フォト・エッセイ・シリーズ『じみけも』インタビュー【後編】

「やってらんねーよ!」と素直になってもいい。頑張りすぎな貴女へ

「やってらんねーよ!」と素直になってもいい。頑張りすぎな貴女へ

ペンギン、ライオン、トラ、ゾウ……動物園で人気のスター動物たち。その影には、ふっと横を素通りされてしまうような、スポットライトが当たらない地味な動物たちもいます。これってもしかして、仕事で必死に頑張ってもなかなか光の当たらない、私たちの日常に似てるんじゃ──?

『じみけも』は、そんな地味な動物たちの生態と“私たち”の日常を重ね、ひと息つきたい時に、ホッとさせてくれるフォトエッセイ・シリーズ。クォッカ、マヌルネコ、ナマケモノと第3弾まで刊行され、動物たちの言葉の数々は共感を呼んでいます。

画像提供:じみけも委員会/ハーパーコリンズ・ジャパン

画像提供:じみけも委員会/ハーパーコリンズ・ジャパン

どうしてこんなに癒されるのか。プロジェクトの発起人である編集者の小野寺志穂さん、マーケティングの吉江小穂さんにお話を聞いていくと、現代の働く女性の「ホンネ」が浮かんできました。

自分の周りにもあった小さな分断

──前回、部署を横断して『じみけも』のプロジェクトメンバーを募ったとおっしゃっていました。編集、マーケティング、営業、経理……職種もさまざまだそうですね。

小野寺:はい。普段は一緒にランチもすることのないメンバー7人でチームを構成しています。

──普段あまり接点のない同僚と一緒に仕事をするのは、チームワークで苦労しませんでしたか? 編集者じゃない方も参加しているので、立場の違いもありみんなで作る大変さもあったのではないかと。

吉江:いえ。その違いがあってよかったと思います。普段の職種と離れているという点で、経理の方は勝手がわからなくて大変だったと思いますが、そこは担当する範囲を調整するなどして気をつけました。けれど、制作を進めるうちに実は彼女がとてもポエティックな言葉を編み出す人だとわかったんです。すごく情緒豊かな文章を作ってくれるので、それを採用するなど強みを生かす形でプロジェクトを進めました。

——同僚の意外な一面が見えたんですね。

吉江:はい。普段、マーケティングはマーケティング、編集は編集で仕事をしているので他の職種の人たちがどのように考えているかを真に理解するのは難しいのだなということがわかりました。会社の中にも小さな垣根が生まれてしまうものなのだと気づきましたね。

小野寺:そうですね。このチームに関しては、その垣根を超えていけた気はしますね。例えば、私は主にマルネコの担当をしていました。だから、クォッカとナマケモノの班に必要以上に口出しはしなかったけれど、口を出してはいけないという空気も無かったから進めやすくて、すごくバランスが取れていました。

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プロジェクトにすんなり入ってもらえたのが成功の鍵に

——おふたりのやりとりを見ていても、和気あいあいとして楽しそうです。

吉江:小野寺さんが引っ張ってくれたのが大きいです。

小野寺:有無を言わせなかったから(笑)。

吉江:小野寺さんが熱意をもっていろんな準備をしてくれていることを知っていたので、他のメンバーも安心して「よし!やろう!」とついていくことができたんです。

──小野寺さんはメンバーを引っ張っていく上で意識したことはありましたか?

小野寺:正直に言えば、特に意識したということはないんです。強いて言えば、吉江と同じく、経理のメンバーのことは最初若干心配していました。マーケティングは編集者とコミュニケーションを取ることも多いし近い存在で、営業もPOPを作ったり販促会議をしたりと接点があるけれど、経理だけは独立していますから。でもポエットな言葉もうまいし、会議の時に突然繰り出す妙にブラックな発言が面白くて。彼女がすんなりプロジェクトに入ってきてくれたのが成功の鍵だったかもしれません。

──社内の意外な才能を発見したプロジェクトだったんですね。縦割りからフラットな組織体制に挑戦したら失敗したという事例も多いですが、今回はまさに成功事例だった。

吉江:そうですね。「動物についてゆるく話そう」くらいのふわっとした始まり方でしたが、プロジェクト会議も先日25回目になりました。

──『じみけも』に漂う空気感は、プロジェクトそのもの、そこに携わる人の空気が表れていますね。

小野寺:そう言っていただけると嬉しいです。

吉江:他の仕事で「もう疲れたー」と思っている時も、このプロジェクト会議に行くとワッハッハとたくさん笑って癒されていたので、それが出ているなら嬉しいですね。

──普段の業務と並行してこの本の作業をしていたんですよね。ひとつだけじゃなくて複数のことを同時にやりながら、エネルギーと時間の配分を考えないといけない。傍らにホッとできるプロジェクトがあるのは仕事にハリが出そうです。

小野寺:他の社員に理解が得られたことはラッキーでした。経理の部署でみんなが数字について考えている横で、お面用の画像をプリントして切り抜いてるって、「遊んでるのか!」って怒られそう。でも何も言われずに理解されていたし、周囲のみなさんが見守ってくれてありがたかったですね。

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現代の女性は自分に正直

──小野寺さんと吉江さんから見た現代の女性ってどんな感じでしょうか。女性だけで仕事をしてみて見えてきたことなどはありますか?

吉江:個人的には、みんな正直になってきている気がします。必要以上に自分を大きく見せないというか。それこそバブル時代は自分がどれだけすごいかを見せるような時代でしたが「私はどういう人間なのか」「もっと本音を出してもいいのではないか」と等身大の自分を大切にしたいという風潮が最近はあるのではないでしょうか。

小野寺:自分の疲れを自覚しつつ「無理しない」と思うようになっていると思いますね。若い人から中高年世代まで、みんな疲れているじゃないですか。ワーママも専業主婦もシングルも「こうじゃなきゃいけない」という理想像があって、それに対して努力して近づいても、近づけなくても、結果、疲弊してしまっている。

吉江:だからみんなもっと正直に生きたらいいのではないかと思いますね。疲れて余裕がない時は、素直に「やってらんねーよ!」と言っちゃったほうがラクじゃないですか。

小野寺:「正直」はキーワードですね。私は編集者として本を作るときに「女性ってこうだから」と型にはめず、吉江も言っている通りもっと正直になって、女性それぞれの共感の幅をもっと広げられたらと思っています。

「疲れた」って言っちゃうとその時はできない自分を認めるのが苦しいかもしれませんが、今は正直でいる方が得すると思います。できないことは誰かに頼って、信頼や思いやりとともに生きていけばいい。一億総活躍じゃなくていいし、地味でもいい。キラキラするための努力ももちろん良いことで大事だけど、それだけじゃなくてもいいんだよって。

吉江:『じみけも』がみなさんの癒しになればありがたいです。

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(編集:ウートピ編集部 安次富陽子)

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