3組に1組は離婚している? 不妊に悩むカップルは6組に1組って本当? 世の中に溢れる様々な「ニュースの数字」の裏側を読み解く連載です。表に見える数字だけではなく、その背景をしっかりと紐解いていくと、新しい発見や気づきが得られるかも。
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「生きるために働いているのか、働くために生きているのか分からなくなってからが人生。」

電通の新入社員で2015年のクリスマスに過労自殺した高橋まつりさんがSNSに残した言葉です。まつりさんは東大を卒業し、日本を代表する大企業に入社。まさに絵に描いたような「高学歴女子」と言えるでしょう。まつりさんのような高学歴の女性は、実は東京圏に集中しています。日本総研は2015年、「東京圏で暮らす高学歴女性の働き方等に関するアンケート調査」を実施しました。

高学歴女性はどんな人生を歩んでいるの?

この調査で「高学歴女性」が対象となった理由は二つ。

一つは、そもそも日本では結婚や出産に伴う女性の離職率が高く、なかでも東京は出産率の低さが目立つ地域であり、問題が山積みの状態だから……。以前の連載でも書いていますが、東京の女性の平均結婚年齢は全国平均よりも1歳ほど高く、首都圏在住で「結婚しなくていい」とした割合は約32%です。

そしてもう一つの理由が、大学数と大学生数がともにもっとも多い東京では、卒業後に東京を本社に置く企業に就職することが想定されるから。

「高学歴女性」はどのように働き、結婚や出産をしているのか? 今回は、「高学歴」の女性の「生き方」がテーマです。

この調査の対象になったのは東京圏(千葉、神奈川など含む)在住で、かつ「高学歴」とされる四年制大学、または大学院を卒業した女性。さらに、大学の偏差値ごとに「低い」〜「高い」まで4つのグループに分類しています。まずは、高学歴女性の就業状況について見てましょう。

正社員で入社しても、5割超が辞めている

新卒時点での正規雇用、非正規雇用の割合を見てみると、正規雇用に就いた高学歴女性の割合は74.6%。政府の「15歳以上の就業者の正規・非正規構成比率(2015年)」によると、女性大学卒業者の正規雇用の割合は65.0%、大学院卒は71.8%となっています。これは新卒時点での調査とは異なるので一概には言えませんが、東京の大学を卒業した高学歴女性の方が高い結果となっています。

しかしながら、新卒から数年が経過した時点での就業形態が「正規雇用」であった高学歴女性は、もっとも大学難易度が低い大学グループでたったの27.4%。この割合は大学難易度が上昇するにつれて上がりますが、もっとも難易度の高いグループでも48.3%と50%未満となっています。新卒では7割以上が「正規雇用」だけれど、「正規雇用」で働き続けられるのは50%にも満たないのです。

高学歴女性のキャリアを左右する2つのファクター

なぜ、難関大学を卒業し、新卒では「正規雇用」であった人が数年後には「無職」、あるいは「非正規雇用」になっているのか? そこにはやはり「結婚」と「出産」が関係してきます。

新卒時点の就業形態が「正規雇用」で、その後も正規雇用のままで働き続けられた女性のうち、もっとも多かったのは「未婚」の人。新卒時点で正規雇用であり、現在未婚と回答した女性の65.3%が「正規雇用」となっています。

しかしながら、有配偶者、つまり結婚した女性になると「正規雇用」で働き続けた割合は33.8%。そして有配偶者で子どもありの女性になると、さらに割合は低く23.6%となります。新卒時点では「正規雇用」に就業できる割合が高い「高学歴女性」。しかし、その先も「正規雇用」で働き続けるのは難しいようです。そして、「正社員」で働き続けた人の多くが未婚です。

高学歴女子にのしかかる「家事」「育児」「家計」の3大負担

次に大学難易度別に初婚年齢と第一子出産年齢を見てみましょう。もっとも大学難易度が「低い」とされるグループでは、平均初婚年齢は28.9歳。全国の平均初婚年齢(2014年)が29.4歳ですから、少し早いと言えます。一方、もっとも難易度が「高い」大学グループでは平均初婚年齢は29.7歳。全国平均をやや上回り、難易度の低いグループと約1歳の差が出ていることがわかります。また、出産年齢に関しても同様の傾向があり、難易度がもっとも低いグループと高いグループでは1歳ほどの差が出ます。

では、結婚・出産を経てなお、働き続ける高学歴女性は家庭でどのような役割を担っているのでしょう? 

この調査で、配偶者がいてかつ専業主婦ではない女性にアンケートをしたところ、「妻が家事の80%を負担している」と回答した女性は57.7%。「育児を80%負担している」とした女性は62.8%に上りました。これに「家事・育児の60〜80%を負担している」との回答を足すと、60%以上家事を負担している働く女性は82.4%、育児を負担している女性は89.6%となります。

既婚の高学歴女性が負担しているのは労力だけではありません。経済的な負担も担っています。世帯所得のうち40〜60%を負担している女性はもっとも難易度の高い大学グループで26.2%。2番目に難易度の高いグループでも20.3%という結果になっています。

いかがでしょうか? いい大学を卒業しても、いずれ結婚や出産を経れば苦労して手に入れた「正社員」の職を手放さなければならない。非正規で働いたり、パートをしたりして家計を支えながら、育児・家事をこなさなければならない。数字から見えてきた高学歴女性の生きざまは過酷です。

「正社員」で働き続けることを選んでハードワークに耐えても、まつりさんが「女子力がない」と上司にいじられたように、「それそろ結婚しないとまずいんじゃない?」「子ども欲しくないの?」なんて言葉を浴びせられる……。「高学歴女性」に限られた話ではないかもしれませんが、どちらを選択してもハードな生き方に思えてきます。

長時間労働を減らしていく、有給休暇を取りやすくしたり、育児休暇を男女ともに取りやすくしたりと、少しずつ社会が変われば、女性がもっと前向きに生き方を選択できる時代が来るのではないでしょうか?

(安仲ばん)