「生理は汚いもの。不純なもの」こんな考えが、世界にはまだ根強く残っている。そんな生理に対するネガティブなイメージを払拭しようと活動している「月経活動家」をご存知だろうか。なかでも、アートを通じてそうした活動を行う「月経芸術家」の多くが女性。月経を題材にした独自の作品は見る者を魅了し、圧倒させる。しかし、それと同時にその活動内容は賛否両論を呼ぶことも多い。そのアートに込められたメッセージとは一体何なのであろうか。そして、なぜ、賛否両論を巻き起こすのか。そんな異色のアーティストたちをまとめてみた。
生理の血を付けて歩いたパフォーマンス集団
真っ白なパンツに、真っ赤な生理の血を付けた女性たち。生理に対する羞恥心を払拭しようとストリートを占領したのは、スペインのパフォーマンス集団、サングレ・メンストルアルだ。彼女たちは「生理のビジュアル化」をマニフェストとして掲げ、道行く人々に「生理は汚いものではなく、女性であることを祝うセレモニーである」と訴えて歩いた。
「見えないもの」として長い間扱われて来た生理を「見えるもの」とすることで、人々の意識を変えようとした彼女たちだが、その評価は意外にも厳しいものだった。実際に経血を付けて歩いたことに対し、「女性から見ても汚い」「不衛生だ!」などの批判の声が上がってしまった。
経血で描くことで生理の痛みを楽しみへと変えた画家
真っ赤に染められた大きなキャンバスに、散りばめられた無数の赤い点。アメリカ人のラニ・ベロソさんは、通常の3倍もの出血と異常な痛みと戦う、月経過多症のアーティストだ。彼女の作品はその凄まじい痛みを伴う血から生み出されており、まさに自らをキャンバスにそのまま投影しているかのようだ。
キャンバスの上に座りながら血を落とし、痛みを作品にしていく作業も、彼女のアートの一部として表現されている。作品を見た友人からは「気持ち悪い」「汚い」などの声も上がったそうだが、彼女は「(作品を作ることは)毎月ただ痛みに耐えて座っているだけじゃなく、生理が来るのを楽しみさせてくれた」 と前向きに語っている。彼女のアートを通じて、生理に悩む女性たちがたくさんの勇気をもらっている。
生理は「女性の成熟への旅」と語る写真家
真っ赤な口紅をつけてこちらを見つめる女性たち。一見、ただのポートレートと思ってしまうが、そうではない。実は、ただの口紅ではなく、「生理の血の口紅」なのだ。経血の口紅をつけた12人のスッピン女性を撮影したのは、イギリスの写真家、イングリッド・バートン-モイネさん。この作品で彼女は、西洋文化が持つ生理のタブーと、ある古代部族が経血を口紅としたという化粧の起源を融合させた。
また、 パスポート写真を忠実に再現したというそのポートレートは、生理は「女性の成熟への旅」であるということも同時に表現している。もちろん彼女の作品にも、「とても勇敢で面白いアイデアだけど、気持悪いのがリアリティ」など、様々な声が飛び交っている。しかし、 彼女のアート対する評価は高く、 今後注目のアーティストである。
女性解放運動家のジャーメイン・グリアは「もし、あなたが解放されたいと思っているなら、自分の経血を舐めることを考えた方がいいわね。もし、その血で病気になったなら、まだまだ先は長いわよ、ベイビー!」と言った。確かに、経血を使ったアートを不衛生で汚いと感じるのは仕方のないことかもしれない。しかし、なぜ私たちは生理を「汚い」と思うのだろう。そして、その血が芸術という全く別のものに形を変えた時、それはまだ「汚い」ものであるのか、アートであるのか、一体どちらなのだろう。グリアが言ったように、自らの血を舐めた時、きっとその答えが出るのかもしれない。