なぜコンビ芸人のバラ売りが多いのか? お笑い評論家・ラリー遠田が分析

なぜコンビ芸人のバラ売りが多いのか? お笑い評論家・ラリー遠田が分析

なぜコンビ芸人のバラ売りが多いのか?

最近、バラエティ番組を見ていると目につくのが、コンビ芸人の「バラ売り」現象だ。コンビのうちの片方が、1人で番組に出る。または、別のコンビの片割れと2人で出ているような場合もある。『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)でフットボールアワーの後藤輝基とチュートリアルの徳井義実が共演しているのはその典型だ。『もっとたりないふたり』(日本テレビ系)に出ている南海キャンディーズの山里亮太とオードリーの若林正恭のように、完全に新しいユニットを組むような形で活動する例もある。なぜコンビのバラ売りが増えているのだろうか?

片方がドラマ出演、もう一方はナレーションなど別の道を模索

そもそも、起用する制作者側の都合から考えれば、コンビを組んでいる芸人個人は、コンビの一員であると同時に1人のタレントでもある。コンビで使いたいときにはコンビで使うし、1人で使いたければそうする。ただそれだけの話だ。

コンビの片方がバラエティに出るのにはいろいろなパターンがある。例えば、南海キャンディーズの場合。彼らはもともとコンビで世に出てきた。だが、時間が経つにつれて、しずちゃん(山崎静代)の個性的なキャラクターに注目が集まり、彼女が単独でCM、映画、ドラマに出演する機会が増えていった。

しずちゃんが役者の道を歩み始めたことで、相方である山里亮太は別の道を模索する必要に迫られる。そこで、単独でバラエティ番組に出たり、ナレーションの仕事をしたりするようになったのだ。

このように、コンビのうちの片方が映画やドラマなどの拘束時間の長い仕事をするようになったため、もう片方がバラエティ番組にソロで出るようになる、というパターンは多い。

コンビの芸よりも単独の個性やキャラクターが評価される

また、芸人の側から見ると、ピンで出るようになるのには1つのパターンがある。まず、どんな芸人も最初はコンビ単位で出てくることがほとんどだ。コンビでの持ちネタが評価されてチャンスをつかみ、バラエティ番組にもコンビとして出ていく。そして、コンビとして名が売れて、それぞれの個性が知れ渡ると、それぞれを単独で起用する道も開けてくるのだ。

そこからの道はコンビによってさまざま。コンビとしても単独でもバラエティに出ている人もいれば、コンビ主体の活動や単独主体の活動をする人もいる。1つ言えるのは、最近のバラエティ番組ではコンビ主体の活動をする芸人は減りつつある、ということだ。

なぜなら、近年のテレビではコンビの芸よりも単独の人間そのものの個性やキャラクターが評価される傾向にあるからだ。コンビとしての関係性や一体感を高く評価されるケースは比較的少ない。

冠番組を持つ芸人はほんの一握り

また、コンビとして冠番組を持つことが難しくなっている、という事情もある。一昔前までは、芸人の出世街道の最終地点は「冠番組を持つこと」と決まっていた。だが、最近では、自分たちの芸名を冠した番組を持てる芸人はほんの一握り。駆け出しの若手がそこにたどり着くまでの道のりは果てしなく険しいものになっている。だからこそ、コンビという形にこだわらない芸人が増えているという事情もある。

とはいえ、さまぁ~ず、ブラックマヨネーズのように、単独出演をほとんどせず、コンビ単位での活動を頑なに続けているコンビもごくまれに存在する。このコンビは2人で出ているときが一番面白い、と誰もが認めるような存在であれば、コンビでのみ出演するということがあり得ないわけではないのだ。

(ラリー遠田)

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