東京移住女子 第7回

土地の「食」を知れば、もっと好きになる。地方暮らしで味わう“東京にはない幸せ”

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「東京移住女子物語」
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太平洋側から、日本海側へ移住して驚いたのが、スーパーに並ぶ鮮度キトキト*な魚介類。

外国へ行くと珍しい食材が並ぶスーパー巡りが楽しいように、地方でスーパーへ行けば、その土地の「食」を知ることができる。

一説では北海道よりも美味しい(!?)と言われ、「天然のいけす」とも称される富山湾の魚介。富山に引っ越してきて最初に感動したのが、スーパーの鮮魚売り場に並ぶ新鮮な魚だった。正確には、私の住む立山町は山に囲まれ、海はないが、クルマで1時間もいけば漁港に着く。

富山は県内、どこに行くにもクルマで1、2時間もあれば回れる「コンパクトシティ」なのだ。

*富山の方言で、「新鮮な」という意味

富山は「魚介の宝庫」

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春先は、スーパーに旬のホタルイカや白えびがびっしりと並ぶ。驚いたのは「朝獲り」のナマのホタルイカが売られていること。東京時代は、ボイルされたホタルイカしか見たことがなかった。

ちなみに、ホタルイカは富山産と兵庫産があるのだが、富山産の方が身がぷりぷりとして大きく、お値段も高い。東京時代はこの、富山産のぷりぷりなホタルイカを求めて、高級スーパー「成城石井」に通った。

が、しかし、お値段も強気のプライスなので、半額の時を狙って。そんなふうに、たまの贅沢だったホタルイカがこちらに来たら、毎日食せるほど身近な食材になるなんて。

あぁ、いろいろなものが豊かに富める国、「とやま」だなぁ、としみじみ。

それ以外にもフクラギ(ブリの子)や鮎、バイ貝など、四季折々、旬の魚介がお手頃な価格で買えるのだが、「これが、スーパーで買ったお魚!?」と思うほど美味しい。

移住する前、富山で食べた魚介があまりに美味しくて、東京に戻ってから、スーパーで魚を買えなくなってしまったほど。とにかく富山は北海道以上の「魚介の宝庫」だ(と思う)。

ホタルイカ、昆布〆、マス寿司 すべてハイクオリティ!

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「定住コンシェルジュ」という移住をサポートする仕事柄、移住希望者の方を連れて、町内をアテンドすることがあるのだが、その際も、地元スーパーには必ず立ち寄って、鮮魚売り場を見てもらう。

「生活=スーパー」、と言っても過言でないほど、毎日の食生活を支える「台所」だと思うから。

引っ越して1年ほどは、用がなくても毎日、スーパーの鮮魚売り場を覗きに行っていたっけ。

ちなみに、ナマのホタルイカは、オリーブオイルと鷹の爪でぺペロンチーノ風に炒めても美味しい。そこに、菜の花も加えて、茹でたスパゲッティとからめて食べるのもおすすめ。

東京で食べていたホタルイカは、すでに茹でられた状態で、中の美味しいミソが出てしまっているのだが、ナマで買うと、当たり前だけど、ミソも入ったまま。フライパンで炒めているうちに、中からこの、うまみの塊とも言えるミソが出てきて、これがコクがあって日本酒にバッチリ合う。

そして、富山と言えば「昆布〆」。江戸時代から、北前船で北海道より良質な昆布が手に入った富山では、お魚を昆布に包んで食す文化がある。

「サス」(富山のたべていた「に富める国、「とやま」だなぁ、としみじみする瞬間だの方言で、「カジキまぐろ」のこと)の昆布〆など、白身の魚を昆布で包んで熟成させた富山の郷土食なのだが、昆布のうまみが魚に移って味わい深い。これも普通にスーパーの鮮魚売り場で買える。

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もう一つの郷土食である「マス寿司」。富山県内に40店以上あるといわれるマス寿司も、マス(サクラマス)のレア具合、肉厚度、酸味度、酢飯の柔らかさから固さまで各店でこだわりがあって、皆さん、自分好みのご贔屓のお店を持っているとか。

このマス寿司は、自分で食べるというよりは「お持たせ」に購入することが多い。なので、お土産でいただけるとテンションが上がる。

さらに、日常的にポピュラーな食材と言えば、とろろ昆布とかまぼこ。とろろ昆布は国内でも消費ナンバー1を誇るほど生活に根付いている。

おでんに入れたり、お味噌汁に入れたり、おむすびにまぶしたり。この「とろろ昆布おむすび」は、富山ならでは。外食してもメニューにあるし、スーパーやコンビニでも鮭や梅干しなどのメジャーな具材と並んで売られている。

かまぼこは、東京では、板の上にちんまりと乗った紅白のかまぼこ(板かま)が一般的だが、ここ、富山では「板」の上には乗っておらず、ビニールにパッキングされている。そして、東京ではお馴染みの「なると」のような渦巻き模様が特徴。この「かまぼこ」も、どのスーパーでも手に入る。

鮮度抜群ゆえ、素材だけで勝負できるのが富山の強み。

回転寿司でさえ、もはや“回転”とは思えないほどハイ・クオリティなのだ。

「好きこそ物の上手なれ」

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東京にいた頃は、富山の友人たちが折に触れて、いろいろな富山の味を送ってくれたものだった。とろろ昆布に昆布〆、マス寿司、東京では売っていなの山町らない像するだけだった「富山」を、いま、に通ったものだったい貴重な日本酒や高岡の酒器など。

その時は、想像するだけだった「富山」を、今こうして日々、楽しみ、味わえる幸せたるや。

私が富山に引っ越してから、東京時代の友人をはじめ、日本国内、いろいろなところに住むFB(フェイスブック)友達が遊びに来てくれるようになった。

今では富山・東京間は、最短で2時間8分。日帰りも十分可能になった。思い立てば吉日で、会いたいと思えば、いつでも会える距離。

そして、立山町に引っ越してから、町のことが知りたくて、地元の人に教えてもらったり、自分でもいろいろな情報を探すようになった。

好きだから、もっと知りたいし、好きだから、それが楽しい。もっともっと、たくさんの人に、富山の、立山町の魅力を知ってほしい、と思いながら。

まさに「好きこそ物の上手なれ」。

そう、「好き」は何にも勝る原動力になるから。

写真:松田秀明

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東京移住女子物語

東京に生まれて、大学も就職も、生活の拠点はずっと東京。それが、ひょんなことからキャリアをリセットしてIターン&お一人様で富山県へ。 仕事、暮らし、人間関係……。42歳にして、まったく未知の世界に飛び込んでしまった、おんなお一人様の移住物語である。

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