『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』インタビュー

子供のいない女性の生き方から考える“多様性”の意味 

子供のいない女性の生き方から考える“多様性”の意味 

子どものいない女性は3人に1人と決して少なくはないはずなのに、「結婚して子どもを持つのが普通」という考えがいまだ根強く、子どものいない女性は人知れず苦しんでいたり、子どもを持たないことに罪悪感を抱いている--。

そんな子どものいない女性にスポットを当てた、くどうみやこさんの『誰も教えてくれなかった子どものいない人生の歩き方』(主婦の友社)の発売から2年。このほど『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』(同)が発売されました。

今回は、28歳から65歳の女性301人にアンケートを実施し、子どものいない女性の本音に迫っています。これまで300人以上のリアルな本音を聞いてきたくどうさんは「300人いれば300通りの子どものいない理由や事情がある」と話します。“多様性”もテーマの一つである同書について、くどうさんに話を聞きました。

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「2016年に潮目が変わった」7年間を振り返って思うこと

——子どものいない女性を応援する「マダネ プロジェクト」を設立して今年で7年だそうですね。7年間を振り返って変化などはありましたか?

くどうみやこさん(以下、くどう):この7年間で時代の流れを肌で感じています。7年前は今ほど「多様性」が叫ばれてなかったし、一人一人の生き方を尊重しようという風潮もあまりありませんでした。ただ、少子化というのはいわれていたので、「子どものいない人にスポットを当てるなんてまずいでしょ」という空気感が社会を覆っていたのを覚えています。

決して子どもを持たないことを勧めているわけではなく、子どものいない人たちの思いを伝えたいだけなのに、なかなか理解を得るのが難しかったですね。

そんな中、雑誌「FRaU」(2016年3月号)で女優の山口智子さんが「私はずっと、子供を産んで育てる人生ではない、別の人生を望んでいました」と語ったことが反響を呼びました。私は勝手に2016年を「子なし元年」と呼んでいるのですが、それで潮目が変わった気がします。

そこから子どものいない人たちにスポットが当たり始め、人気作家やエッセイストが子どもを持たないこと、産まないことをテーマにした書籍を相次いで刊行しました。

300人いれば300通りの子どものいない理由がある

——「マダネ プロジェクト」では、子どものいない女性がリアルに集まって話す場を提供しているそうですね。

くどう:これまで300人以上、20〜80代の幅広い年代の人たちが参加してくれました。中心の年齢層は40代で、一般的には子どもをあきらめる年代です。不妊治療をしたけれど授からなかった、欲しいと思えなかったなどその理由はさまざまです。300人いれば300通りの子どものいない理由や事情があるんだなと思いました。

なかなか思いを共有する場がないので、今まで誰にも言っていなかった思いを共有すると気持ちが軽くなるんですよね。「私だけじゃなかったんだ」って。子育てをしている人が子育ての悩みを抱えているように、子どもがいない人にはいないなりの悩みがあるんですよね。

——集まる人たちは初対面同士ですよね?

くどう:はい。子どもがいない理由というのは、友達同士でもあまり踏み込まないテーマなので、むしろ初対面同士の同じ立場だからこそ、今まで誰にも話したことがないことをこの場で吐露している人が多い印象ですね。

ただ、同じ「子どもがいない」でも、選択的に子どもを持たないと決めた人もいるし、不妊治療がうまくいかなかった人もいるし、いろいろな人がいます。

——例えば「不妊治療がうまくいかなかった人」同士のグループに分けることはしない?

くどう:もし「不妊治療がうまくいかなかった人」だけに限定してしまうと狭まってしまうというか、違う考え方や価値観に触れることが多様性を理解することにつながっていくと思うのです。これからは、私たち自身も多様な目を持たなければいけないということで、いろいろな人の話を聞くことを意識しています。

この前、面白いなあと思ったのは、独身で「仕事命!」みたいな女性に参加してもらったのですが、彼女自身は子どもがいないことをまったく気にしてなかったらしいんですね。でも、ほかの参加者の話を聞いて「もしかしたら私って『あの人変わってる』って周りから思われていたのかなあ」と言っていて、他の人は「こういう人もいるんだと勇気づけられた」と話していました。「子どもがいない」ことに対してのスタンスがこうも違うのかと、互いに新鮮だったみたいです。

——まさに「未知との遭遇」ですね。

くどう:はい。世の中にはいろいろな人がいるんだ、いろいろな立場の人がいるんだということに気付くと視野も広がるし、みなさん前向きになるので、さまざまな意見を聞ける会にしてよかったと思っています。

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不妊治療の成功例は語られるけど不成功例は語られない

——同書では、多様性についても語られています。くどうさんにとって「多様性のある社会」ってどんな社会だと思いますか?

