くらもちふさこさんインタビュー・後編

「やっぱり一通り悩んだほうがいいですね」くらもちふさこさんが年を重ねてみてわかったこと

「やっぱり一通り悩んだほうがいいですね」くらもちふさこさんが年を重ねてみてわかったこと

『いつもポケットにショパン』や『天然コケッコー』『花に染む』などで知られるマンガ家のくらもちふさこさん。

1972年に『メガネちゃんのひとりごと』でデビューして以来、少女マンガ界の一線で活躍してきました。

そんな47年間のキャリアについて、くらもちさん自身が語り下ろした初めての自伝『くらもち花伝 メガネさんのひとりごと』(集英社インターナショナル)が2月28日に発売されました。

前編に引き続き、後編は「若い頃は人間関係でモーレツに苦労した」と話すくらもちさんに話を聞きました。

年を重ねてみてわかったこと

——僭越な言い方になってしまうのですが、くらもちさんのマンガにはすごく救われてきました。心理描写や人間関係のすごく繊細で面倒な部分が丁寧に描かれていて「こんなことで悩んでいるのって私だけじゃないんだ」って。本にも「若い頃は自意識過剰だったがゆえに人間関係でモーレツに苦労しましたが……」と書かれていましたが、くらもちさんは内面の葛藤をどんなふうに処理したり、作品に生かしてきたのでしょうか?

くらもちふさこさん(以下、くらもち):本にも書きましたが、生きている限り少し相性の悪い人とも出会いますし、子どもながらにもモヤモヤするんですよね。そういう「モヤモヤ」をマンガに描いたところで現実の問題が解決するわけではないですが、苦労して描き上げた頃にはスッキリします。

あとは、やっぱり年齢によって対応が変わってくるんですよね。若い頃は、ただただ傍観者でいるしかなかったし、どう対応していいのかわからなかったというのが正直なところです。非常に子どもでしたし、おそらく同年代の女性よりも子どもでした。大学卒業するくらいまで、かなりまわりに流されていました。ですので、それに苦労したなと思います。

まわりの学生たちと話はしていたんですけど、質問されたことに対して多くは語らず、一言返事をするくらいのレベルですね。仲がいい一人や二人くらいのお友達とは仲良くお話をするんですが、みんなと仲よく輪の中に入ってというタイプではなかったですし、それはそれで何とかやってこれたので、それで何年も過ごしてきました。

でも、「面白いな」と思うのは、そういう時代に対してつまらない時代だったと思っていたのですが、何十年も経って成長した、学生時代の友人たちと再会したときに答え合わせみたいな感じになるんです。

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——「答え合わせ」ですか?

くらもち:うまく言えないんですけど、あの当時、自分は何も言えなかったんですけど、「こんなふうに思ってた」という記憶だけは残っているんです。

それで、再会すると友人たちが、同じことを言うんです。「こんなことがあったけど、私はあのときはこう思ってた」と。そう言われると、「こういうタイプの人が私と同じように思うんだ」と意外に感じる。すると、距離があった友人との仲がグッと近づくんです。

「私とは違う人種かな」と思っていた人たちが、一気に同じ輪の中に入るんですね。「そういうこともあるんだ」と思ったら、わりといろいろな人とも話せるようになりました。たった一回、そういう経験をしたことで。

——それはいつ頃のことですか?

くらもち:わりと最近ですね。再会する機会がなかったら、「あの時代は冬だった」で終わるじゃないですか。

——思っちゃいますね。

くらもち:相変わらず「人とは馴染めないタイプです」って言って、基本は馴染めてないんですけれど、でもみなさんそうおっしゃるでしょ? だから、前回お話したように、自分の過去を振り返るときも「自分が違う位置にいるな」という考えは持たなくなりましたし、わりと平気で輪の中に飛び込めるようになりましたね。

——なんだか希望を持てます。人生って何が起こるかわからないなって。

くらもち:そうですね、でも今のような答えを知ってしまっていたら、当時、私がマンガに描いていたようなことは描けなかったので、やっぱり一通り悩んだほうがいいということですね。傷ついたり、ひがみっぽかったりとか、そういうのがネタになるので。

悩んでいる真っ最中は大変なので、「今のあなただからそういうことが言えるのよ」って言われちゃったら、元も子もないんですけれど、年を取ることに関して希望を持っていただくとすれば、そういうこともあるよっていうことをお伝えしたいなというふうに思います。

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「そのとき」がきたら絶対わかる

——最近、同世代の友人と話をしていても「恋人は欲しいけれど、なかなか好きになれる人がいない」という話をよく聞きます。数々の恋愛マンガを描いてきたくらもちさんのご意見を聞きたいなと……。

くらもち:おそらく普通に生活していたら「そのとき」はくると思うんですけどね。自分から無理にそうしよう、恋愛しようとはしなくてもいいと思っています。でも、ごく自然に「そのとき」がきたら、いっちゃっていいんじゃないかなって思っています。「そのとき」って自分でわかると思うんですね。それは絶対にわかる。

恋愛じゃないことに関しても、何に関しても、基本は「好きか、嫌いか」ですよ。本当に好きだったらいっちゃいますし、そういうのがまったくない人生はないと思うんですよね。

——そうかもしれないですね。抑えきれないですもんね。頭で考えるより先に行動に移しちゃう。

くらもち:そう思います。私ですら自分から気になる人に電話をかけちゃったことがあります。

——くらもちさんにとってマンガを描くことも、描かないでいられないという感じですか?

くらもち:そうです。描きたくてしょうがない。描かないではいられないという感じですね。

——恋愛と一緒にする話ではないかもしれないですが、でもそういうことなんですね。

くらもち:一緒だと思いますよ。「好きか、嫌いか」しかないと思います。

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(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)

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