40代からの私

「加齢に恐怖を抱かなくなった」 37歳で卵子凍結をしたアメリカ女性の体験手記がすごい

「加齢に恐怖を抱かなくなった」 37歳で卵子凍結をしたアメリカ女性の体験手記がすごい

37歳で卵子凍結をした女性の体験記がすごい

日本では比較的歴史が浅い卵子の凍結保存だが、アメリカやイギリスではすでに認可されており、日本よりもポピュラーに利用されている。ニューヨークでは、およそ8割の卵子凍結が医学的適用ではなく、独身女性が加齢に備えて行なうものといわれている。ニューヨークのある病院では、卵子凍結を希望する女性の平均年齢は38歳。40歳を前にした、駆け込み需要というところだろうか。

若い頃の「品質の良い」卵子を凍結保存し、妊娠の準備が整ったタイミングで解凍、使用する。一見いいことずくめに見える、タイムカプセルのようなこの技術。しかし身体的、そして精神的にも、大きな負担がある。ここで紹介するのは、アメリカ・サンフランシスコ在住で、37歳の時に自身の卵子を凍結保存したジャーナリスト、カーラ・ジョーンズの手記「Fear and Fertility: Why I Decided to Freeze My Eggs」。彼女の体験を通して、卵子凍結体験のリアルが伝わってくる。

自分の遺伝子を継ぐ子どもが欲しい

(以下、カーラ・ジョーンズの手記から引用)

私は20代のはじめに結婚、その後、離婚を経験しました。そして現在に至るまで結婚をしていません。30代を不毛な恋愛に費やし、気づいた時には37歳になっていました。長い間、いつか子どもが欲しいと願ってきたけど、もし自分の子どもを持てない場合は、養子をもらおうと思っていました。しかしその考えは、「自分自身の遺伝子を継ぐ子どもを持つ」という願いと相反するものでした。

毎回、男性との付き合いが終わる度に、子どもを持つ夢へ繋がるドアに鍵をかけている気分になりました。そしてその度、大きなストレスを感じました。37歳になった私は、もう「手遅れ」になることを恐れて生きていくのはまっぴらだと、採卵・凍結を決意したのです。

卵子凍結保存は思い描いていたライフプランじゃない

凍結卵子の採卵の日。病院に着いた時、私は様々な考えが混ざり合った恐怖を感じ、泣き出してしまいました。

「これは、私が想い描いていたものじゃない。こんな方法で赤ちゃんを迎える予定なんてなかった」

そして受付の間も、涙が止まらなかった。ドクターのオフィスに入ってからもまだ、涙と闘っていました。私が描いていたライフプランに沿う決断ではありませんでしたが、それでも最終的に12,000ドルを支払い、卵子を採取することにしました。将来、可能性のあるパートナーに出会った時のために。心の平和という大きな貯金を手に入れた気分でした。

本当に欲しいものを手に入れるためには痛みが伴う

別室で、採卵準備の説明を受けました。その手順はとてもシンプルで簡単に思えました。注射器に液体を満たし、計測し、注入するだけ。しかし自宅で実際にMenopur(採卵に備え、卵胞を成長させる薬)を腹部に注入するという段になると、自分自身に注射をするという行為にひるみ、その薬が数百ドルもすることも頭をかすめて、結局数百ドルの薬を無駄にしてしまいました。大きく息をしてもう一度お腹の皮膚をつかみ、そして針を突き刺す。

期間中はホルモンバランスの変化のせいか、泣いてばかりいました。しかしドクターを訪ねる度、増えていく卵子の超音波画像を見て、赤ちゃんを持つという目的を思い出しました。本当に欲しいものを手に入れるには、痛みが伴うものだ。何年かぶりに、体が太り始め、とくに腹部が肥大化しました。

卵子が「赤ちゃん」になる保証はなくても、手に入れた安堵

卵子採取の日。麻酔医と世間話をしている内に、眠りに落ちました。次に気が付いた時には、看護師が肩をたたいていました。麻酔により酩酊状態だった私は「自分自身を最高に誇りに思います!」と叫んだみたいです。この日から、自身で破棄の選択をするまで、私の卵子は安全に保管される。もちろん、その卵が赤ちゃんになるという保証はない。しかしながら、卵子が保管されているという事実に安堵を覚えたのです。

その年、私は15年間で初めて、大学の同窓会に行きました。同級生たちの妊娠しているお腹や幼児を見ても、心が落ち着いていました。妊娠できる可能性を秘めた卵子が保管されているというだけで、身体の加齢に恐怖を抱かなくなったのです。そして、最高にロマンチックな恋も始まった。卵子を保存して数か月以内に素晴らしい恋愛を始める人は、たくさんいるらしい。

(引用ここまで)

日本では、「晩婚化を助長することになる」、「超高齢出産を助長する結果になるのでは」などの声も挙がり、承認に二の足を踏ませた卵子凍結。しかし、カーラのように深刻な“タイムリミット”に悩まされる現代女性にとっては、卵子凍結は望み通りの人生を設計するための切り札となるのかもしれない。

(文=Yuka TAKAHASHI)

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