大阪市北区の中崎町には空襲の戦火を逃れた古い街並みが残る。趣のある昔からの民家や商店が残る一方で、若者たちによるショップやカフェやバー、ギャラリーが色彩を添えている。13年前、中崎町の古民家を改築して作られたカフェAManTOは、ダンスの公演あり、映画上映あり、外国語教室ありの様々な人たちの交流の場である。そして、特にユニークなのは「難民カフェ」という集まりだ。
日額1,500円で生活する日本の難民の現状
AManTOのオーナーJunさんは難民支援NGO「RAFIQ」(ラフィック)に頼まれ、3年前にネパールから逃れてきた難民申請中のナンダラス・ギリさんに住む場所とカフェという活躍の場を提供した。朗らかで日本語が堪能なギリさんが作るカレーは現在、カフェの名物となっている。ネパール語、ヒンディ語教室を開いていたこともあったそうだ。
昨年来日したアフリカ系難民の男性も4か月前からカフェの手伝いをしている。男性はギリさんと同じように難民申請中であり、難民事業本部から支給される日額1,500円での生活の苦しさを語っていた。
自分の国にいると迫害される恐れがあるとして他の国に逃げた人々を「難民」といい、難民条約を締結した日本は他の締約国とともに難民を保護する役割がある。人種・民族差別、政治的意見に対する弾圧から逃れるため日本に来た多くの人々が、在留資格(就労許可、健康保険などの公共サービスを受ける権利)を得るために、法務省入国管理局に難民としての認定を求めている。しかし認定を受けられなかった人は就労資格がないため、働くことができず、不安な生活を送らざるを得ない人々もいる。(参照:UNHCR国連難民高等弁務官事務所)
昨年(平成25年)難民申請を行った人は3,260人、難民として認められたのは6人。約0.18%という極めて低い割合である。(参照:法務省ホームページ)
難民や支援者、国際交流に関心を持つ大学生らが集う「難民カフェ」
「難民カフェ」は毎月第3火曜日、当事者の難民に加えカフェスタッフ、RAFIQや弁護士、国際交流に関心を持つ大学生らが集い、難民の現状や日常生活の困りごと、時には難民同士のいざこざについて話す。会議のような堅苦しさはなくカフェの一角でカレーとチャイを囲む座談会形式である。
8月19日の難民カフェでは、ギリさんらを交えて9月21日の国際平和デーに開かれる「WORLDなんみんDAY」というイベントに向けての話し合いが行われていた。
難民カフェの参加者が始めた「WORLDなんみんDAY」は今年で2回目。「日本に難民がいることを知らない人が多い。お祭りに参加することで、身近に難民が住んでいることを知ってほしい」そんな思いから2013年7月に初めて中崎町ホールで開かれた。後援には大阪市北区と地元の中崎1町会がつき、前大阪市北区区長は挨拶を行ったそうだ。難民に関するイベントを支援団体だけでなく町ぐるみで行うことは日本ではあまり例はなく、地域と連携した難民支援のモデルケースにしたいという意図があったという。
映画上映やシンポジウム、試食会などが行われるイベント「WORLDなんみんDAY」
2013年の「WORLDなんみんDAY」には地元の人々や中崎町内外の難民が多く集まった。ホール内ではバンド演奏やベリーダンスなどの民族舞踊、難民についての映画上映、シンポジウムなどのステージ発表が行われ、難民たちが腕によりをかけたネパールのカレーなどエスニック料理が試食品として振る舞われた。ホール前の広場では難民支援だけでなく様々な団体や個人の屋台、フリーマーケットのブースが立ち並んだ。
特に試食会はあっという間になくなるほど好評だったそうだ。難民以外の外国人の注目もあり、「WORLDなんみんDAY」のパンフレットの内容がすべて日本語であったことが反省されていた。また昨年演奏したワールドミュージックのアーティストからは「もう一度ステージに立ちたい」いう声もあがっているという。
成功を収めた昨年の「WORLDなんみんDAY」。今年も映画上映や難民についてのシンポジウム、試食会が行われる。試食会ではネパールカレーに加え、春巻、フフが出されることがほぼ決定している。聞きなれない名前の料理「フフ」はヤムイモなどのパウダーで作った「餅」にシチューをつけて食べるガーナの料理だそうだ。ブースの出店者は、9月15日まで募集をしている。
難民というと「かわいそう」と一方的に保護する存在というイメージをもたれ、難民に関する問題は「難しい」「自分には関係ない」と遠ざけられがちだ。しかし、実際に接すると、一人ひとり個性があり、人をもてなしたり、喜びや楽しさを共有したりできる同じ人間であるということがわかる。あまり難しく考えず、まずは、「WORLDなんみんDAY」のようなイベントに参加してみてはいかがだろうか。
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カフェAManTO
wrd@amanto.jp