ブルーボトルコーヒージャパン取締役・井川沙紀さんインタビュー(前編)

「やりたいことをとことんやるのが、成功の鍵」あの人の仕事が楽しくなった瞬間

「やりたいことをとことんやるのが、成功の鍵」あの人の仕事が楽しくなった瞬間
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スタートアップやベンチャー企業を転々としながら働く女性を見ると、「さぞ戦略的にキャリアアップを考えているんだろうな」と思っちゃいますよね?

「自分らしく働く」がキーワードになっているこの時代、企業の名前や肩書きにとらわれず軽やかにステップアップする女性はとかく注目されがちです。

でも、最初から「自分らしさ」や「理想の自分」がわかっている人って、実際にはそんなにいないはず。だとしたら、転職するにしろ、転身するにしろ、人生の選択をする時、何を基準にしたらいいの?

そんな疑問を携えて、2015年に日本に上陸した米国発のコーヒーブランド「ブルーボトルコーヒー」の日本法人、ブルーボトルコーヒージャパンの取締役、井川沙紀(いがわ・さき)さんに話を聞きに行きました。

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仕事はそこそこに…と思っていたけれど

——井川さんは、ブルーボトルコーヒーが5社目になるそうですね。もともと「バリバリ働いて、社会をあっと驚かせるような仕事をするぞ!」というようなタイプだったんですか?

井川沙紀さん(以下、井川):いいえ、むしろ「ある程度やったら主婦になろう」と考えていました(笑)。でも、新卒で入った大手人材派遣会社で、留学や旅行のサービスを手掛ける子会社に配属になり、新規事業の立ち上げに関わることになりました。初めからいろいろと任せてもらえ、気がついたら忙しく働いていましたね。

——グループ会社とはいえ、本社勤務から外れてがっかりしませんでしたか?

井川:興味を持って入った人材ビジネスに携われないことには驚きましたが、「辞令が出た=選ばれた」ということ。ありがたいなと素直に従いました。働き出した当初はついていくのに必死で、ストレスも感じていましたが、皆でブレストをしながら1から新しいビジネスを作ったり、サービスをローンチしたりすることが楽しいと感じるようになりましたね。

——思いがけず、新規事業に関わる面白さを知ったということですね。

井川:はい。それで新規事業を立ち上げるノウハウをもっと学びたいと思い、4年目にインキュベーション会社に転職しました。

転職活動はことごとく失敗

——そこから広報やPRのキャリアがスタートするそうですが、これも偶然の要素が強かったとか。

井川:最初は、人事アシスタントとして、投資先に送り込む人材の採用に携わっていたのですが、上層部が「投資先の価値を高めるためにはPRが重要だ」という認識になり、PR業務を担当することになったんです。当時、PRの経験は全くなかったのですが、だからこそ何をしても新鮮で、いろいろと勉強になりましたね。各分野のマーケットの違いを学びながら、どのようなメッセージを発信したら差別化を図ることができて、その事業を大きくできるだろうということを考えることのがすごく楽しくて、PRの仕事にどんどん魅せられていきました。

——仕事とライフイベントの両立で迷ったりはしませんでしたか? 特に30歳の前後には、20代の時のがむしゃらさみたいなものにブレーキをかけてしまうというか。

井川:ちょうどインキュベーション会社にいた20代後半の頃は、「30歳までにこうしなきゃ」という思いに縛られていましたが、そう考えるとうまくいかないことが多かったですね。30歳になったら子どもを産みたいからその時は大きな会社にいた方がいいなとか、産休・育休制度を使うためにある程度大きな成果を出さなくてはいけないから、それなら今転職するべきだなとか。でもそうやって頭で考えた転職活動はことごとく失敗しました。

——失敗?

井川:検討した会社も含めたら、たしか50社ぐらい受けたのですが、どれも結果としてうまくいかなかったんです(苦笑)。

——50!?

井川:私が行きたいと思ってもダメだったり、来てほしいと言われても踏み切れなかったりしたので、今思うと、本当にやりたいことよりも「女性のキャリアはこうあるべきだ」という思い込みが根底にあったのかもしれません。「自分のやりたいことをやろう」と決めて活動するようになってからは、気が楽になり、スムーズにいきました。「皆はこうだから」と人と比較することもありましたが、私はスタートアップに関わって、事業の発展に貢献することが好きだということに気がつきましたね。

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レールから何度も外れてるから

——「みんな」って意識がなさそうなので、意外です。「自分の道を行く」という感じなのかと思っていました。

井川:今だから言えることですよ。もう「こうあるべきだろう」というレールから何度も外れているので、比べなくなりました。

——振り切ってからは、経営支援を手がけるリヴァンプが支援していた米国のソフトプレッツェル専門店を日本で立ち上げたのち、日本の飲食ブランドの海外展開の立ち上げにも携わり、現在のブルーボトルコーヒージャパンにジョイン。

井川:ライセンスビジネスが面白いなと思ったんです。他国で立ち上がった信念のあるビジネスを、PRを通じ杖広げるお手伝いをする。その結果、事業の成長に貢献できるということにやりがいを感じました。

「声をかけてもらえる人」の共通点

——ベンチャーやスタートアップで働く女性の話を聞いていると、転職のきっかけは紹介が多いのですが、井川さんも声をかけられて?

井川:そうですね。ブルーボトルコーヒーは、前職の米国のソフトプレッツェル専門店時代の先輩に声をかけていただきました。

——「やってみない?」と声をかけられる人の特徴は何だと思いますか?

井川:これまでの実績はもちろん大事だと思います。ただ、知り合いを紹介するって、この人ならちゃんとやってくれるという自信がないとできませんよね。私も「この人なら絶対やりきるな」と直感的に思える人でないと紹介はできないと思います。

今はたまたま取締役というポジションで仕事をしていますが、私自身は超ビジネス思考で上り詰めてきたというわけではありません。目の前のことを一生懸命やるだけ、その一心で今ここにいるのかなと思っています。

——信頼は大事ですね。

井川:私は一般的に見て転職回数が多いのかもしれないのですが、どの会社の方とも今でも仲良くしていただいています。新卒で入社した会社の上司とも食事に行きますし、前職での先輩とPRの手法について話をしたりもします。当時のお取引先様とも今でも繋がっていることが多いです。その時々の責任をきっちり果たしていれば、自ずと次のチャンスにつながるような信頼関係が作られていくものだと思います。

後編は9月18日(月)公開予定です。
(取材・文:ウートピ編集部 安次富陽子、撮影:青木勇太)

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