結局、やる気しか勝たん。37歳の私が、がんで死にかけてわかったこと

結局、やる気しか勝たん。37歳の私が、がんで死にかけてわかったこと

「わざわざ、生きてる」
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ステージ4の末期がんから奇跡的に回復を遂げた私、海野優子。先日無事に37歳の誕生日を迎えました。いやぁ、まさか自分がここまで生きられるとは思っていませんでしたよ。

数年前までは、仕事を人並みに頑張る普通の会社員だったのに、出産と同時に「余命」を伝えられるような大病が発覚し、今までの人生計画すべてが台無しになってしまうという経験をしました。

キャリアも、子育ても、手放すしかない中で、まだ失う怖さからこの期に及んでそれを手放せない私がいる。そう。やっとの思いで生き残り、わざわざ生きてるのに!

この連載もついに最終回。今回はこの連載のテーマでもある”わざわざ生きてる”のに、いろんなことから逃れられない私が、死に直面したことで学んだことを改めてお伝えしたいと思います。

人生は思うより短い

末期がんを宣告され、私にはもう未来がないんだと悟った時、ふと「もう一回人生をやり直せるなら、何をしていただろう」と考えました。

その内容をはっきりとは思い出せないのですが(確か大好きだった絵を描くことを若いうちからやっていたいとか、デザインの勉強をしてその道のプロになっていたいとか、そんなことだったような)それよりも何よりも、鮮明に感じたのは「もっと早くから真剣にやって実現に向けて動いていれば良かった……何で私は今になって後悔しているんだろう」でした。

仕事や人生の荒波に揉まれていると、忙しさを理由に自分が本当にやりたいことを後回しにしてしまうことって誰しもありますよね。だけど、すごく当たり前なのですが、死ぬことがわかってからやりたいことに向き合おうとしても、時間が足りないんです。本当に。

もし本当にやりたいこと、人生で叶えたいことがあるのなら、小さな一歩でもいい。踏み出してみてくださいと、私は声を大にして言いたいです。

リハビリ休憩中の私

リハビリ休憩中の私

「生きたい」以外にやりたいことはない

私は、余命宣告を受けても「死ぬまでにやりたいことリストを作ろう」なんて発想にまったくならなかったんですよね。そのリストを一つ一つクリアしていっても、何が残るの?そんな思いが浮かんできて、自分のやることなすこと、ぜーんぶ意味のないものに思えて、「そんなもんねーよ」って、すごく虚しくなりました。

それはどういうことだったのか、改めて考えてみると、やっぱり最後まで「生きたい」以外にやりたいことがないんですよね。どんなに現実が私に「もうあなたは生きられないよ」と言おうとも、最後まで自分の未来、生きられる可能性を諦めたくなかった。1秒でも自分が長く生きられる方法はないのか、無様でも足掻いて、足掻いて、足掻き続けてやるってそう思ったんです。

私はそれで良いと思ってるんですよね。だって、余命を伝えられたら「自分の死を受け入れて、限られた時間を精一杯生き抜きます」みたいな悟りを開いた人な感じに振る舞わないといけないなんて、辛くないですか? 3人に1人ががんで亡くなる*時代です。今まさにがんと戦っている人に伝えたい。ほんの少しの可能性だって、いいじゃない。自分の未来に執着しても。それが生きる希望、力、そのものです。私は最初の入院生活で、ほんの少しでも希望がなきゃ生きていけないのが人間なんだと改めて感じました。

*https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kaiken_shiryou/2013/dl/130415-01.pdf

手放すことで、前に進むこともある

人生の最優先事項は「生き延びること」。そう決めた私に、人生は育児の機会やキャリアなど大事なものを手放す試練を与えてきました。

たとえば、娘が産まれたとき、抗がん剤を投与せねばならず、母乳をあげることを諦めるしかなかったり、1年間、彼女を乳児院に預けて離れ離れの生活をおくったり。

病気になる前、自分の市場価値を下げてはならないという恐怖心から、自分のキャリアを手放せずにいました。が、それも今ではリハビリのために、人生を前に進めるために、一旦手放しました。

今の私はというと、腫瘍の影響で腸閉塞を繰り返していて、五分粥相当の柔らかいもの以外は食べられない状況です。焼肉やお寿司、食べたくてたまりませんが、これも手放すしかありません。

でも、手放すことでかえって物事がシンプルになり、前に進んでいく感覚があります。

子育てを手放すのはなかなか難しいかもしれないけど、頑張り過ぎて育児ノイローゼになりかけちゃってる人たちにも伝わるといいな。手放すことは、停滞している状況を打破するきっかけにもなるってことが。

