過敏性腸症候群を治したい・第2回

メンタルと直結? 過敏性腸症候群の原因は【専門医に聞く】

メンタルと直結? 過敏性腸症候群の原因は【専門医に聞く】

下痢や便秘が続く、あるいはその両方をくり返すとき、単なるおなかの不調だと思って放置していませんか。その症状は、実は「過敏性腸症候群(IBS)」という病気かもしれません。この病気について、消化器病専門医・指導医、消化器内視鏡専門医・指導医でむらのクリニック(大阪市中央区)の村野実之(みつゆき)院長に連載で詳しいお話しを聞いています。

前回の第1回「あなたも過敏性腸症候群かも…便秘と下痢やその両方をくり返していない?」では、その症状のチェックリストや特徴について教えてもらいました。今回は原因について尋ねます。

村野実之医師

村野実之医師

ストレスで自律神経のバランスが乱れる

——前回、過敏性腸症候群とは「下痢や便秘、あるいはその両方をくり返し、月に4日以上・最近3カ月以内に続いている」場合に診断されるということでした。おなかの不調が長く続くのはつらいことです。その原因は何なのでしょうか。

村野医師:過敏性腸症候群の原因はまだ明確ではありませんが、いくつか想定されることの研究が進んでいます。

もっとも多いと考えられる原因は、「ストレス」です。腸の運動や消化の機能は、自律神経が担っています。自律神経には緊張時や興奮時、活動時に働く交感神経と、安静時やリラックス時に働く副交感神経があり、この2つが互いにバランスを取り合って内臓の機能が安定するように作用しています。

また、胃や腸の運動や消化機能は、副交感神経が優位になっているとき、つまりリラックスしているときに働きます。ところが、ストレスや不安感、憂うつ感、イライラなどが強く続くと交感神経のほうが優位になるため、胃腸の運動や消化機能は低下します。すると便秘や下痢になりやすいわけです。そのため、過敏性腸症候群はストレス性胃腸炎と呼ばれることもあります。腸の状態はメンタルと直結していると言えます。

——おなかの具合が悪くなるストレスとは、具体的にどのようなことがありますか。

村野医師:患者さんによってさまざまですが、受験や就職、転職、結婚、昇進などご自身の環境の変化、職場や家庭の人間関係のストレス、緊張感や不安感が強い心因性ストレス、疲労、大雨や台風、猛暑、極寒といった気候の変化などあらゆる心身の負担が考えられます。

幸せホルモンが過剰分泌されると下痢に

——近ごろ、脳と腸は連絡し合っているという説をよく聞きます。ストレスと関係があるのでしょうか。

村野医師:医学用語で「脳腸相関」といって、いま注目されています。腸は脳からの指令だけで動いているのではなく、腸からも脳にメッセージを送っていて、互いに影響を及ぼし合うことがわかってきました。

そのメッセージの送り合いには、神経ネットワークや神経伝達物質が関わっています。脳でも腸でも分泌される神経伝達物質に、通称「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」があります。セロトニンは情緒を安定させるように働き、脳でストレスを感知すると腸の粘膜からたくさん分泌されます。そして腸内で、信号を受け取るセロトニンの受容体と結合して腸のぜん動運動を活発にします。そのセロトニンが過剰に分泌されると、下痢をしやすくなります。

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腸の感覚過敏とは?

——腸と脳では、幸せホルモンや神経ネットワークが巧妙に働き合っているのですね。

村野医師:セロトニンが過剰に分泌されると「感覚過敏」という現象も起こり、これも原因の一つに挙げられます。

感覚過敏や知覚過敏といえば歯の痛みや違和感を思い浮かべる人が多いと思いますが、胃や腸でもよく起こります。感覚過敏とは、食べたものや飲みものなどで腸に少しの刺激があった場合でも、脳が過敏に反応して「痛み」として感じとることがあるのです。とくに下痢の場合に多いです。

ストレス、セロトニン、感覚過敏と腸管運動は、それぞれが複雑に関わり合っています。さらに最近、大腸にいる細菌が小腸に流入することが原因で炎症を起こす「小腸内細菌増殖症(SIBO・シーボ)」の研究が進んでいます。過敏性腸症候群の場合、これを併発している可能性も指摘されています。

——風邪をひいたときにもおなかをこわします。

村野医師:ウイルスや細菌による風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、ノロウイルス感染症、食中毒、食あたりなどの場合、腸に炎症が生じて感染性腸炎になることが多いです。

そしてそれらの病気から回復した後に、過敏性腸症候群になりやすいことがわかっています。感染によって腸に炎症が起こると、腸内細菌が変化して悪玉菌が増える、善玉菌が減るなどするため、感染症そのものが治った後でも下痢や便秘が続くのです。

聞き手によるまとめ

過敏性腸症候群の原因は、ストレス、セロトニン、感覚過敏が考えられ、また感染性腸炎が治った後でも腸内細菌の変化で発症しやすいということです。おなかの不調が続くときはそれらの原因に思いあたらないかを考えたいものです。

次回・第3回は、過敏性腸症候群の診断、検査、治療法について聞きます。

★お知らせ
村野医師が理事を務める「大阪府内科医会」が主催のオンライン健康セミナー・第23回市民公開講座「美と健康はおなかから~腸活のススメ~」が、2021年12月12日(日)13:00~、15:00~の2回、開催されます。村野医師による講演「悩んでいませんか? おなかの症状で」もあり、無料で視聴できます(事前登録が必要です)。申し込み先:https://www.osaka-naika.jp

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(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル)

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