熱中症は自宅で起きている…内科医が答える傾向と対策

熱中症は自宅で起きている…内科医が答える傾向と対策

熱中症と言えば、夏の暑い日に屋外でのスポーツ時や仕事の作業時に発症するというイメージがあります。しかし実は、救急車の要請があった数では、発生場所として「住居(敷地内含む)」の割合が例年約40~50%にのぼり、道路や交通施設、公園、会社などに比べてもっとも多いと報告されています。

内科医で泉岡(いずおか)医院(大阪市都島区)の泉岡利於(としお)院長は、「救急車による搬送の数だけではなく、医療の現場では近ごろ、『自宅熱中症』と呼ばれるほど、患者さんの数は高まっています」と話します。そこでその原因や注意、予防のポイントについて、詳しく尋ねてみました。

高層階、角部屋、朝食前の掃除で救急車に

泉岡医師ははじめに、「熱中症の症状は意外にも、自宅にいるときに急に襲ってくることがあります」と話します。ひとり暮らしで重症になったら……想像すると恐ろしいですが、筆者が取材した知人の「自宅熱中症」の体験談を2例、ご紹介しながら、泉岡医師にアドバイスをしてもらいましょう。

Aさん 28歳 会社員の体験談
休日に部屋の掃除をしていて、蒸し暑いなあと思っていたら、突然に頭をがつんとぶつけたような痛みがあり(ぶつけていない)、視界が狭くなって、吐きました。なぜか寒気がしてがくがくと震えるほどでした。これは危ないと思い、自分で救急車を呼びました。部屋はマンションの12階の角で、風は通るので窓を開け、冷房はつけていませんでした。運動の代わりにと考えて朝食前に掃除を始めたので、起きてから水も食事もとっていませんでした。

泉岡医師のアドバイス
高層階の部屋の場合、涼しいと思い込んでいる人は多いのですが、窓を開けると風通しはよくても、夏は熱風が湿気とともに屋内に吹き込んできます。角部屋はとくに、外壁や窓の温度がかなり上昇して蓄熱され、朝晩でも室内の気温と湿度を上げるように影響します。2階建ての家の場合では、2階より1階で寝るほうが安全です。

また、朝から水も食事もとらずに掃除をするというのはとても危険です。誰しも就寝中には、自覚がなくてもコップ1杯分程度の汗をかいていて、起床時には軽い脱水になっていることがよくあります。脱水は熱中症の始まりであり、原因になります。就寝前と起床後は最低でもコップ1杯のスポーツドリンクや水を飲み、外出前はもちろん、掃除や運動をする場合は必ず朝食をとってからにしましょう。

キッチンで長時間の調理、プレ更年期

Bさん 34歳 女性 公務員
休日の夕方に料理を時間をかけてつくっていたところ、体が重いなぁと思うと同時に目の前がチカチカして、めまいが激しく、「まさか、熱中症?」と思いつつ、冷蔵庫のスポーツドリンクを飲んでキッチンに倒れ込みました。鍋がグツグツと音を立てだしたのでなんとか気力でガスを消してから、這(は)って扇風機までたどりついて横になりました。

しばらくして立てるようになったので近くの病院に行き、点滴を受けました。冷房はつけていましたが、キッチンの位置が奥まっているので涼しくはなかったです。梅雨ごろから体調が良くなくて、「プレ更年期かも」と思うような疲労感、頭痛、めまい、イライラが続いていました。

泉岡医師のアドバイス

自宅内で気温が上昇しやすいのは、キッチン、洗面所、風呂、トイレです。どこも冷房が届きにくいうえに、湿気がこもっています。キッチンは火を使うので、調理に夢中になっている間に体温が上昇することがあります。

また、洗面所は盲点で、風通しが悪く湿度が高い場所です。冷房をつけたうえで、扇風機で冷気を送りながら過ごしてください。

風呂やトイレは必ず換気扇をつけて入りましょう。トイレはできるだけミニ扇風機を置いて使う、また、未使用時は扉を開けて冷房が届くようにしておき、空間が高温多湿にならないようにしましょう。

また、体調がよくないとき、更年期前後の女性は自律神経のバランスが乱れやすく、発汗と体温、心拍などのコントロールがしづらくなっています。その場合、体内で水分が不足する「脱水」が起こりやすいため、高温で多湿な環境での作業はひかえ、日ごろからスポーツドリンクをこまめに飲んで脱水を予防しましょう。

室温と湿度を快適にキープし、経口補水液や保冷剤を備える

泉岡医師は猛暑時の自宅での過ごし方について、こうアドバイスを加えます。

「住居で熱中症を起こす原因の多くは、室内の気温と湿度の上昇です。室温と湿度が高いと体温調節がうまくいかず、脱水を起こしやすくなります。夏は例えば、オフィスやスーパー、レストランなど外出先で冷房が効いていなければ、仕事や買い物、飲食はとてもできないと思うでしょう。

しかし、自宅の場合は、慣れと節約、冷えが気になるために冷房をつけない、あるいは控えめにすることがあると思われます。これが自宅での熱中症予防において、してはいけない最大のポイントです。

自宅熱中症になった女性の患者さんの証言で、「冷えるのが嫌で冷房を使わなかった」という人は多いのですが、日本の住居、とくにマンションでは湿度がこもりやすい特徴があります。冷房の設定温度を高めにして湿度を抑える、ドライ機能をうまく使うなど工夫して、湿度の管理に注視してください。

自宅にいるときは時間を問わず、就寝時でも、気温は27度・湿度は70%を超えたら冷房と扇風機を活用して快適性をキープして過ごしましょう。

また、熱中症対策として、冷蔵庫に経口補水液とスポーツドリンクを、冷凍室に保冷剤を備えておきましょう。症状が出る前にスポーツドリンクを飲んでおくことがポイントですが、めまい、頭痛、イライラなど不快な症状を自覚したときは、飲める場合はドリンクをすぐに飲んで、涼しい場所で保冷剤を首、脇、足のつけ根の脈打つ場所に乗せて体を冷やしましょう。

ただし、ドリンクが飲めないほど苦しい、頭痛が激しい、視野が狭くなる、吐き気がひどい、寒気がする、意識が遠のくなどの場合は、ひとり暮らしでは危険です。早めに救急車を呼んでください」

「自宅熱中症」では、高層階、角部屋、キッチン、洗面所、風呂、トイレ、また朝食抜き、体調不良のとき、更年期、就寝中にも注意が必要とのことです。夏は常に冷房と扇風機を活用して気温と湿度を管理し、ドリンクと保冷剤を備蓄して予防を心がけたいものです。

(構成・文 品川 緑 / ユンブル)

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