アラサー世代はいろいろな場面で岐路に立たされる年ですね。結婚、出産、出世などで友だちが次々とステップアップしていくと、ちょっと焦ったりしませんか?「何よ!」と、内心悔しくて仕方なくても、顔には出さず「まだまだ自由でいたいから」なんて強がったりして。
映画『フランシス・ハ』のヒロインのフランシスは27歳。まさにアラサー世代です。彼女も親友にサクっと先を越されてしまいます。加えて、男もお金も家もないという……ダメダメなアラサーちゃんです。しかし、彼女は妙に生命力に溢れているのですよ。それはなぜか? では、フランシスの魅力を紐解いてみましょう!
先を越されても嫉妬できないのはお子様の証?
フランシス(グレタ・ガーウィグ)は親友のソフィー(ミッキー・サムナー)とルームシェアをしていましたが、ソフィーは突然、高級住宅街へ引っ越してしまいます。彼女は自力でキャリアを築いて新しい人生をスタートさせたのです。一方、ソフィーと女子同士でキャッキャしているだけで幸福だったフランシスは、ソフィーが自分から離れて新しい人生の一歩を踏み出したことにショックを受けます。彼女の知らない間にソフィーは大人の女になっていたのですね。
こういうことありますよね~。「まだまだ、20代だし、遊べるし」と思っていたら、友達はしっかり自分の道を見つけていて焦るという。男はやたらと夢を語りたがりますが、女は親友にも本音を言わない場合もありますからね~。水面下で動いて、親友が知らないうちに結婚を決めたり、キャリアアップしたり「聞いてないよ~」みたいな。フランシスは親友ソフィーにそれをやられちゃったわけですよ。普通はそこで悔しかったり嫉妬したりしますが、フランシスは嫉妬しない。ただソフィーと遊べなくなることが寂しくて仕方がないのです。そこが彼女のかわいいところでもあり、お子様なところでもあるのです。
現実を知って凹みながらも大人になる!
フランシスはひとりになって友だちの家を転々としながら、周囲が自立の道を歩んでいることに少し焦りを感じます。楽しいことばかりを優先してきたしっぺ返しを受けてしまうのです。加えてダンサーとして芽が出ないのにスタッフの良心的なアドバイスに耳を傾けず見栄を張ってしまったことから、ますます貧乏になり、人生を迷走してしまうフランシス。しかし、やがて彼女は目の前の現実と向き合います。踊りを頑張っても成功できないことを認め、親友につきまとってウザがられることで昔に戻れないことを知るのです。
それらの現実を彼女は見て見ぬふりをしてきましたが、フランシスは現実とぶつかることで目覚め「なんか私、間違っていたかも」と気付くのです。そりゃイタイ現実を突きつけられたら凹みますけど、己を知るとはそういうこと。それを回避していたら、前には進めないのです。
新しい私を手に入れるためにできること
もちろん夢を実現したり、目標を達成したりする成功者はいます。でも、思い描いていた将来じゃないと不満を述べたり、成功した人を嫉妬したりしても何も始まりません。フランシスが人生を軌道修正できたのは、自分の人生がおかしな方へ進んでしまったことを他者のせいにしなかったからです。あくまで自分の問題として、アチコチぶつかって失敗しながら前に進んだからこそ新しい自分を手に入れることができたのです。
けっこうリアルな悩み満載ですが、モノクロの映像とN.Yの雰囲気とフランシスの惨めさを笑いに転化してしまう魅力でダメ女の喜劇として秀逸な『フランシス・ハ』。ラストシーンまでフランシスは詰めが甘くて「は?」と突っ込みたくなるところもご愛嬌! アラサー女子の再生物語はあなたに人生をよりよくするヒントをくれるはずですよ。
『フランシス・ハ』
9月13日よりユーロスペースほか全国順次公開