歯科医に聞く、歯の黄ばみケア第4回

歯の着色汚れをとりたい! 歯科医院で実践する方法【歯科医が教える】

歯の着色汚れをとりたい! 歯科医院で実践する方法【歯科医が教える】

歯の黄ばみを自分でケアする方法について、連載で紹介しています。これまで、歯の黄ばみの原因は、食品中のポリフェノールと唾液中の成分がくっついて歯に汚れが付着すること、そのセルフケア法、また、歯の健康のために常用は避けたいホワイトニンググッズとその理由、さらに、歯科医院で受ける歯石除去のためのクリーニングという治療について詳細をお伝えしました。

今回は、クリーニングでも歯の着色汚れ(ステイン。第1回参照)までとることができるという自費診療でのケアについて、ひき続き、歯科医師で口腔衛生がご専門の江上歯科(大阪市北区)の江上一郎院長に尋ねてみました。

江上歯科の江上一郎院長

江上歯科の江上一郎院長

プロによる専門的な歯の汚れ除去法がある

前回の「歯科医院で歯石を取る…健康保険適用の『クリーニング』とは」では、「健康保険が適用される歯石除去(スケーリング)という治療では、歯周病の予防に加えて、結果的に歯の汚れがとれることもある」ということでした。では、歯の着色汚れをとりたいという目的で、歯科医院でケアを受けるには具体的にどのような方法があるのでしょうか。江上医師はまず、着色汚れケアと治療との違い、また費用について、次のように説明をします。

「歯科では、『PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)』と呼んでいるケア法があります。文字通り、『プロによる専門的な歯の汚れ除去』という意味です。歯周病やむし歯を予防するプログラムのひとつでもあり、一般的には歯科衛生士が行います。

このケアでは、日常の歯磨きや歯石除去の治療ではとれない頑固な着色汚れをとることができます。

費用は、美容が目的となるため健康保険が適用されず、歯科医院によって、また着色の具合によって多様ですが、およそ、3,000~10,000円でしょう。自費診療のため、事前に料金を確認してください」

PMTCの手順

次に、PMTCの具体的な手順を江上医師に教えてもらいましょう。「一般的な流れは次のようになりますが、歯の状態や歯科医院の独自の方法によってアレンジされることはよくあります。歯石は治療(健康保険適用)でとり除いてから、後日、PMTC(自費診療)を行う場合や、歯石除去とPMTCを同時に行う場合(ともに自費診療)などがあります。所要時間は、1回につき30分~1時間でしょう」と江上医師。

(1)歯の汚れの状態を染め出し液でチェック
「染め出し液」と呼ぶ赤い薬液を歯に塗ります。歯垢(しこう。プラークとも呼ぶ)がついている部分は赤く染まります。おもに、歯間や歯と歯ぐきの間に多くみられます。磨き残しなどがひと目で分かります。治療ですでに行っている、これまでに実践したことがある場合は省略することもあります。

(2)歯垢を除去
(1)で赤く染まっている部分を目安に、歯ブラシで、歯垢を取り去ります。このとき、口の中の状態の説明や、ブラッシングの指導を行うこともあります。

(3)歯の清掃、汚れ除去
PMTCにおいて、もっとも特徴的な、着色汚れを除去する段階です。むし歯予防になる成分の「フッ素」を配合した研磨剤のジェルやペーストと、歯科医院専用の安全な道具の回転式のブラシやゴム製のチップ、フロスなどを使って歯を清掃し、バイオフィルムと呼ぶ菌のかたまり、ステインと呼ぶ歯の着色汚れをとり除いていきます。歯の表面に傷をつけることはなく、痛みもありません。

歯

(4)フッ素剤を塗布する
(3)までで清掃された歯の表面に、フッ素剤を塗って数分間放置し、浸透させます。歯垢、歯石、ステインなどが付着しにくくなり、むし歯の予防になります。

また、仕上げに歯の表面の傷を埋めるナノ粒子の薬剤を塗布して、表面をつるつるにする「リナメル」と呼ぶケアを行う歯科医院もあるでしょう。日常の歯磨きで汚れがとれやすくなり、むし歯予防に直結します。

PMTCを受けるタイミングなどについて、江上医師はこうアドバイスをします。

「自費診療のため、患者さんの考え方、また歯の状態によって十人十色になります。健康保険適用のクリーニングで歯の汚れがとり切れない、日ごろから歯の着色汚れが気になる場合などに、かかりつけの歯科医に相談してください。

むし歯や歯周病の予防を計画的に実践しておきたい場合は、3カ月~1年に1度は受けておくとよいでしょう」

PMTCとホワイトニングの違いとは

歯の汚れのケアについて、このPMTCと、よく耳にする「ホワイトニング」はどう違うのでしょうか。

「PMTCは、歯の表面をクリーニングする施術です。汚れが付着する前の状態に戻しますが、自分のもとの歯の色以上には白くはなりません。汚れを除去すると思いのほか白くなったと驚かれる患者さんも多いのですが、もとの歯の色そのものを白く美しくしたいときには、『ホワイトニング』という別の施術を行います」

筆者がかかりつけの歯科医院でこのPMTCを受けてみると、まず、手順(1)の染め出し液の状態で、自分では気づかなかった磨き残しにがく然としました。しかし次には、手際よく、短時間で歯の汚れがとれていく感覚がして、終了後は「これが自分の歯なの!?」と、その蘇りぶりに驚きました。確かにこの技術は自分の歯磨きでは無理だということを実感します。見た目はもちろん、なによりむし歯の予防のためにも、定期的に続けたいケアです。

次回は、歯のもとの色を白くする「ホワイトニング」について、詳しくお伝えします。

(構成・文 品川 緑/ユンブル)

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

歯の着色汚れをとりたい! 歯科医院で実践する方法【歯科医が教える】

関連する記事

編集部オススメ

2022年は3年ぶりの行動制限のない年末。久しぶりに親や家族に会ったときにふと「親の介護」が頭をよぎる人もいるのでは? たとえ介護が終わっても、私たちの日常は続くから--。介護について考えることは親と自分との関係性や距離感についても考えること。人生100年時代と言われる今だからこそ、介護について考えてみませんか? これまでウートピで掲載した介護に関する記事も特集します。

記事ランキング