関西風と関東風のちがいは? 旬は冬? “つかみどころがない”うなぎの魅力

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コラムニストの桐谷ヨウさんによる連載「なーに考えてるの?」。ヨウさんがA to Z形式で日頃考えていることや気づいたこと、感じたことを読者とシェアして一緒に考えていきます。第31回目のテーマは「E= Eel(うなぎ)」です。

うなぎ、大好き!

鰻が好きで好きで、たまらない。小さい頃から大好物で、当時は焼肉よりも好きだったかもしれない。

2015年からは毎年、夏になると川越まで鰻を食べに行くプチ遠征をしている。東は川越、西は柳川という感じで、城下町だったため川魚がおいしく、江戸時代から鰻が有名だったのである。このお気に入りの店には、延べ10人くらいの友人を連れて行き、全員が「本当においしかった」と舌鼓を打っている店なのである。

僕の身近な人は鰻が好きな人が多いけれど、人によっては見た目がグロテスクに感じるとかで、いまいち好きになれない人もいるらしい。個人的にはちょっと残念というか、好きになってほしいなぁと思うのだけれども……。

せっかくなので鰻のウンチクを語ってみよう。

蒲焼は「串打ち三年、裂き八年、焼き一生」と言われるようです。すべての調理は火入れが大きな役割を担っています。この時点で、関東と関西では大きな差があります。

まず僕の出身の関西では、焼きオンリーです。したがって表面はこんがりパリッと仕上がっていて、中身はジュワッとしているんですね。関東では、ご存知のように蒸します。したがって表面がふわふわ、中身もトロッとしているんですね。だから、関西出身の友人で「関東の鰻を好きになれない」と言っている人もいました。それくらいに食べたときの印象がちがいます。

また、商人文化が根強い関西では「腹を割る」ことは良いことなので、鰻を腹開きにします。しかし、武家社会の関東では「切腹」を連想させるため、背開きにされています。さばく工程でもそのような文化的背景による差異*があるのです。*諸説あります。

浜松では関東風、関西風両方食べられる!

それでは東西文化のボーダーライン、国境線は一体どこにあるか? それが浜松なんですね。

有名ですよね、静岡の鰻。どうやら市内には100軒くらいの鰻屋がひしめいているらしく、面白いことに関東風と関西風が同じエリアで食べられます。ちなみに浜松といえばうなぎパイ。これは「うなぎパイV.S.O.P.」が圧倒的にうまいですよね。

西は西でも、福岡まで行くと鰻丼のスタイルが変わります。柳川の特徴はせいろ蒸しスタイル。タレを表面だけでなく全面的にからめたお米×蒲焼の鰻×錦糸卵のコラボレーションを蒸したヘビー級の一品です。僕は時間の都合上、2時間差でちがう鰻屋で食したのですが、さすがに胃がヤられそうになりました。。

うなぎの旬は冬!

そして「土用、丑の日」は大々的に鰻のプロモーションが行われるタイミングですよね。なんとなく鰻がいちばんうまい時期だと思っている人は多いでしょう。あれ、違いますからね!

鰻の本当の旬は冬(!)なんですが、江戸時代、夏場に売り上げがたたずに困った鰻屋からの相談を受けた鬼才・平賀源内がプロモーションとして土用の丑の日に「う」のつくうなぎを食べようと宣伝した──と言われています。現代においてコンビニまで大々的に押し出すようになるとは、平賀源内も思っていなかったことでしょう。

といいつつ、俺も冬になると出不精になってしまって、本当の旬のタイミングで川越まで行けてないんですけどね……。

最近まで「鰻を食べる」といえば「鰻重をオーダーする」という意味だった。そこに疑問を持ったことはなかった。俺的鰻重至上主義。ご馳走というか、高級感があるように思われているし、立派なお重に入っているけど、それでいてブツ自体はちょっと下品なジャンクフードに見える佇まいもあるっていうかさ。ヒタヒタにタレが掛かっちゃってさ。そういうところが良いんだよね。

で、最近では「白焼き」をトッピングするようにもなってきたよね。鰻丼が来るまでの前菜的な扱いで、白焼きを醤油とかわさびで、日本酒と一緒につまむわけです。これ大人になったなーという気持ちと一緒に味わえますから。あんまお酒飲めない俺でもそう思うわけですから。米がないときでも失われない鰻の魅力、タレがなくても輝く鰻の味、そういったものを分かるようになってきたようです。

おすすめの鰻屋さんは…

最後に、俺が食べておいしかった鰻屋さんを紹介します。記載順とおいしさは、あえて順不同にいたします。

・川越
古くからの名店、小川菊(おがきく)。良くも悪くもクラシックスタイルの妙という印象です。2階の和室は畳の上にテーブルが置かれていて、個人的には好き。

ハコの雰囲気が抜群に素晴らしいのは、東屋。古い家屋をそのまま生かしているんだけど、この空間で飲み食いをするだけで幸せな気持ちになれます。

比較的新しくできたのは、米屋を改築したらしい林屋。唯一無二の二度蒸し二度焼きスタイルが絶品です。

名前はふざけているが、味はたしかなぽんぽこ亭。僕の親友は川越でここがいちばん好きならしい。焼いているところをカウンターから見られるのも楽しい。

・福岡
意外にも市内でおいしかったのは、吉塚うなぎ屋。せいろ蒸しではなく、通常スタイルですが、うまいです。観光者(出張者)にとっては郊外に出なくても食せるというのがポイントが高いです。

・柳川
柳川のせいろ蒸しスタイルで名高いのは、元祖本吉屋と若松屋。正直なところこのスタイルを食べ慣れていないので評価が難しいんだけど、市内で食べた2軒のせいろ蒸しスタイルとは圧倒的にちがうおいしさでした。柳川へ観光する機会があるときにはぜひ。

・浜松
出張の際に、現地の仕事仲間に「地元の人がおいしいと使っている店を教えてください」と聞いて、連れて行ってくれたのが「かんたろう」。いまは「あおいや」って店名に変わってるらしい。関西風を食せるので、関東スタイルしか食べたことがない人は、ぜひ食してみてください。

そういえば英語のeelには、「鰻」という意味だけでなく、そこから転じて「つかみどころのないやつ」という意味があるらしい。つかみどころのないやつって、魅力的ですよね。

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