歯科医に聞く「してはいけない」むし歯ケア・第2回

むし歯、口臭ケアのアイテム選び…これはOK? 歯科医に聞きました

むし歯、口臭ケアのアイテム選び…これはOK? 歯科医に聞きました

第1回の「食後すぐの歯磨きはNG…歯科医に聞く『してはいけない』むし歯ケア」では、食事と歯磨きをするタイミングの関係や、ガム、ノンシュガーの食品はむし歯予防によいのかなどをご紹介しました。ひき続き、今回は歯磨きのアイテム、またストレスとの関係について、歯科医師で口腔衛生がご専門の江上歯科(大阪市北区)の江上一郎院長に尋ねました。

江上歯科の江上一郎院長

江上歯科の江上一郎院長

歯磨き剤は泡立つタイプがいい?

(1)むし歯と口臭予防のために、よく泡立つ歯磨き剤を使っています。

江上医師: NGです。歯の表面に付着するネバネバした「歯垢(しこう。プラーク)」はむし歯の原因になりますが、歯磨き剤の泡で落ちるわけではありません。

泡立ちのよい歯磨き剤には、台所用洗剤と同じ洗浄成分である発泡剤(合成界面活性剤。ラウリル硫酸ナトリウム)が多く含まれています。泡立ちがよいと、歯がきれいになる感覚があり、磨いた気になる、口臭が抑えられるように思いがちです。しかしその感覚がもとで、実はよく磨けていない、唾液を過剰に洗い流す、口の中の粘膜を荒らす、やわらかい歯ぐきを傷つけています。

そうした歯磨き剤を使用することは、口が洗濯槽で、口の中を合成洗剤で洗濯しているのと同じだとイメージしてください。当然、唾液は取り除かれます。

唾液には、第1回(リンク)でお話ししたように、初期のむし歯を修復する、口の中の細菌の増殖を抑える、粘膜を守る、清潔に保つ、口臭を抑えるなどの役割があります。

適切なケア
唾液をキープするためには、むやみに洗浄成分や発泡剤が多い歯磨き剤を使ってはいけません。

また、歯の着色汚れをとりたいからと、研磨剤の含有量が多いタイプでゴシゴシと磨くと、歯の表面のエナメル質が摩耗することにもなります。

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歯磨き剤を選ぶ際には、「合成界面活性剤不使用」「発泡剤不使用」「研磨剤不使用」などの表記があるタイプか、「せっけん歯磨き剤」を選びましょう。1本100グラムで価格が1,000円以上する場合が多いのですが、次の(2)で説明するように、1回の使用量を考え合わせると3カ月以上使えます。口の中の健康を思うと、こちらを選ぶのが有益と言えるでしょう。

どれを選べばいいかわからない場合は、かかりつけの歯科医に相談しましょう。予防や口臭ケアなどに力を入れている歯科医院では、安全で口腔環境の改善に適したタイプを販売されているでしょう。

歯磨き剤はたっぷり使うのがいい?

(2)歯を丁寧に磨くために、歯磨き剤を歯ブラシにたっぷりつけています。

江上医師: NGです。そもそも歯を磨くにあたって歯磨き剤は必須ではありません。水や塩だけでもいいのです。(1)でNGとお話しした市販の歯磨き剤をCMのイメージのように、歯ブラシのヘッドの端から端までべったりとつけると、磨いている間に泡立ちや刺激が強くなり、歯の1本ずつを丁寧に磨く前に磨いた気分になりやすいのです。

また、唾液を洗い流してしまい、口の中の環境を悪化させることにつながります。

適切なケア
泡立ちや刺激が少ないタイプの歯磨き剤を、小豆粒大の少しの量だけ歯ブラシの中央に乗せて、約3~5分間、1本1本磨き残しがないように丁寧に磨きましょう。鏡を見ながら磨くとやりやすいでしょう。

洗口液は歯磨き剤の代わりになる?

(3) むし歯や口臭の予防のために、洗口液を愛用しています。また、忙しくて歯磨きができないときには洗口液で代用しています。

江上医師: NGです。むし歯の原因である細菌は、自ら歯の表面からはがれにくくするような形や材質(歯垢)となって、歯と歯の間や歯ぐきとの境目に付着しています。そのため、洗口液だけでは歯垢もはがれにくく、細菌を洗い流すことは難しいので、むし歯予防にも歯磨きの代わりにもなりません。

洗口液は多種多様なタイプが市販されていますが、口臭除去とうたう刺激が強いものや、すきっと爽快感を得るためのものこそ避けたほうがよいでしょう。使用するとその一瞬だけ気持ちよく感じることが多く、むし歯予防を行ったという自己満足だけになりかねません。

口臭や口内の健康を改善するものと思い込んで大量に長期間使っていると、逆に悪化することもあります。

適切なケア
就寝前に丁寧に1本ずつ歯磨きを行ったうえで、殺菌作用や保湿作用がある低刺激タイプの洗口液を使用しましょう。歯科専用のそういったタイプもあるので、かかりつけの歯科医院で相談するとよいでしょう。

歯磨き剤も洗口液も、むし歯と口臭予防になると思って毎回たっぷり、食後に欠かさず使っていました。どれもNGとは……。がく然としながらも、理由を聞くと腑に落ちました。刺激が少ないタイプを選んでこそ、歯の1本ずつを丁寧に磨けること、また、歯の健康に重要な唾液の流出を予防できるということです。すぐに実行します。

次回は、歯磨きのアイテム編の続きで、フッ素配合や香料入りの歯磨き剤の選び方や、口のゆすぎかたについて伺います。

(構成・取材・文 品川 緑、藤原 椋/ユンブル)

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