「閉経したら女じゃなくなるの?」「更年期は誰にでもあるものなの?」「いつ閉経するの」——いつかは訪れると思っていても、その実態がわかりにくい閉経や更年期について、産婦人科専門医・高尾美穂先生がわかりやすく解説。閉経前後からの十数年を上手に乗り切るコツをお伝えする『いちばん親切な更年期の教科書【閉経完全マニュアル】』(世界文化社)が10月13日に発売されました。女性の人生の大転換機である40代。人生100年時代を健やかに過ごすために必要なこととは? 特別に全4回にわたって本書の一部を公開します。
「更年期かな?」 と思ったら
更年期、更年期症状、更年期障害、閉経の違いを知っておきましょう
女性ホルモン激変の波を上手に乗りこなす
女性の人生に大きな影響を及ぼすホルモンは、卵巣から分泌される「エストロゲン」と いう女性ホルモンです。これは女性の人生のうち、約40年間という期間限定で分泌されるホルモンです。
10代になって卵巣が成熟すると一気にエストロゲンの分泌量がふえ、月経がはじまります。エストロゲンの分泌のピークは20代から30代の半ばぐらいまでですが、同時にこの成熟期は進学や恋愛、就職や結婚、出産、育児など、人生の大きな変化にさらされます。
30代の後半以降はエストロゲンの分泌量が徐々にへっていき、40代後半から更年期に入ると急激に減少し、閉経直前は乱高下し、閉経後にはなんと男性よりも低い値で一定になります。
このようなエストロゲンの分泌量の変化に伴い、女性の心身も変わっていきます。
言葉の定義を確認
「更年期」「更年期症状」「更年期障害」「閉経」という言葉は、似ているようでそれぞれ意味が違います。ここで正しい定義を確認しておきましょう。
◇更年期
更年期とは、閉経の前後5年間ずつの合計10年間を指します。エストロゲンがある状態からエストロゲンがない状態に慣れていくための10年間と考えるとよいでしょう。
日本人の閉経年齢の中央値は、50.54歳ですから、50歳で閉経するとすれば、更年期は45歳から55歳ということになります。
更年期は、女性ならだれにでも訪れます。「私には更年期がなかった」という人は、次で説明する「更年期障害がなかった」という意味で使っているのかもしれません。
◇更年期症状・更年期障害
更年期はエストロゲンの分泌量がアップダウンをくり返しながら減少していくため、女性の体にさまざまな不調が現れやすくなります。これらの症状を「更年期症状」といい、「ホットフラッシュ」と呼ばれる異常発汗やほてり、イライラ、不安感、不眠、手足の冷えなどがあります。こうした症状を感じる人たちは、全体の6割です。残りの4割の人は月経周期がバラつく、月経がこなくなっていくという変化しか感じずに更年期を過ごします。
更年期症状を感じる人たちの中で3割弱の人は、治療を受けないと日常生活がつらいほど重い症状が現れます。このような場合を「更年期障害」と呼んでいます。
◇閉経
月経が完全になくなった状態のことです。「12カ月間月経がない」ことで閉経したとみなします。たとえば、昨年の11月に最後の月経がきて、今年の11月まで月経がなければ、「昨年の11月で閉経した」といえるということです。
その間に月経がきたら、そこからまた12カ月間月経があるかどうかを見ます。一般的には遅くとも56歳には閉経するとされています。閉経年齢には個人差があり、閉経してみないと更年期がいつはじまったのかわかりません。実際、40〜45歳で閉経する人もおり、その場合、35〜40歳が更年期のはじまりとなるわけです。
閉経によって卵巣機能が終了すると、卵巣からエストロゲンが分泌されていたそれまでとくらべて、エストロゲンの恩恵にあずかれなくなります。
ちなみに、40歳未満で無月経の状態が1年以上続くことを「早発閉経」といいますが、40代前半ではこれに該当せず、閉経と見なします。
がん治療や子宮・卵巣摘出による閉経は「人工閉経」です。
卵巣の機能が低下すると、卵巣から分泌される女性ホルモンの分泌量が減少します。それに伴い、体にはさまざまな不調が現れます。ホルモン量が減少しはじめる閉経の5年前から、低い状態で安定する閉経の5年後までを更年期と呼びます。
■書籍情報
『いちばん親切な更年期の教科書【閉経完全マニュアル】』(世界文化社)1,760円(税込)好評発売中