まぁ、生きることを最優先事項にした私でも、「本当に手放して大丈夫なの?」って何度もためらったので、そんな簡単な話じゃないんですけどね。

あれもこれも、自分の欲しいものを手に入れられるように、目標に向かって努力できることは素晴らしいことです。そうして手に入れたものは、かけがえのないものでしょう。

でも、もしそれを手放す必要ができた時、そんなに絶望する必要はないと、私は身をもって感じました。最悪の最悪、愛する人がそばにいるだけでいいじゃん!ってことにも気づいた。お恥ずかしながら、私はいろんなことを捨てるしかない状況になってそんなシンプルな思いに気づきました。

正直、前を向けないときもある

連載をはじめて、読んでくれた方たちから「海野さん、本当に大変な状況なのにいつも前向きですごい」なんてありがたいお言葉をいただくことが増えました。

でも、正直言えば、前を向けない時も結構あります。SNSを見れば、昔の同僚の仕事での活躍ばかりが目に止まり、友人が家族旅行を満喫して美味しいお酒やご飯を食べているのを見て、自由に動ける体を羨やむ気持ちが芽生えたり。ひとり家にこもってリハビリをしていると、何だか自分の人生にだけブレーキが掛かってしまっているみたいに思えてしまうこともあります。

でも、仕方ないんですよ。誰のせいでもない。これが自分の運命として受け入れて行くしかない。自分ではどうにもできない壁が突如現れてしまったから、もうそれと向き合い、共に生きていくしか術がない。そうやって自分をなだめながら発信はポジティブに。これが私の病との付き合い方だとわかってきました。

人生、結局やる気しか勝たん!

もうこうなったら、何事にもやる気を出すしかないんです。どんなにしんどい状況でも、可愛い娘と愛する夫の傍で生きていくために、私自身が弱った気持ちを立て直さないといけません。彼らがいるから前を向けるのと同時に、彼らと幸せに生きるために前を向くという感覚です。人生、やる気しか勝たん! 

考えてみれば、病気になる前の私も〝社畜の海野P”なんて揶揄されるほど、苦しい状況の時こそ気合いで乗り切ってきました。メンバーから「海野Pの体育会系にはついていけない!」なんて言われたこともあったな(笑)。「海野P、死にかけても気合いとか言ってる」って笑われそうだけど、でもあえて言わせてもらう。「やる気を出すこと」は、病気であろうがなかろうが関係なく、前を向くために時には大切なことだと思うんですよね。

前に進んでいないような気がしたら、何でもいいからやれることからやってみる。最近の私は、キャンバスと筆を買って好きな絵を描き始めたり、車椅子だけどもう一度車の運転を始めようかと思っていたり、心理学を勉強しようかなとか。失うもの、手放すものが増えて気持ちが落ち込んだ時こそ、とにかく何でもやれることにやる気を出して取り組むようにしています。

そもそも、私が、今こうして奇跡的に命の灯火を燃やして歩き続けられていること自体が素晴らしいことであり、生きてるだけで丸儲け!って思うんです。(この言葉、最近バカの一つ覚えみたいに連呼してるんですよね。笑)せっかく生き延びたのですから、不安と不幸に押し潰されずに、幸せに生きていきたいと強く思います。

パワーアップした、これからの私

大病を経験して、私の人生計画はめちゃくちゃになってしまったけど、いろんなことを手放す勇気を手に入れることができました。そして苦しいとき、大切な人の顔を思い浮かべて、やる気エンジンを全開にすることで自分の気持ちを立て直してきました。病気になる前と後で、私のメンタル的な強さは確実にパワーアップしています。また大好きな仕事が始められたら、きっと前より成果を出せる気がする?!(上司よ、期待してくれ!笑)そんなことを考えると、これからの人生が超絶楽しみです。

それに、やっとの思いで生き延びて、わざわざ生きてるんだから、これからの人生をもっとシンプルに、自分のやりたい事、ありたい状態に正直に生きていきたいなぁと、しみじみ思っています。

この連載を読んでくださった皆さんが、人生で何かを失ったり、手放したりすることがあっても、より鮮明に、よりシンプルに、自分にとって最も大切な幸せを感じて、これからも前を向いて生きていけますように。

(完)

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わざわざ、生きてる

ウートピの立ち上げを担当した、元webプロデューサー(社畜の海野P)によるがん闘病記です。壮絶な2年間を過ごしたのち、結局戻ってきたのは六本木。いつもと変わらない職場で働き、育児との両立に奔走する日々についてつづってもらいます。

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