歯科医が教える「してはいけない」むし歯ケア・第4回

むし歯や口臭はストレスで悪化する…歯科医が教えるセルフケア

むし歯や口臭はストレスで悪化する…歯科医が教えるセルフケア

むし歯ケアについて、「してはいけない」に焦点をあてながら、適切なケアを伝えるシリーズをお送りしています。これまでは、下記の第1回~第3回の記事にあるように、歯磨きのタイミング、アイテム、口臭ケア、洗口液などについて、NGかOKかを歯科医師で口腔衛生がご専門の江上歯科(大阪市北区)の江上一郎院長に教えてもらいました。今回は、ストレスや疲労と口臭、むし歯の関係についてお尋ねします。

【第1回】「食後すぐの歯磨きはNG…歯科医に聞く『してはいけない』むし歯ケア」
【第2回】泡立つ歯磨き剤はむし歯、口臭ケアにOK?
【第3回】ホワイトニング用、香料入り、フッ素化合…むし歯と口臭ケアアイテムの選びかた

江上歯科の江上一郎院長

江上歯科の江上一郎院長

ストレスがあると唾液が減って口内環境が悪化

(1)むし歯を治療したばかりですが、また別のむし歯が発生しました。「ストレスや疲れが原因では?」と友人に指摘されましたが、影響がかけ離れているように思います。関係ないですよね?

江上医師:その考えはNGです。ストレスはむし歯の発生に大きく影響します。

まず、口の中の環境を良好に保つには、唾(だ)液が関係していることを理解しましょう。むし歯とは、口の中の細菌が、食事で口にした糖分をエサにして作り出す「酸」によって歯が溶けた状態で、「口腔感染症」のひとつです。食事をすると口の中は酸性に傾きますが、唾液はそれを中性に戻す役割があります。これを唾液の「緩衝(かんしょう)作用」と言います。

唾液がたくさん分泌されると口の中が中性に近づいて、歯の表面が白く濁る、また歯の噛(か)む面の溝が黄色や薄い茶色になる程度の「初期のむし歯」であれば、自然に元の歯に戻ります。初期のむし歯の状態を歯の「脱灰(だっかい)」と呼び、自然に戻る作用を「再石灰化」と言います。

ただし、唾液があまり出ていないと、むし歯の自然修復と言える再石灰化が追いつかず、酸によって歯がどんどんと溶かされてむし歯が進んでいきます。

次に、唾液の分泌量は、自律神経によって調整されているため、ストレスにも影響を受けます。ストレスがある、疲れている、憂うつだ、イライラする、睡眠不足だ、風邪を引いているなどだと、自律神経のひとつの交感神経が優位になって、唾液の分泌を抑制します。すると、口の中がネバネバする、乾燥するなどで細菌が増殖しやすくなり、むし歯の発生率を高めます。

<適切なケア法>
自律神経のもうひとつの副交感神経が優位なときには、サラサラとした唾液の分泌量が増えます。唾液には、初期のむし歯の修復のほか、口の中の抗菌・消炎作用もあります。副交感神経が優位になるのは、リラックスしている、安静にしているときなどです。つまり口の中の健康のためには、ストレスや疲労を感じない、リラックス時のサラサラの唾液がたくさん分泌されることが重要になります。

ストレスを自覚していて口の中が乾燥するときは、栄養バランスの良い食事、充実した睡眠、軽い運動を意識した生活習慣の見直しをしましょう。仕事で緊張する場面が続くときには、一時的な保湿ですが、こまめに水を飲む、キシリトール入りのガム(第2回参照)を噛(か)むなどしましょう。

また、唾液は体内の唾液腺で作られて、舌のつけ根や、上の奥から2番目(親知らずを除く)の歯(上顎第二臼歯。じょうがくだいにきゅうし)に近い頬の粘膜から分泌されます。食事をよく噛む、話をする、口や舌の運動をするなど、口周囲の筋肉をよく動かすと、唾液腺が刺激されて唾液の分泌量は増えます。

さらに、三大唾液腺の、耳の前にある「耳下(じか)腺」、下あごにある「顎下(がっか)腺」、舌のつけ根にある「舌下(ぜっか)腺」を、それぞれ軽く指でさする、やさしくマッサージをすると、唾液が出てくることがわかるでしょう。

唾液腺_江上医師

ストレスは口臭の原因になる

(2)悩みが尽きず、ストレスフルな毎日です。口臭が強いのも気になるのですが、ストレスの影響はあるでしょうか?

江上医師:大いにあります。口臭は、食べ物や、口腔内の粘膜が剥がれたカスに含まれるタンパク質が細菌によって分解され、発酵する過程で発するガスの臭いです。その臭いを抑えるのは、(1)で話したことと同じく、唾液です。つまり口臭の主な原因は、唾液が減少することにあるのです。

唾液には、口の中を自浄する、消炎する、消臭する働きもあります。減少するとこれらの力が低下するため、臭いを抑える力も弱くなります。起床時や、しばらく食事をしていないとき、会話をせずにパソコンやスマホの操作に集中したあとなどは口臭が気になるでしょう。唾液の分泌量が減っているからです。

<適切なケア>
第2回でも伝えましたが、歯磨き剤や洗口液、またサプリメントなどで口臭の元を絶とうと考えるのはNGです。それらに含まれる香料などで一時的に臭いはごまかせますが、唾液の量が増えない限り、時間とともにまた臭うようになります。そこで、口臭予防のためにも、(1)で伝えた唾液腺マッサージで、唾液の分泌を促しましょう。

なお、口腔内の環境悪化以外で、扁桃腺(へんとうせん)炎、副鼻腔(ふくびくう)炎、逆流性食道炎、糖尿病、腎臓や肝臓の病気など体の病気が原因の場合や、何らかの薬の副作用で唾液が減少していることもあるので、臭いに違和感がある、普段より強いと感じる場合は早めに歯科や内科、耳鼻科で相談しましょう。

ストレスや疲労がむし歯や口臭の原因になるとは、なかなか考えが及ばなかったのですが、自律神経の働きで唾液の分泌量が無意識に大きく変わっているということで理解が進みました。逆に考えると、唾液が減って口の中が渇くときは、ストレスや疲労が蓄積しているというサインかもしれません。自分の唾液の状態には常々、注視していきたいものです。

(構成・文 海野 愛子/ユンブル)

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