農薬の危険性のしわよせは…私がオーガニックを選ぶ理由

こんにちは! (社)日本フードアナリスト協会 2013年度 食のなでしこの井上ココです。
みなさんは、「オーガニック」と聞いて何を思い浮かべますか? 「身体に優しい」「こだわり」「高価格」といったイメージをお持ちの方が多いのではないかと思います。
■オーガニックとは…
オーガニックは簡単にいってしまえば、化学合成農薬や化学肥料に頼らず、その土地の土壌のもつ力を活かして栽培する農法のこと。ですが、単にそれだけでは、現在なぜオーガニックがこんなにも注目されているのか、理解しづらいのではないでしょうか。
私が海外生活の中でたくさんの国の人々に逢い、価値観にふれ、生活の一部にオーガニックのものを取り入れるようになったのは5年程前からです。
最初のきっかけは、モデルの仕事の合間にバックパッカーをしていた頃でした。アジアの貧困に苦しむ人たちに直面し、ボランティア活動をしていた私は、彼らの働き場所が無かったり、働いていてもちゃんとした賃金がもらえない環境を、なんとか改善できないかと考えていました。
そんなときに、フェアトレード(公正取引)という発展途上国の製品や原料を適正な価格で継続的に購入し、立場の弱い生産者、労働者の生活改善をめざす活動をしているPeople Treeのサフィアミニーさんに出会ったことが大きな転機となりました。
そしてモデルの仕事としても広告撮影でオーガニック綿花の畑へ行く機会があり、そこで働いている生産者の人達とお話しをするうちに、いろいろなことがわかってきました。
■農薬が引き起こす悲劇
その農家の人々が化学農薬を使っていた頃の綿花畑は、一見、害虫など自然の災害に強く、低価格で、生産も安定して提供できるように見えました。しかし、一 度農薬にさらされた害虫は強さを増し、耐性をもつようになるため、農家は毎年より多くの農薬を買い使い続けない限り、同じ量のコットンの収穫量を得ること ができないとのことでした。
■貧困の連鎖
つまり環境に悪いだけではなく、農家の人々が一生懸命に働いても、農薬を買う費用は増していくので、収穫から得る利益は減り続ける「不の連鎖」に陥るわけです。
■生産者の身体を蝕む
また、農薬を使用し続けると働いている人達の爪や指が変形したり、じびれや、奇形児の子が多く産まれたりといろいろな弊害が生まれるようになった、という お話もうかがいました。実際に農家の方たちの変形した指を見たとき、本当に胸が苦しくなったのを今でも鮮明に覚えています。
農薬の危険性をリアルに感じたそのとき、農薬のついたものを何も感じず、そういった背景があることも考えずに選択していたことへの罪悪感が生まれました。
ただ、手間とコストがかかるオーガニック製品の現状を考えると、自分の選択をすべてオーガニックのものへ変えることは難しいのも事実です。しかし、 ひとりひとりが考えながら買い物をすること、ものを大切に使ったり、なるべくオーガニックのものを選択することは、全く何もしないより環境改善の大きな一 歩になるのではないかと思います。
文:井上ココ
東京、NY、ロンドン、ミラノ、パリコレクションなど様々なコレクションに出演。世界的フォトグラファー、サラムーンとの仕事を機に海外でファッ ションモデルとして活躍。帰国後中島デコ氏の元で、無農薬野菜農法、自給自足生活を学ぶ。独自で開発した「食べるエステcocorobiマフィン」を TOPSHOPラフォーレ原宿とコラボ。現在モトヤエクスプレス代官山、表参道、渋谷店、骨董通り美人、楽天などで販売している。(社)日本フードアナリ スト協会 2013年度「食のなでしこ」受賞