一流大学卒業という学歴や、プロとしてやりがいのある仕事を手に入れた女性を、一般に「ハイスペ女子」と呼びますが、そのありかたは近年、変化しつつあるという話をウートピでも取り上げました。
今回は全3回にわたり、産業医で『ハイスペック女子の憂鬱』(洋泉社)の著者である矢島新子(やじま・しんこ)さんに、ハイスペ女子の恋愛事情について聞いてみました。
第3回目のテーマは、「ハイスペ女子のデート事情」です。
第1回:「教養がある人」という条件は外せない ハイスペ女子の恋愛事情
第2回:「恋愛は結果にコミット!」ハイスペ女子の恋は切り替え上手
「気持ちだけ出して…」がイヤ
——矢島先生、今回は「ハイスペ女子のデート事情」について伺いたいです。ハイスペ女子のみなさんはどんなデートをしているんでしょうか? 仕事が忙しいから時間が取れない、でも経済力はしっかりある。そういう女性のデートのリアルをいろいろと知りたくて。
矢島新子先生(以下、矢島):これまでお話ししてきたように、「ハイスペ女子=恋愛に不器用」というイメージとは裏腹にみなさん、恋愛にはかなり積極的というか、全力投球だったりしますからね。デートもよくするようですよ。同じ会社や仲間うちでの付き合いも多いようで、「こんなに忙しいのに毎週会っているの?」と驚くこともあります。
——そうなんですね! ちなみに、ハイスペ女子は収入がかなりある女性たちですが、デートの費用はどうしているんですか? やっぱりワリカンが多いんですか?
矢島:ハイスペ女子の話を聞いているとおごられてもいいし、ワリカンでもいいんですが、「細かいのはイヤ」という感じでしょうか。例えば、デートで、1人2万円のフレンチで食事をしたら、最後に男性から2000円だけ請求されたというハイスペ女子がいたんです。男性側も相手の女性が稼いでいることを知っているから、全部自分がおごるよりは少しでも出してもらったほうが気が楽だろうと気遣ってのことみたいですが(笑)。
——経済力があるからこそ、2万円のうちの「2000円」というビミョーな気遣いをされてしまったんですね(笑)。相手の方は「気持ちだけもらっとくよ」というつもりだったのかもしれませんが……。確かに、これなら完全におごられたほうが気持ちいい。
矢島:ですよね(笑)。「請求しないか、折半にしてよ」って思いますよね。「器がちっちゃく感じちゃう!」と女性の側は不満げでした。あとは端数まできっちりワリカンもイヤという声はよく聞きますね。自分に経済力があるがゆえに、デートにおけるそういう細々としたお金のやりとりをストレスに感じるハイスペ女子は多いかもしれません。
——ちなみに、ハイスペ女子がおごるというシーンはないんでしょうか?
矢島:それは案外少なそうです。付き合いが長いとか結婚していれば、たとえ女性であっても稼いでいる方が出すことが多いようですが、知り合って間もないデートの段階でおごる女子は少ないようです。もちろん相手が超年下だと収入格差は明らかですから、女性がおごってあげているという話はよく聞きます。その際も、あまり高いところに敢えて行かないようにして彼が卑屈にならないようにするという配慮と、ヒモ化防止をするということも聞いたことがあります。
「男性に出してもらいたい」の真意
矢島:でも、この「デート費用問題」は、同じハイスペ女子でも年代によっても傾向がかなり違うんですよ。40代以上のハイスペ女子はわりと「おごられ派」なんです。でも、30代になると食事代もホテル代も「ワリカン派」が増えてきます。ただ、外資系のハイスペ女子に限ると、海外のエリート男性はおごる人が多いため、年代を問わず「おごられ派」が多数派になってきますね。
——デート費用に関しては女性から、「女性の側がいくら稼いでいようと、男性に出して欲しいな」なんて意見もよく聞きます。
矢島:その気持ちは、ハイスペ女子も同じですよ。特に相手が稼いでいる男性なら。
結局、お金の問題じゃなくて、「男の器」なんですよね(笑)。ハイスペ女子の父親は、世代的にも「男気」あふれた人たちが多いんです。社会的地位もそこそこあって、経済力もあって、「男が養う」という価値観の中で生きてきた。その父親のもと、いろんなものを与えられて育ってきたハイスペ女子には「男性に出してもらいたい(=男気を見せてほしい)」という潜在的欲求があるんだと思いますね。
