間を生きている。僕も、今まで関わった人が自分の中で生きていて、それで自分は成り立っていると感じています。

こうやってお話していても、自分が言いたいことをただ伝えるのではなく、目の前にいる人との対話の中で、相手が何を求めているか、どう感じているかを感じ取りながら、自分の出し方を決めている。それが日本的な対人関係だし、自己のあり方ですね。

一方で、欧米人は、自分が言いたいことを相手にバンッとぶつけて、相手が違うことを言っても動じない。お互いにぶつけ合って調整していくんです。そもそも、自己のあり方が違います。

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無理をしながら頑張ってしまう「過剰適応」

——「自分は無理をしてるかも…」ということに気付く方法はありますか?

榎本:意識してないことに気付くのは難しいことなのですが、やる気が出なかったり、疲れてしまったり、ちょっと後ろ向きな気持ちになったりするときはどういうときか? と意識してみるといいかもしれません。楽しくみんなでワイワイやっていたのに、一人になったらちょっとホッとしたとか、仲が良い友人が泊まりに来て徹夜で楽しく盛り上がってしゃべってたけど、友人が帰ったらホッとしたとか……。そんなときに、「人といるのが好きだと思っていたけど、ちょっと疲れるかも」「自分は相当、無理をしていたのかもしれない」というような感じで振り返ってみると隠れ内向を発見するきっかけにはなると思います。

——内向型の人がちょっと頑張って周囲とうまくいけばいいですが、やりすぎると疲れてしまいます。そういえば昔、上司から「君は過剰適応的なところがあるから気をつけたほうがいいよ」とアドバイスをもらったことがあるのですが、過剰適応とはどんな状態を指すのでしょうか?

榎本:外向的に振る舞い過ぎて、無理をし過ぎるのが過剰適応です。人に合わせすぎて、無理してしまうんです。例えば、協調的とか受容的とか、愛想がいいこと自体は良いことなんだけれど、それが行き過ぎちゃうと、自分を抑えすぎることになってしまう。適応は良いことだけれど、それが過剰ということですね。隠れ内向と一緒で、本来の自分とは違う自分を出して無理しているわけですが、何かで行き詰まらないと気が付かないんです。

——他人の期待に応え過ぎちゃうことも過剰適応ですか?

榎本:はい、そう考えていいと思います。でも、それはけっして悪いことではない。人に合わせて期待に応えようという思いは、日本人はとても強いんです。確かに期待に応えすぎるのも考えものですが、自分本来の力以上のものを発揮できるという良い面もあるんですよ。日本的なモチベーションとしては、「人の期待に応えたい」というモチベーションがすごく強い。一方で、欧米的なモチベーションは、「自分が活躍したい」「有能になりたい」といった自分中心のモチベーションなんです。

例えば、日本のスポーツ選手は、「お世話になった人のため」「監督のため」「コーチのため」と言いますよね? 会社でも、「お世話になってる上司や先輩に迷惑をかけたくない」とか、「あの人のために頑張りたい」とか。日本人は、「人のため」という気持ちがすごく強いんです。それは良いことなんだけど、行き過ぎちゃうと過剰適応になって、疲れてしまうのでそこは気を付けたほうがいいと思います。

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(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

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