目の前がチカチカ、足が動かない…女性の熱中症体験談【臨床内科専門医がアドバイス】

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目の前がチカチカ、足が動かない…女性の熱中症体験談【臨床内科専門医がアドバイス】

「酷暑」、「炎暑」という言葉が定着するこのごろ、周囲に熱中症を起こす人が増えてきました。中でも、一般にはなりにくいと思われがちな30歳前後の女性の体験について、臨床内科専門医で女性外来がある正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長に、どの時点でどうすれば防げたのか、ケアのポイントなどを聞いてみましょう。連載で3つの例をお届けします。

テニス中にボールが見えず、足が動かなくなった


<31歳女性・デスクワークが中心の会社員Aさんの体験談>

平日はオフィスでほぼ終日パソコン作業のため、週末は日ごろの運動不足の解消にと、趣味でテニスをしています。その日は土曜日、7月初旬で午後は33度ぐらいで例年に比べると暑い日でしたが、夕方16時ぐらいからコートに出て、友人と打ち合っていました。

20分ほどしたころ、一瞬、ボールが見えなくなったと思って目をしばしばすることがありました。しかしすぐに見えるようになったので、プレーを続けました。それから10分ぐらいしたころでしょうか。また「ボールが見えにくい?」と感じたと同時に、星が飛んでいるかのように目の前がチカチカし、「えっ、なに?」と思っていると、急に足が動かなくなりました。ずしんと重く、前に足が出せないのです。その場で座り込みました。手もしびれているように感じました。

異変に気付いた友人が走ってきて、声をかけてくれているのはわかるのですが、何が起こっているかわからないショックもあって、ぼう然としていたと思います。別の友人がバケツに水を入れてきて、頭に少しずつと、手と足にはザバッとかけてくれました。

頭がガンガンと痛かったのですが、目を開けて友人の問いかけには応えることできたので、友人がおんぶをして冷房がきいた屋内に移動させてくれました。その後、スポーツドリンクを飲んで、しばらく寝ていたら、手と足のしびれはおさまってきました。

ただ頭は痛いので、近くの救急外来がある総合病院に連れて行ってもらうと、ドクターには「熱中症ですね」と診断され、すぐに点滴を受けました。そこで2時間ぐらい寝て、自宅へ帰りました。

当日、湿度は高くないのと、いつもはもっと暑い日でもハードな試合もしていること、水をこまめに飲んでいたので、熱中症の心配はしていませんでした。ですが、熱中症があれほど急に、いろいろな症状が出て自分ひとりで対処ができないようになるとは、想像もしていませんでした。

睡眠と食事ですか? 前日の金曜に同僚との飲み会があって、帰宅したのは遅い時間でしたが、翌日は休みだったので、睡眠時間は短いわけではありませんでした。体型はやせ型で冷え性なので、就寝中の冷房はタイマーで1時間で切っています。朝食は、食欲がなかったので、ヨーグルトとコーヒーだけにして、ランチは紅茶とサンドイッチを食べました。

いつものスポーツでも、異変があればすぐに中止を


<正木医師のアドバイス>

・足が動かなくなったのは、熱中症の初期症状の「熱けいれん」でしょう。全身ではなく、手や足の一部に起こりやすくなります。ぴくぴくする、しびれる、つる(こむら返り)などがありますが、体温の上昇をまだ感じない、意識ははっきりしていることが多いのです。

・最初に「ボールが見えにくい?」と思ったときに、その日はプレーをやめるべきでした。いつもは普通にこなせている環境だったとしても、体調は毎日変わるので、なんのあてにもなりません。暑い中での運動では、少しでも異変を感じたら、『熱中症のサインかも!』と察して、すぐに中断して安静にしてください。グループでのスポーツだと、しんどいと言いにくいかもしれませんが、無理に運動を続けると悪化するだけです。

・運動の強度が強いほど、熱の発生が多くなり、熱中症を発症する確率が高くなります。水をこまめに飲んでいたとのことですが、運動では発汗によって大量に汗が出ていたはずです。塩分も同時に摂取しなければなりません。必ず、ウメボシや熱中症対策用のタブレット、飴、経口補水液などを活用してください。

・前日に飲み会があったとのこと、お酒を飲んだ夜は、量にもよりますが熟睡できないことが多いのです。タイマーを1時間で切ったのなら、その後に汗をかいて無意識に眠りが浅かった可能性は高いはずです。熱帯夜の場合は、薄手の布団をかけて冷房をつけておくほうが快適に眠れるでしょう。また、翌日の暑い日に屋外での運動は避けてください。夕方でも熱がこもっていて暑さや湿度に変わりはありません。

・平日はデスクワークゆえの運動不足で、週末だけテニスなどの激しい運動をすると、自律神経に負荷がかかって疲れを増幅することがあります。日ごろから、涼しい時間帯にウォーキングや、屋内でストレッチやヨガ、筋トレなど、軽い運動を習慣にしておきましょう。

・テニスという激しいスポーツをするには、その朝食と昼食を合わせてもカロリー不足の例でしょう。朝食は必ずとりましょう。朝食を抜く、あるいは少ないと、一日の活動に必要なエネルギーが不足します。

・日ごろ汗をかかない、冷え性のタイプの女性は、「自分は熱中症になる体質ではない」と思っていることが多いのですが、思い込みと言えるでしょう。熱中症は、体質よりも、体調と環境によって引き起こされることが多いのです。それを認識して日ごろから注意をしましょう。

さらに正木医師は、この事例以外でも、若い女性の体力不足の原因としてありがちなことについて、次のアドバイスを加えます。

「ダイエットを理由にあまり食事をとらない、水分も控えている人は多くみられます。夏は基礎代謝がダウンするので太りやすいこともありますが、体力不足、水分不足は熱中症をまねきます。日ごろから栄養バランスがとれた食事、また質と量とも充実した睡眠をとることが熱中症や夏バテへの備えになります」

熱中症は原因も症状も人によってさまざまであり、思い込みや勘違いによる行動で不意を突かれたように発症することがあるようです。それだけに、「あのときこう気を付けていたら防げたかも」と思うこともたくさんあるでしょう。Aさんの体験談を反面教師として、日常生活を見直しておきたいものです。

次回、「めまいに激しい頭痛とおう吐 女性の熱中症体験談その2」に続きます。

(取材・文 品川 緑 / ユンブル)

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