小説家・佐伯紅緒さんインタビュー(後編)

「子供を産めるかで価値を図るのは無意味」 不妊を乗り越えた小説家が考える“さだめ”を見極める人生とは?

「子供を産めるかで価値を図るのは無意味」 不妊を乗り越えた小説家が考える“さだめ”を見極める人生とは?
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不妊を乗り越えた女性小説家の人生

>>【前編はコチラ】「親孝行は強迫観念でするものではない」 “母親の呪縛”に苦しんだ女性小説家が、真面目な女性に伝えたいこと

文筆業に憧れながら20代、30代で大手百貨店、アパレル、料亭など様々な職業を経験し、現在は女性の恋愛や仕事、結婚に関するコラムも多数執筆する小説家の佐伯紅緒さん。不妊の悩みを乗り越えた女性として、「アラサー女性は最強」と語る佐伯さんに、これからをアラサー女性へのアドバイスを伺った。

    子供がいないことで敗北感を感じ、本当に死んでしまいそうになった

――佐伯さんは現在、お子さんがいらっしゃいませんが長らく不妊治療をされてきたとお聞きしました。その時の心情はどのようなものでしたか。

佐伯:34歳で結婚してからずっと不妊治療してました。体外受精も十数回試みましたが、かすりもしなかったですね(笑)。なにかにとり憑かれたみたいに子供が欲しくて欲しくてたまらず、苦しんでいた40歳~42歳の頃はとても辛かったです。

――辛い気持ちを乗り越えるために、何か具体的な行動はとられていましたか?

佐伯:子供がいないことで敗北感を感じたり、子供がいたらどうなっていただろうと想像すると本当に死んでしまいそうになったんです。私は自分を殺してしまうほどの想像力を持っていることを自分で知っていたので。ただ、これは女性全般に言えることですよね。だから女性は特に、マイナスに向かうことはイメージしない方が良いと思います。なので、辛かった時は子供のことは考えず、仕事の他にも舞台に立ったり旅行に行ったり、子供がいたらできないことばかりをせっせとしていました。

    子供ができるできないで自分の価値を図るのは無意味

――不妊治療をしていくと、子供ができないことについて自分を責めてしまう女性も多いのですが、自分を責めないためにはどうしたらいいですか?

佐伯:「そこから先は神の領域」という好きな言葉があるんですが、子供ができるかできないって神さまの領域だと思うんです。だからやるだけやって、後は神さまに投げちゃえば楽ですよ。だって、最大限の努力をした後の結果は自分のせいじゃないんだから。だからもし子供が欲しいと思ったら、できる限りの努力をして悔いを残さないでほしいです。十分な努力をしないと後から自分を責めてしまう。

――確かに、やるだけやったのなら自分を責める必要は無いですよね。

佐伯:子供って本当にコウノトリとはよく言ったもので、結局、ご縁のものだと思うんですよ。だから、子供ができるできないで自分の価値を図るのは無意味です。そして時間が経てばわかることですが、「さだめ」ですね。人には色々な「さだめ」があると思います。子供を産み育てる「さだめ」や、人の間に立って人を繋げる「さだめ」。

見果てぬ夢を追うばかりではなく、どこの時点で自分の「さだめ」はこうだと見極めるかが大事なんだと思います。まあそうは言っても、自分の「さだめ」なんてお墓に入るまでわからないことがほとんどですけどね(笑)。

    現代は年齢のイメージ通りに何かする必要はない

――佐伯さんは「アラサー女性は最強だ」とブログでも書かれていましたが、「アラサー」と聞くとなんとなく独身とか負け組みたいな俗語と並べられてイメージされることも多いかと思います。

佐伯:大嫌いです、そういう言葉(笑)。アラサー世代の女性って最強ですよ。ある程度社会経験もしているから知識や教養の引き出しもある。キャリアも積んでいて肌も衰えていない上に、まだ体力もある。もう最強ですよね。だからほんと、アラサー世代でよけいな情報に惑わされて足踏みしてる女性を見ると、無敵状態の今やらないでいつやるんだって思います。

――社会が貼るレッテルとしての「アラサー」に惑わされる意味はないということですね。

佐伯:今の自分っていけてるんじゃん! って思うにはどうしたら良いのかということですね。30歳はこう! という年齢のイメージ通りに何かする必要はないと思います。年齢によるテンプレもモデルも存在しない現代では、「私はこうなんだ!」と自分で探すことが大事だと思います。変に理想を追うと良くないですよね。理想を追うということは、今の自分がダメだという否定と同義ですから。

    これからの時代を生きるアラサー女性には「とおりゃんせ体験」が必要!

――では、今アラサー女性がすべきこととはなんでしょうか?

佐伯
:「とおりゃんせ体験」ですね。怖いながらも、びくびくしながらやってみる体験。そうやって生き生きと非日常の経験をしていくと、もちろん失敗もしますがどれかひとつ成功すれば、その成功体験だけで人間って一歩先に進めるんです。泥水って若いうちに飲んでおくと、本当になんでもできるようになるんですよ。そうして色々なものが得られる今のうちに知識や経験をインストールしておくと、配偶者や子供がいようがいまいが、自分の身一つあればどこに放り出されても生きていけるようになるんだと思います。

――現在の佐伯さんのライフスタイルにおけるスタンスを教えてください。

佐伯:もう結構良い歳なので若い人に何かしてあげるという感じですね。子育ての代わりでは決してないですが、「人を育てる」って色々な形がありますよね。自分を育てる、周りの人を育てる。どんな分野でも息の長い人って若い子の面倒をよく見ていて、自分も彼らから何かしら良いものをもらっています。「与える=もらえる」ということですよね。それをやめて孤立すると人間はしぼんでしまうのかなと。だから違う世代の人との交流は意識的にすると良いです。年齢的にももうどきどきするような「とおりゃんせ体験」ができないので、最近は小説や脚本を書くかたわら乙女ゲームにときめいています(笑)。

(編集部)

●佐伯紅緒公式サイト「Salon de Rouge
●恋愛コラム「佐伯紅緒のスーパーカミオカンデ

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