ギンズバーグ夫妻に見る「尊重し合う」カップルのかたち
マーティン・ギンズバーグには、生真面目で控えめなルースにはない社交性や弁論の上手さなど、妻の弱点を補う才能や強みがあった。また、本人もそれを自覚し、自信を持っていた。ルースもそんな夫の長所を敬い、時には頼り、互いに尊重し合う関係を築いていたことが『RBG〜』に収録されたインタビュー映像から分かる。
他者と自分を見比べたとき、自分が上だと思いたいのは、女も男も同じこと。仕事仲間でも夫婦でも例外ではない。
女性の足を引っ張るな、そしてぶつかってくるな
最近、駅などの人混みで無闇に女性にぶつかってくる「ぶつかりおじさん」が問題になっている。筆者も小柄で大人しそうに見られがちなせいか、しょっちゅうぶつかられ、ほろ酔いのサラリーマンにからまれることもしばしば。当然、彼らの目には女性に当たって満足げな色はなく、むしろ不満や怒りに満ちている。
『ビリーブ〜』でルースに冷たい言葉を浴びせた大学の学部長のように、自分がいるはずだった場所が「新しい価値観」や「想定外の他者」によって揺らぐとき、人は新しいものや弱いものに対して攻撃的になるのかもしれない。
トランプ政権になり保守派が勢力を強めた連邦最高裁判所において、リベラル派の象徴的存在として法の下の平等を貫き、毅然とNOを主張するルース。彼女が改めて尊敬を集めている理由は、高齢になっても女性やマイノリティのために働く彼女自身の生き方にあるのはもちろんだが、彼女が法の世界で働き始めてから半世紀経った今もなお、男女差別が解決されずに残っている現実がある。
ルース&マーティン夫婦が「理想」でも「稀有な存在」でもなくなる日がくるには、もう少し時間がいりそうだ。
■映画情報
『RBG 最強の85才』5月10日(金)より公開
配給:ファインフィルムズ
(C)Cable News Network. All rights reserved.
『ビリーブ未来への大逆転』公開中
配給:ギャガ
(C)2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC.