「経験はだいたい積んだし、そろそろ転職しようかな」と考え始める20代後半から30代前半にかけて。社会人としての経験も十分にあるし、面接でアピールできる実績もあるから、そんなに苦労せずに次も見つかるだろうと考えてしまいますが、実際のところはどうなのでしょう?
今回、ウートピ編集部では、ウートピユーザーのペルソナ「30代、女性、年収450万」という条件で、転職マーケットにおいてどのくらいニーズがあるのか、希望どおりの転職を叶えるためにはどんな戦略が必要なのかをキャリアコンサルタントから人事担当者までヒアリングして調べてみることにしました。
シリーズ最終回となる第3回は、転職市場において30代女性が陥りがちなワナについてまとめました。
第1回:30代女性の転職、やりがいと年収は両立できない?
第2回:採用担当者が求めるスキルと経験
ワナ1:働きかたをトーンダウンしたい
30代で転職を考えている女性に多いのが「働きかたをトーンダウンしたい」という要望。20代で終電までバリバリ働いて疲れてしまったり、体調を崩してしまったりして、そろそろワークライフバランスを考えたい。結婚や出産もしたいから、プライベートの時間を確保しておきたい。そんな理由から、長時間労働ではない転職先を探している女性は少なくありません。
30代女性の間ではかなりメジャーなこの動機も採用側にとっては、マイナスに映りがちなので注意が必要です。第1回、第2回でも登場したキャリアコンサルタントTさんによると、
「よく採用面接で“そろそろ働きかたをトーンダウン”したくてと話してしまう女性がいますが、採用側としては正直“のんびりしたい”と言ってる人は欲しくありませんよね……。大前提として『トーンダウンしたい』と採用面接では言わないこと。『やる気、あるの?』と受け取られかねません。それに、そもそもトーンダウンしたいという理由だけで転職するとたいてい失敗します(キャリアコンサルタントTさん)」
また、リクルートワークス研究所の人材研究センター長・石原直子(いしはら・なおこ)さんも
「わざわざ面接でそこまでの本音を披露する必要はありません。心の中で『この会社なら100%の力を出さなくても80%くらいで評価してもらえそう』と考えるのはいいけれど、それを面接で匂わせない。一生懸命働きます、と伝えるべきです(リクルートワークス石原さん)」
とのこと。「そろそろトーンダウンしたい」その気持ちはわかりますが、転職の際はくれぐれも態度に出ないよう注意した方がよさそうです。
ワナ2:そろそろ産みたい
年齢的リミットを考えると、30代でそろそろ「産みどき」を意識する人も増えてきます。出産や育児のことも考慮して、産休・育休や時短勤務の他、いろいろな面で福利厚生が充実している企業を転職先として探す女性も少なくないよう。ただ、この点に関してもキャリアコンサルタントや採用担当者からはシビアな声が。
「30代の女性を採用していて多いなと感じるのは、環境を主張してくるタイプですね。産前産後のサポートが充実しているとか、ママ社員向けに時短勤務やリモートワークといったワークスタイルが許されているとか、そういう環境に惹かれて御社を希望しますと言う人がいますが、それはちょっと違うかな、と。そういう環境は成果を残した社員のためのものです(人事担当Sさん)」
一部上場企業で人事を担当するSさんの他にも、こんなコメントをいただきました。
「結婚や出産に関しては面接では直接聞けないので、人事担当者は『今後のキャリアプランは?』というような形で聞いてきます。『結婚する予定です』くらいはいいけれど、『今、妊活中です』とか『近いうちに産みたいです』と言うのはNG。出産は、転職先で成果を上げて居場所を築いてからにしたいですね(キャリアコンサルタントTさん)」
「もちろん、妊娠・出産のために仕事を休んだり、時短で働くのは従業員の権利です。でも、それを使いたいと主張するのは、信頼の残高をある程度積み上げてからと心しておくこと。信頼の残高がゼロの時点では『いつかは産みたいけれど、今は仕事をがんばりたい』と伝えておきましょう。もちろん『産むつもりはないです』などとウソまでつく必要はありません。とにかくウソはつかないこと。すでに妊娠しているのに、それを隠してバリバリ働きます!とか、そういうのはなし!(リクルートワークス石原さん)」
女性活躍社会が推進され、職場でも女性のためにさまざまな制度が打ち出されるなか、実績に関係なく当然のように与えられる権利と思ってしまいがちですが、採用側はかなりシビアなようです。妊娠・出産に関するスタンスも、転職の際には注意したいものですね。
ワナ3:ワーママだけどやりがいも欲しい
30代女性となると、子どもがいるワーママも増えてきます。一般に「ママの転職は厳しい」と言われますが、本当のところはどうなのでしょうか?
「やはりママの転職市場はかなりシビアだと考えておいた方がいいでしょう。たとえば現在の年収が450万という女性でも、時短勤務というだけで足元を見られて300万円台まで下がる可能性はあります(キャリアコンサルタントTさん)」
子どもが小さいうちの転職活動が不利というのは、すでに常識の範囲ですが、キャリアコンサルタントのTさんによると、それでも転職活動をせざるをえないのには事情があるようです。
「産休・育休も取得できて時短勤務で働けてと恵まれた企業にいても、出産後はやりがいのある仕事から離されてしまう場合が少なくない。その場合、復帰直後は『ラクでいいなあ』となるんですが、しばらくするとつまらなくなって『やっぱりやりがいのある仕事がしたい』と転職活動を始めるママさんは結構います。そして、前述のように苦戦するんです(キャリアコンサルタントTさん)」
ただ、きちんとスキルと経験をアピールできさえすれば、年収を下げることなくママでも転職は可能なようです。
「第2回でも話しましたが、経理ならプロジェクトの実務経験があって原価計算ができる、税金計算まで一貫してできるなど、この人にしかできないというスキルセットがあると、リモートワークや時短勤務でも仕事を頼みやすくなるので、時短勤務のママでも採用する可能性は十分あります(人事担当Sさん)」
「特にベンチャー企業は、スキルと経験が使えると判断すれば、ママであっても積極的に採用します。ニーズが一致して年収を下げずに、また年収アップで転職したママは私のクライアントの中にもいますよ(キャリアコンサルタントTさん)」
最後の決め手は20代の頃と同じ
30代女性が転職活動で陥りがちなワナ、いかがでしたか? これまで転職バージンで30代になって初めて転職という場合には、意外に見落しがちなポイントもあったかもしれません。
「年収」「やりがい」「ワークライフバランス」と、20代の頃より仕事に求める条件が複雑になってくる30代。でも、行きたい企業に転職して、欲しい条件を手に入れるには、やっぱり「熱意」がモノをいうよう。
「結局、30代の転職でも熱意は大事ですね。スキルが少し足らないかも、と採用担当が感じても熱意があれば、この人はキャッチアップできるだろう、と思ってもらえる。実際、時短勤務希望のママでも人事がやりたいという熱意があって、それを面接でうまくアピールできた人は、希望通りの職種で年収アップを叶えましたから(キャリアコンサルタントTさん)」
「ただ、30代の熱意は20代と違って、“がんばります!”とか“御社のファンです!”みたいなトーンだと敬遠されがちです。熱意を伝えるにも、キャリアにおいて何を実現したいかという明確なビジョンがあり、それが実現できるのが御社で、入社後はこういう面で貢献できますと、具体的にロジカルに話すことが大事。熱意があるからこそ、ここまでちゃんと考えてます!とアピールするわけですね(キャリアコンサルタントMさん)」
シリーズ全3回でお届けした「30代女性の転職」。男女共通のポイントも少なくありませんが、やはり結婚・妊娠・出産・育児に関しては、女性の方が意識するポイントが多そうです。普段あまり耳にしないホンネも飛び出しましたが、これを参考に満足のいく転職をしてくださいね!