ここ数日「Women Against Feminism」と題したブログが議論を呼んでいる。
同じタイトルでFacebookページもあるのだが、「女性たちがアンチ・フェミニズムの理由を述べている」内容が物議をかもしている。
女性たちが各々の理由を紙に書いたものを掲げ、セルフィー(自分自身で撮影した顔写真)をアップしている。一覧からみるに、第一印象は若い女性ばかりだ。
Facebookのページは1万6,000人の「いいね!」を集める人気
どんな意見が書かれているか一部紹介しよう。
私はフェミニズムを必要としません。なぜなら……
「男性と女性はすでに平等だから!」
「男女関係なく全ての人たちをサポートしたいから」
「男性と女性は違っていいものだから」
「フェミニズムより、私をリスペクトしてくれる男性が必要!」
「私は犠牲者じゃないから!」
「男性たちは敵ではないから」
「私は男らしい人が大好きだから」
「フェミニズムは男性を傷つけ、女性を助けないから」
自分自身を撮影する「セルフィー」ブームも手伝ってか、もしくは、社会的な何かに参加したいという今時の若い人たちの意思がそうさせたのか、すでにFacebookのページでは1万6,000人の「いいね!」を集めるほどの人気ぶり。メッセージを持った若い女性たちが次々に写真をアップロードしており、ネット上での注目も集まっている。
若い女性はフェミニズムのおかげで現在の男女平等があることを知らない
この現象をどう見るか? フランスの雑誌『マダム・フィガロ』は、フェミニズムに関する書籍の著者であり、歴史家であるシルヴィー・シャペロンさんにインタビューを実施した。
マダム・フィガロ(以下フィガロ):女性がフェミニズムに反対する、こういった現象はこれまでにも見られたのでしょうか?
シルヴィー:これは新しい現象ではありません。常にアンチ・フェミニズムの女性は存在します。19世紀の終わりから20世紀にかけて起こった最初のフェミニズムの流行は、カソリックの女性たちを中心に起こりました。彼女たちの目的は、特に「母親」と「献身的な妻」のイメージを守ることだったのです。
このサイトでフェミニズムに反対する若い女性たちは、「男性と女性が平等で当たり前である」ということしか知りません。フェミニズムのおかげで今があることを完全に忘れているのです!
アンチ・フェミニズムに賛同している女性というのは過去、女性が男性から中傷を受けた歴史があったことは知っていたとしても、現在までの男女平等は、天から降って来たものだとでも思っているのでしょう。
フィガロ:「女性がフェミニズムに反対する」というのは、どういうことなのでしょうか?
シルヴィー:フェミニズムを受け入れるということは「女性が支配されている」ということを受け入れることでもあります。非常に暗い側面があるわけです。一方で、この若い女性たちは、フェミニズムの暗い側面は見ないまま否定をしています。否定することは簡単だし、心地よいものでもあるからです。
ただ、彼女たちは、まだ若いゆえにフェミニズムが本当に必要だということを知らないだけなのです。これから30代、40代と経験を重ねていくなかで「職場の男性の同僚が自分より早く出世する」ことや、「結婚して自分ばかりが子供の面倒にかかりきりになり、仕事も思ったようにできなくなる」ということが起こりうる可能性を知らないのです。
フィガロ:では、フェミニズムというのは若年女性というより、年配の女性によるものなのですか?
シルヴィー:そうです。いつも、フェミニズムには若年層と高年層の間で問題があるものなのです。若い年代はこれまでと違ったモダンなフェミニズムを必要とするからです。
フェミニズムが浸透し、女性にとって平和な時代に近づいた
ネット普及のおかげで誰でも社会的ムーブメントに参加できる時代になったわけだが、「気軽さ」が、歴史的背景を知らない若い人たちの安易な参加を引き起こしてしまうこともあるのだ。
他方、このムーブメントから読み取れるのは「それほどフェミニズムが浸透し、女性にとって平和な時代に近づいた」ということでもあるだろう。
ただし、平和になったから忘れていい、ということばかりではないことも改めて思い出させてくれた出来事である。