——男気を見せてほしい。別に今って、そういう時代じゃないのは頭でよくわかってますけど、潜在意識では求めちゃうかも(笑)。
矢島:あんまりお金の話を持ち出すと汚いと思われそうだから、ハイスペ女子は面と向かっては言わないと思いますが、「男性に出してもらいたい(=男気を見せてほしい)」という気持ちは大きいと思いますね。だから、余裕で自分で払える店でも、相手が払えないレベルであれば一緒には行かないとか。
——あくまで相手が出せる価格帯の店に行く、と。
矢島:そもそも経済力のない男性はイヤというハイスペ女子も多いんですが(笑)。面白いのが、結婚前は「相手に出してもらいたい」と考えているハイスペ女子も、結婚後はそうでもなくなるんです。特に一昔前にいたような「自分のものは自分のもの、夫のものも自分のもの」という女性は少ないですね。
——つまり、デート費用を男性が出すかどうかは、結婚相手を選ぶための一つのハードルに過ぎなくて、結婚後、経済的に支えてもらうつもりはないんですね。
気になるプレゼント問題は?
——先生、そろそろクリスマスですが、ハイスペ女子のプレゼント事情はどうなっているんですか?
矢島:ハイスペ女子は、そんなにいいプレゼントをもらってませんよ(笑)。海外高級ブランドのバッグや時計をプレゼントされるのは、収入がそれほど高くない女性。相手の男性も、そういう女性のほうが「プレゼントしてあげたい」という欲望がかき立てられるのではないでしょうか。
——ハイスペ女子は、そもそもおねだりが下手そうなイメージです。
矢島:そうそう、ハイスペ女子はおねだりが下手なんです。あと、自分で普段から高いものをバンバン買っちゃうので、それを側で見ている男性は「プレゼントしたい欲」を削がれていくんですね。下手なものはあげられないな、何をプレゼントしていいかわからないな……と。
——それで、無難なものをプレゼントされたりするわけか……。
矢島:されればまだいいですがそんな感じです(笑)。だから余計に欲しいものは自分で買う!ってなるのかもしれませんね。私も基本そうですよ(笑)。自分の誕生日プレゼントは自分でどーんと買う話をよく聞きます。そんなハイスペ女子の話を聞くと発破をかけてその分もっとハイスペックになって!と応援します(笑)
「別れる」という決断は比較的カンタン
——ハイスペ女子のデート事情がいろいろ見えてきました。自分もしっかり稼いで経済力があるがゆえの費用問題。そこから透けて見えるハイスペ女子の意外な願望もよくわかりました。
矢島:経済力に関していうと、自分が稼いでいるからこそ、ハイスペ女子は離婚率が高いという事実もあるんです。「お金がないから別れられない」はハイスペ女子に関してはないですから。子どもの問題はありますが、それがなければ、自分が別れたい時に別れられる。例えば、結婚後、夫が突然仕事を辞めて好きなことをやり始めた時とか。自分はキャリアも波に乗って人生、楽しい!っていう時に、自分の夫が暇そうにパチンコしてる姿を見るのはイヤ!と言って離婚したハイスペ女子もいましたよ。
——「別れる」という決断がしやすいんですね。
矢島:それに、男性側もハイスペ女子とは「離婚できる」と思ってるんです。妻にひとりで生きていけるだけの経済力があるから。妻が専業主婦だから、別れたくても別れられない夫が世にたくさんいますが、ハイスペ女子の夫はそうじゃない。例えば、子どもを大学に入れたら、離婚してお互いに自由に生きていこう、と決めているというカップルもかなりいますよ。
——「離婚率が高い」というと一見ネガティブに聞こえますが、そうじゃないんですね。むしろ、「別れたい」と感じたタイミングで別れられる、と。
3回シリーズでお送りした「ハイスペ女子の恋愛事情」、いかがでしたか? 「恋愛に不器用そう」「婚活市場で不利そう」など、何かと先入観を持たれがちなハイスペ女子ですが、矢島先生のお話から見えてきたそのリアルはちょっと意外なものでした。