日本での婚活に疲れ果てた筆者は、パリを旅行した際に見かけたパリジャンやパリジェンヌたちが気の向くまま、本能に従って恋をしている姿を見て稲妻に打たれるような衝撃を受けました。
まず、パリのいたるところでキスをするのは当たり前。それは年齢に限らず、高校生くらいの若者たちから、自分の親と同じ世代のマダム&ムッシュー、真っ白の頭をした高齢カップルまでが、バスを待っている間にチュっとさりげなくキスをするのです。はたまた年齢差が10を遥かに超えているであろう年の差カップルも、隠れるどころか堂々と楽しんでいる姿を見かけます。
それ以来、パリでパリジェンヌのように恋に自由に生きたいと決め、日本から移住し、パリジャンと結婚した現在でも彼らの奔放さに驚かされる毎日です。
フランスでは大統領も結婚をしたことがない
フランスの長、大統領ですら正式に結婚を一度もしたことがなく、それなのに子供は複数おり、女性と別れを繰り返し、今の新しい恋人はフランス女優だとか。
結婚に代わる事実婚の制度があるフランスでは、結婚したカップルの離婚となると、どんなに穏便に別れることになっても、それぞれに弁護士を雇って裁判を行わなければいけません。しかし、事実婚の場合は、別れる際にはどちらか一方が解消したいといえば可能。とってもお気楽な制度なのです。
結婚や事実婚はあくまでも制度、愛する二人ならば一緒にいればいい。他の人を好きになればまた、そちらに走って行けばいい。こんな自由な恋愛をできるのがパリなのです。
娘も父親には母親とは別に恋人がいることを受け入れていく
今月27日から日本で公開されるフランス映画『ジェラシー』では、今を生きるパリのカップルをそのまま映したような恋愛模様が描き出されています。
主人公のパリジャン、ルイはある日突然 パートナーと娘に別れを告げ、随分年上のマダムの元へ行きます。別れを告げられたパートナーの口からは「子供はどうするの?」なんて言葉は一言も出てきません。
親は親で1人の人間であり、父親であること=母親以外の女性を愛してはいけない、という空気はないのです。
二人が別れた後も、ルイは娘の学校の迎えなども手伝い、父親であることは当たり前のように継続します。さらには、娘に新しい恋人も紹介しますが、これもまたパリでは異常なことでもなんでもありません。
娘もまた、父親には母親とは別に恋人がいることを受け入れていくのですが、悲壮感は特別ありません。
日本人がこの恋愛、生活模様を見ると「なんて酷い父親!」と思う人も少なくないでしょう。でも、実際にパリに住んでみると、ごくごくあたりまえの日常なのです。
それほどに、パリでは恋愛に関して、どんなスタイルであろうと社会的規範に縛られることはありません。
「○○しなければいけない」というのは他人や社会的な基準
一方、筆者が日本にいた時は、筆者自身「結婚しなければ」という焦りを感じてしまい、誰のための、何のための結婚なのか、分からないまま苦しんでいました。
「○○しなければいけない」というのは他人や社会的な基準なのであって、自分がどうしたいかではないからです。
もちろん、この映画のように両親の別れが子供に与える精神的問題を優先せずに、親がやりたいよう生きるパリジャンたちのスタイルが、全てにおいて良いとは言えません。
ただ、日本ももっと「自分の意思」で恋愛や結婚ができ、さまざまなスタイルがあって当然と認められるようになれば、楽になれる人が増えるだろうなということです。そのためにも、日本の中だけの常識にとらわれず、外の日常や恋愛を知ることで考え直すキッカケができると思うのです。
『ジェラシー』
9月27日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて公開