くどう:やはり誰もが堂々と自分らしくいられる社会ですね。この7年の間にだいぶ変わってきたけれど、それでもまだ子どもがいないことを気軽に話したり、「人はそれぞれ」と自然に捉えられるような社会ではないですよね。まだ段差があるというか、不妊治療の成功例を話す人はたくさんいるけれど、不成功の事例についてはあまり語られない。完全にフラットではないなと感じています。

——不妊治療でも、メディアで取り上げられるのも成功例ばかりですよね。

くどう:だから40歳以上でも頑張れば成功すると期待しちゃうんですよね。たとえ、本人が子どもを持つことをあきらめても周りから「あの人も40代半ばで産んだし、大丈夫よ」と望まない激励を受けてしまうことがある。「40代のうちはまだ頑張れると言われて、つらい」と嘆く女性たちの声をこれまでもたくさん聞いてきました。

もちろん、不妊治療がうまくいかなくて傷ついてるから、自分から堂々と言う人も少ない。そういう意味で、なかなかオープンになりにくかったりもするのですが……。でも、本当はどんな生き方をしても、「子どもがいる」「子どもがいない」に優劣なんてないし、一人一人の幸せの形を選び取っていいはずなんですよね。

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役割や所属で判断してしまう「無意識の偏見」

——子どもがいない人には「子どもがいないなんて寂しいでしょ」、子どもがいる人には「母親になってずうずうしさが増した」のような、その人を社会的属性や立場、役割で判断してしまう「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」という概念が取り上げられていました。

私たちメディアもある程度、ターゲットの属性に応じて企画を考えるのですが、安易に決めつけてしまわないように注意しなければいけないと思いましたし、これだけ一人一人の生き方や考え方が多様化している現代で役割や属性によって分けるのはナンセンスというか限界があるのではないかと感じています。

くどう:これまでは、カテゴライズされて判断されていたこともあったと思うのですが、これからはちゃんと個人として考えなければいけないなと思います。自分の中にも「無意識の偏見」ってないだろうか? と問いかけてみる。

最近では企業の研修でも取り入れられているようです。例えば、上司が勝手に「あの人は小さい子どもがいるから出張は無理だよね」と判断して候補から外してしまう。でも、中には子どもの面倒を見てくれる環境があって、出張に行きたい女性だっているかもしれない。役割や属性で区切るのではなく、個人単位で対応していく動きはいくつかの企業であるようです。

生き方や幸せのかたちはみんな違う

——例えば「ママ社員=時短勤務」と思われているけれど、中には子どもを産む前と同じように働きたいという女性もいるかもしれない。

くどう:特に”ママ”はカテゴライズされがちですよね。「私は仕事が好きだからもっと働きたいのに」という人もいるので、一律に型にはめるのではなくて個々に合わせた働き方を企業も私たちも模索していくことが必要だし、働き方や生き方、価値観、幸せのかたちはそれぞれ違うということへの想像力が求められているのではと思います。

私たち自身も自分がぴったりくる幸せのかたちを選び取る力や、作っていく力も必要ですよね。これまではレールに乗っていれば良かったけど、これからは自分でレールを作っていかなければいけないので、ある意味しんどいとは思うのですが……。

——最後にこの本をどんな人に読んでほしいですか?

もちろん、子どものいない女性といった当事者の方に読んでいただいて自分らしく生きてほしいとの思いはありますが、当事者だけではなくて子どもがいる人や男性など、いろいろな立場や考えを持った人に手に取ってもらって、多様性について考えるきっかけにもなってほしいです。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

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